プロローグ
塔の中に入った。中は暖かく、ほんのり薄暗く、かすかに芳香の漂う、いかにも妖しげな場所だった。入ってすぐ、この館の造りの奇妙な事に気がついた。外から見た時は巨大な塔だと思っていたが、いやたしかに巨大な塔なのだろうけれども、中はどうも狭い感じがする。普通入り口と言ったら、広いロビー位あってもよさそうなのに、いきなり横幅2メートル程の道が続いているのだ。
奥の方は暗くてよく見えない。が、分かれ道や曲がり道が何箇所かある事が分かった。この塔は、巨大な迷路になっているようである。とても静かで、壁にかけてある蝋燭の火がたまにチリチリと音を立てる位しか聞こえない。壁はレンガ造りのようだ。天井はわりと高め。
そして通路、つまり僕の足元は、延々と赤い絨毯が敷いてあった。絨毯の素材はとても柔らかく、上質なのは見ただけで分かる。腰を屈めてそれを触ってみると、フワフワして手触りがとても心地よい。丁度暖かいし、毛布でもあれば十分ここで寝られそうな位いい絨毯である。もちろんまったく汚れなどは見当たらない。
この先には一体何があるのだろう。表に掲げられた看板は一体どういう意味だろう。謎は謎を呼ぶが、とにかく先に進んでみよう。と、2〜3歩歩いた所で後ろの扉からカチリという音が聞こえた。え?まさか、と思い、引き返してドアを開けようとしたが、鍵が掛けられてしまったようでまったく動かない。しまった、と思ったがもう遅かった!僕は閉じこめられてしまったのだ。
ガタガタガタ。何とかして外に出ようとドアを押したり引いたりしていたが、どうにも外には出られそうにもない。仕方ない、先へ進むしかなさそうだ、等と思い始めた時、後ろから声があった。
「怖がらなくてもいいのです。」
その突然の声に、びっくりして振り返った。そこには一人の女性が立っていた。髪を腰の辺りまで伸ばし、切れ長の目、筋の通った高い鼻、赤く染められた唇、細い体付き、整った顔立ち、かなりの美人であった。が、僕は変な恐怖を覚えた。彼女の格好は、いわゆるレオタードで、すらりと伸びた細い手足、細い腰なのにふくよかな胸とお尻、綺麗な肌…。そして、長く尖った耳と後ろからくねくねと動く尻尾…。し、しっぽ?
「ようこそ、”ないと・めあ”へ。」
女性は、冴え渡るような声で話して来る。が、僕は尋常ではない目の前の存在に、恐怖と混乱を覚えるばかりであった。一体こいつは何者なのか。普通の人間とはどうやら言えなさそうだ。
「君は…一体誰?」そう問いかけると、彼女の唇が薄く笑んだ。
「私はサキュバス。この塔の主人であられる”ないと・めあ”様の側近です。”めあ”さまはあなたをとても気に入られました。だから、あなたを歓迎する為にこの館にお招き致しました。そうそう、私達は人間ではありません。あなた方の尺度で言うと、女の悪魔、女魔といった所でしょうか…。」
「女魔?サキュバス?一体君は何を言っているんだ?」
「お疑いになるのも無理はありません。現実には存在しないとあなたは思っていらっしゃるのですから。たしかに私達は、現実の世界に実在している者ではありません。あなた方のいる世界とは、別の世界の住人です。」
「別の世界?」
「そう。あなた方はまだ、自分の世界が唯一の世界だと思っているでしょうし、それ以外の世界を確認するだけの知識もなさそうです。しかし、世界はもう一つあるのです。あなた方の世界と重なりながら、お互いに干渉せず、ある地点に同時に二つの”存在”が重なっている、そういう世界があるのです。私達は、あなた方の世界の反対側の住人です。」
「…。」
「もちろん、まったくお互いに二つの世界の事を知らないという訳ではないでしょう。あなた方の中にも、霊界だとか、天界だとか、魔界といって、自分達とは別の世界を想定しているでしょう。でも誰も、その世界の事をほとんど知らないようです。あなた方の世界は、物質とエネルギーから構成される世界、物質界です。それに対して私達の世界は、精神と形相の世界です。あなた方の定義では、イデアなんて言うようですが。」
「イデア…。聞いた事はあるが、一体何の事だか…。」
「詳しい説明は省きましょう。とにかく、あなた方が悪魔だとか神々だとか霊とか言っているものは、こちらの精神界の住人の事なのです。私達もその仲間です。そして私達もあなた方も、普通の手段ではほとんど干渉する事はできません。本当はあなた方の”思考”も、それ自体はこちら側にあるのに、物質界と繋げる為に、それを脳の電気信号に変えてエネルギーに変換する事で、あなた方は物質界に生きる事ができる訳ですが、私達は完全にこちら側の住人で、あなた方も物質界に入り込んで精神界から離れてしまった”あちら側”の住人で、お互いには干渉できないのです。だから…。」
「夢…。」
「そうです。たしかに、こちら側では、もう随分昔から、直接物質界に干渉できる装置がありましたが、それは一方的で力も弱く、その科学の進歩をもってしても、未だに完全な形で干渉はできない状態です。精々簡単な幻覚を見せるとか、数分だけ物質界に自分の映像を投影させるとか。そんな程度です。完全に物質界に干渉する為には、物質界の住人が精神的に無防備な状態の時を狙う他はないのです。だから”めあ”さまがあなたをここにご招待する為に、あなたが眠った時の夢の中に干渉し、あなたの精神をこちらに引き込む他はなかった訳です。」
相手の言っている事は、なんだか分かったような分からないような、御伽話を聞いているような、半信半疑といった気持ちで聞き入る他はなかった。だがどうやら、僕は夢を見ていて、その夢に悪魔がつけ込んだらしい、という事は分かった。本当に悪魔がいる、とすればの話だが。
「とりあえず話は分かった。でも僕は、別に招待されたいとは思わない。帰してくれないか?」
「それはできません。先程申し上げたように”めあ”さまがあなたをお気に召されたのです。だからあなたは、ここで”めあ”さまの歓迎を受けなければなりません。」
「そんな義務はない。」
「そもそもあなたの精神は、完全にこちら側に取り込まれてしまっています。抜け出す事はできません。だから義務ではなく必然なのです。」
「何が必然だ!いいから帰してくれ!目覚めさせてくれ!」僕は訳が分からないまま女を怒鳴りつけた。
「そう言うと思っていました。だから、”めあ”さまは一つゲームをしようと仰いました。」
「ゲームだと?」
「あなたが自力でこの館から抜け出せたなら、あなたを物質界に帰してあげましょう。あなたの後ろの入り口はもう閉鎖されました。ここから出る為にはもう一つの”出口”を探さなければなりません。そしてその出口は、”めあ”さまのお部屋にございます。この塔の最上階です。」
「ふん。じゃあ、とっととこの迷路を駆け抜けて階段を見つけ、どんどん上に行って、その出口に飛び込めば俺の勝ち、という訳だな。言っとくけどな、どんな迷路も、途中で道が変わらない限り右手を壁につけたまま走り抜ければ必ず出口に繋がるんだ。迷路は得意なんだよ。残念だったな。」
どうせ夢だ、という思いがあった。だから目の前の美女に、後に散々苦労させられる事になるこの悪魔に、平気で軽口が叩けたのだった。
「ええ。迷路自体はとても簡単な造りですし、途中で道が変わる事もありません。走って行ったとすれば、すぐにでも出られるでしょう。でも、それではゲームになりません。私達も”めあ”さまのお言いつけ通り、塔の中であなたを歓迎させていただきます。」
「さっきから歓迎歓迎と言ってるけど、一体何をするんだ?」
「この塔に漂う甘い香り、何だと思いますか?」
「知るか。」
「若い女の匂いです。この塔には、”めあ”さまご自身がお創りになった女達が数え切れない程います。私も創られた者です。彼女達が、あなたとセックスします。これが歓迎です。」
「えっ…」いきなり美女からセックスと言われて一瞬怯んでしまった。
「ゲームのルールは簡単です。あなたは何をしても自由。只ひたすら出口を見つけて下さい。ただし私達はあなたを射精させる為に何でもします。出口に出たらあなたの勝ち。あなたがイッてしまったら私達、”ないと・めあ”さまの勝ち。」
「そ、そんな!そんなのできる訳ないじゃないか!」僕はまだセックスの経験がない。それなのに、数え切れない女達を相手にして、一滴も出さずに出口を見つけろだと?何考えてるんだ。無理だ…。
「もちろん、必ずセックスしなければならない訳ではありません。逃げたければ逃げてもいいのですよ。逃げられれば、の話ですが。ちなみに、出口は最上階の”めあ”さまのお部屋にあると言いました。出口には鍵が掛かっています。鍵を開けるには、”めあ”さまを倒す必要が、ふふ…、あります。そうそう、私達は、イってしまったら消えてしまうように作られています。でも”めあ”さまの為に、皆あなたを射精させようとするでしょう。私達に精液を搾られたらあなたの負けです。」
それからも、ゲームの説明を黙って聞いていた。今更逃げようとしても逃げられる雰囲気じゃないし、ゲーム自体を拒否できる訳でもなさそうだ。でも、こうなると出口に出られる可能性はかなり少ない。圧倒的に相手が有利だからだ。くそ、只のいたぶりという訳か。
ゲームのルールを纏めてみると、
1.この塔には僕をイかせようとする美少女モンスター達が解き放たれている。
2.彼女達との戦いは、ずばり”セックス勝負”。先にイかせた方の勝ち、先にイッたら負け。女の側は一度のエクスタシーで消滅する。逃げられれば逃げてもいいが…。
3.自分で抜く分にはいくらイってもゲームオーバーにはならない。だからエッチな戦闘の後イキそうになっていたら自分でペニスをしごいて射精して置けば、その後の戦いは結構有利になる。
4.最終的な僕の目標は、この塔を脱出する事。そして”ないと・めあ”の目標は、僕を犯す事。僕が彼女達の攻撃で果ててしまったら、めあに「魂を取られる」。
「…魂を取られるって、一体どうなるんだ?」
「どうもなりませんわ。只出口が永遠に閉ざされるだけ。ここで永遠に、私達が、あなたを快感の虜にして差し上げます。」
ここから出られない…。嫌だ、僕はまだ生きたい。こんな所にいつまでもいる訳には行かない。でも僕は童貞、自信がまったくない。本当に切り抜けられるのだろうか?
って、これは夢なんだろう?多分こんなの、全部ウソだ。後数時間もすれば、すぐに目が覚めて、いつも通りの日常が始まるんだ…。何をビビッているんだ。
「それじゃあ、まず敵としてのお相手は、君という訳だな。」もうほとんど開き直って、尊大にサキュバスに迫った。どうせ夢、折角だから楽しもう。
「いいえ。今の私は敵ではありません。ずっと後程、勝負させて頂きますわ。今は只の案内役。私の案内役としての最後の仕事は、あなたの今のお疑い、しょせん夢だと思っていらっしゃるでしょう、それを晴らす事です。特別にあなたを抱いて差し上げますわ。それでこれが、実際に起こっている事だと納得して頂けるでしょう。」
「抱いて差し上げるだと?随分態度がでかいじゃないか。」
「私は、”めあ”さまの次に実力があります。今のあなた、そう、まだセックス経験もないのに、私が本気を出したら、あなたなんてとめどなく射精なさる事でしょうね。」
「随分自信家だな。抱いて貰おうじゃないか。へへ。」まだ、自分の状況を把握していなかったのだ。
「今は特別に、何度イっても無効とします。私とのセックスが終了して、あなたが疲れ果てた時点で、ゲームスタートです。それなら、セックス初心者のあなたでも、このゲームを楽しめるでしょう。」
「ふん。」
「では、服を脱いで下さいませ。」
僕はもうすでに勃起していた。目の前にレオタード姿の美女がいて、セックスがどうとかいう話をされたら、初心者なら誰だってこうなるさ。僕は黙って、自分の服を脱いだ。余りペニスには自信がないが、どうせ夢だと思えば、割合平気だった。
「あらあなた、包茎でいらっしゃるのですね。ふふ、かわいい…。」
サキュバスは、目の前にいる僕に細い手を伸ばし、頬に触れた。冷たくて柔らかくてスベスベした手が、僕の頬をなで、首筋をなでる。女の人の手って、こんなにやわらかくて気持ちいいんだ。
「ふふ…。こんな程度で感じてしまって、私の手があなたのペニスを包んだら、どうなるでしょう。」
妖しく笑みを浮かべたサキュバスは、さらに僕に近づき、ゆっくりと僕のペニスを握った。やわらかい感触に包み込まれる。そのままジワリと締め付けられた!
「あ…、あっ!ああ!」初めて女の手に触れられて、僕は感じまくってしまった。ほんの一秒程、握り締められただけで、その絶妙な感触に、皮かむりのペニスの先から精液をほとばしらせた。
「あら。一秒と持たなかったわ。ふふ、もっとすごい事してあげる。」
サキュバスは、僕のペニスを握り締めたまま、ゆっくりと手を奥へスライドさせ、そのまま僕のペニスの皮をむいた。
「い、痛っ!」瞬間激痛が走ったが、すぐに柔らかい手の感触で一杯になった。いかん、このままでは、握り締められるだけでまたイってしまいそうだ。しかしさらにサキュバスは、ペニスを握り締めたまま、指を蠕動させ、握ったり緩めたりを素早く繰り返した!もみもみもみ…。
「あ、ひっ!やっ!うっ!」さっき出したばっかりなのに、すぐに込み上げて来て、また射精させられてしまった!
「まだしごいてもいませんのよ。なのに出してしまうなんて…。」サキュバスはそのまま、僕のペニスを強く握り締めたまま、ゆっくり上下に動かした。
が、さすがに連続して二回イかされているので、疲れも出て来たのか、今度はあっという間にイかされる、という事はなかった。が、ゆっくりではあるが男の感じるツボを心得ているらしく、絶妙な指使いで、僕は感じながら腰を回転させるようにくねらせてしまった。
「そろそろいいみたいですね。まだ手のテクニックはほとんど使っていませんけど、この位にして置きます。」
そう言うとサキュバスは手を離した。
「さあ、横になって下さい。」
言われるままに横になった。さっきは手触りだけだったが、実際に裸で横たわってみると、この絨毯、単に心地よいというだけでなく、いつでもセックスできるように誂えてある事が分かった。その証拠に、絨毯の柔らかい生地が、既に僕の性感を高め、もしうつぶせになってペニスをこすり付けたらすぐにでも絨毯に精液をぶちまけてしまうだろうと思える程、性的に気持ちいい素材でできていたのだ。
「特別に、私の中に入れさせてあげます。今童貞をお捨てになっておけば、これから少しは私達を楽しませてくれるゲームをして下さるでしょう。」
「う、あ、や、やめて…。」正直言って怖かった。初めて、僕はセックスするのだ。しかもこんな形で…。
「ふふ、何回イクかしらね。今は本気を出しません。入れても動かないで置きます。あなたも動かない方がよろしくてよ。」
仰向けになった僕のペニスは、彼女の指技で、二回射精しているにも拘らずそそり立っていた。と言ってもあまり大きいとは言えないのだろうけど。その腰の上に、サキュバスが腰を下ろし始める。レオタードの下の部分を少しずらし、性器を露にした。と言っても、僕からはよく見えなかった。どんな風になっているのか見ようとした瞬間、僕は我を忘れた。
「ああっ!」
「まだ、あてがっただけですわ。見たかったの?ふふ、これから先、いくらでも見られますわ。それよりほらぁ、どんどん入って行きますわよ?」
ぬめぬめして柔らかくて、指先とは違う暖かさがあり、今までにない不思議な感触が、僕のペニスの先端からじわじわと根元に広がって来る。手とは比べ物にならない強烈な締め付けが、ついに僕のペニスを包み込んだ!その間に一回射精している。そして包み込んだ瞬間、また出してしまった!「ひ…。」ほとんど声が出なかった。いや、声を出すのも忘れていたのだ。これが女性器!これがセックス!気持ちよすぎる!ああっまた!
結局挿入する過程だけで、三回出してしまった。
「もっと強くなって下さいね。こんな程度だと、ほとんどゲームは楽しめなくってよ?」
「あああ!また出る!」
彼女はまったく腰を動かしていないのに、オンナの感触だけで、また射精感が込み上げて来る。だが、これからのゲームがこれなのだ。できるだけ我慢しなくては!
たしかに、サキュバスは強敵だった。その感触だけで、そしてほとんど技を使っていない状態なのに、絶大な攻撃力を持っている。それに対して僕は童貞。防御力はほとんどない。レベル1なんて、こんなもんか。できるだけ我慢しよう我慢しようと踏ん張るが、ねっとり絡みついたオンナは、まだまだ僕から精液を吸い上げようとする!
「もうだめ!」また射精してしまった。イかされたら負け、というルールが、いかに厳しいかを思い知らされた。
一体、何回射精させられただろう。いい加減、疲れて来た。ペニスが痛い。出し過ぎだ。
「お願い、もう勘弁して…。」たまらなくなって、僕はサキュバスに懇願した。
「あら、さっきまでの勢いはどうしたのかしら。ふふ、もう一度勢いづけてあげる。ほんの少し、力を入れるだけですけど。」
サキュバスは、少しだけ腰を浮かせた。上半身を前に倒し、仰向けの僕の腕に手を乗せ、体重をかけた。整った綺麗な顔が僕の顔を覗き込む。「サキュバス、というのは、男の精液を奪う事を仕事とする悪魔なのよ。淫魔の恐ろしさ、たっぷりと教えてあげる。…秘技、蠕動搾精!」
「え…。ひ、ぎゃああああ!」突然、サキュバスのオンナが激しく蠕動運動を始めた!根元を締め付けたと思うと、すぐにそれが先端に襲い掛かる!まるで揉みしだくように、搾り取るように、ウネウネと動いて来る。もう痛くて一滴も出ないと思っていたのに、あっという間にまた射精してしまった!逃れようとしても、両手はサキュバスの手でしっかり固定されている。動けない!サキュバスの方は、まったく動かないで、オンナだけが激しく僕のペニスを舐っている!
「私のテクニックの中でも、これは初歩的な物よ。でも、一体何回出しているかしら。あら、またイッたわね。じゃあ、後二回出したら、離してあげる。」
あと二回。し、死ぬ…。と、諦めかけていると、オンナはさらにスピードを上げて僕のペニスを揉みしだいた!あっという間に一回、そしてそれから一分も経たない内に、もう一回、精液をオンナに放出した。
最後の方の精液は、もうほとんど中身がない状態だっただろう。完全に枯渇である。そして完敗である。やっとサキュバスは僕のペニスを離した。疲れ果てて、完全に萎えてしまった。暫く起き上がる事もできそうにない。
「これで分かったでしょう。これは夢だけど、でもあなたの思い描くような虚構じゃないわ。全部実際に起こっている事よ。さあ、立ち上がる事ができたら、ゲーム開始よ。精々私達を楽しませてね。」
そう言うとサキュバスは、ずれたレオタードを元に戻し、立ち去って行った。暫く動く事ができなかった。だが、今のままじゃいけない。今の相手が強力な敵なら、暫く出会う敵はそれよりもずっと弱い筈だ。今の戦いで少しは慣れたに違いない。もしかしたら何とかなるかも知れないぞ。
もう、どうせ夢と疑う事はなかった。命がけで、このゲームを勝ち抜こうと誓った。あれからどれ位時間が経ったか分からない。何とか立ち上がる事ができた僕は、よろよろと、この淫女達の迷宮の奥地へと、足を踏み入れて行くのだった…。