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「キヨとタカってさー、すっげー仲良いよな」

 突然の一言。

 友達と、他愛ない会話で盛り上がっていた最中。

 友達の一人が言った言葉に、オレは傍らに立つをキヨを見上げた。

 キヨは、傍らに座るオレを不思議そうに見下ろしてくる。

 なんとなく、目が合ったことにドキリとしながら、不自然にならないように視線を逸らし、首を傾げた。

「そう、かな?」

 すると、ソイツは得意顔で頷く。

 見渡せば、輪を囲んでいた他の友達も納得したように頷いている。

「そうそう。俺らとは一線引いてるッつーかさァ」

「あー、わかるわかる」

「何ソレ? わけわかんねぇ」

 頷く彼らに、キヨは不機嫌に眉を寄せて言い放つ。

「なんか、普通のダチとは違うって感じ?」

 普通の友達とは違う。

 その一言に、オレはドキリとする。

 言ってない……キヨには言えない、隠れた本心を暴かれたようで落ち着かない。

 それを、キヨが知っているとは思えないけれど。

「たとえば、何だってんだ?」

 動揺に言葉を失うオレの頭上から、キヨの怒った声が飛ぶ。

 静かだけれど、とても怒っている。何故だろう?

 目の前の、ネタを出した友達は慌てたように手を前で振った。

「そう怒んなよ。コエーって」

「お前がヘンな事言うからだろ?」

 険悪なムードに、オレは慌てて笑顔を作ってキヨを見上げた。

 こんなことで喧嘩したら、オレとキヨの間に変な噂が立つかもしれないから。

 キヨが困るのは目に見えているし、それでキヨがオレを避けるのは嫌だ。

「キヨはカッコイイから、睨むと怖いんだよ」

 出来るだけ茶化すように明るく言うと、キヨは憮然とした、けれど幾分穏やかになった顔でそっぽを向いてしまった。

 それがちょっと子どもっぽくて、自然と 笑顔が深くなる。

「お前、気にならないのかよ」

「なんで? ホントの事だし」

 問いかけに、オレはそう返す。


 だって、友達とキヨは違う。

 キヨは特別。

 誰よりも、大好きな人だから。


 だから、オレは笑って言う。

「親友だもん。他と違って当たり前じゃない?」

「あぁ、親友。そんな感じ、そんな感じ」

 オレの言葉に、さっきキヨに睨まれた友達が激しく頷いて同意する。

 まるで、『渡りに船』、といった感じで。

 ちょっと意外そうな顔をして見下ろすキヨに、オレは笑顔で首をかしげた。


「親友だよね?」


 自分に問いかけるように。言い聞かせるように。

 すると、キヨは恥かしいのか、眉を寄せたまま、そっぽを向いてしまった。


「さーな」


 そう、一言呟いて。


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