入院前のリラックス
先ほどまで、もうろうとしていた意識が、とつぜん覚醒してゆく。
それまで、自分が誰であるのか、名前も職業も言えず、ただうわごとのように何かをつぶやいて、その意味内容を自分自身で把握することができないでいた。
そんな意味不明の言葉でさえ、救急隊員たちは一言も聞き漏らさなかった。そこは、さすがに慣れたもののようで、急患のわずかな情報といくつかの検査から、容体を吸い上げ、病院に適切に連絡し、搬送準備を整える。
そこまでは、何となくぼんやりだが、覚えている。あとは、何がどうなったのか、落ち着くまで前後不覚状態だった。
気が付いた場所は病院。そこで、僕ははっきりと、自分が何者であるのかを思いだした。頭がすっきりするにつれて、自分の置かれている状況の奇妙さに、すぐさま気づかされるのだった。
体を動かすことができない。手首足首ともに、細いロープのようなもので固定されてしまっている! 食い込むほどキツいわけでもないけれども、伸縮自在に縛ってあって、手足を動かそうとしても、少し伸び縮みするだけで、痛くはないが束縛からは逃れられない、そんな特殊な構造をしているのであった。
さらに、上下の服は全て脱がされ、全裸にされてしまっている。いつの間に服を脱いだ? いや……脱がされた!?
その答えは、すぐに理解できた。
僕は仰向けに全裸で寝かされており、四肢を固定されている。そして、ベッドの周囲をずらりと取り囲む、若い女性集団の表情、そして上半身から、僕はすべてを理解した。
それは一種異様な光景であり、しかし決してありえない、ということでもなかった。
彼女たちはしっかりナースキャップをかぶっていながら、全員、上半身裸であり、僕を見下ろしてクスクス笑いあっている。もうそれだけで、これから自分が何をされるのか、ほとんど本能的に理解できてしまうのであった。
「気が付きましたねえ。」
「まだ緊張が残っているみたいね。」
「もっと緊張をほぐしてあげます。”処置”はじっくりと、あなたが完全にリラックスしてからですよ〜」
「はーい、じっとしていてくださいねー」
「くすくす……」
大小さまざまなおっぱいが、ツンと上を向いて、形の良さを保ちながら、全員が僕一人に惜しげもなく向けられている。
自分の病名や容態はわからなかったが、さっき救急車で運ばれていた時よりは、はるかに気分が回復していた。が、周囲に時計はなく、あれから何時間経ったのかは、皆目見当がつかない。
何がどうなっているのかはわからないが、彼女たちがすでに性的に完全に興奮してしまっており、その欲求の対象が、ただ僕一人だけに向けられていることはわかる。
このあと、何らかの処置をされるのだが、その前に僕自身が、完全に”リラックス”しなければならないのだという。いったいなぜ、それがこのシチュエーションに結びつくのか、病名は何であり、自分の身体に何が起こっているのか、どんな処置が待っているのか、そのためになぜリラックスをしなければならないのか、わからないことだらけだった。
それでも、その”リラックス”の直接的な内容が理解できる。生物としての本能がそうさせる。
大人になりたての、娘たちの半裸。スベスベの肌質と、しっとり張りのある肉体。抱き心地が良さそうなやわらかさと、プルンと揺れる乳房の群。この半裸の集団を前にして、僕の股間が熱くならないはずはなかった。
かろうじてナースキャップと、白やピンクのミニスカートから、彼女たちが看護婦さんであることは理解できたが、もはやそれ以上のことは、ミニスカから伸びる形のよい素足が、詮索を許さないのだった。
「あうっふ……」
学校を出たばかりの娘たちの、すべすべの手のひらが、一斉に僕の全身に襲いかかる!
顔面になにやら投与されているらしく、僕はくぐもった声を出すことはできたが、はっきりした言葉を出すことができないでいた。
「ほれほれ〜☆」
「むぐうっふ!」
彼女たちは、心地よい手の肌触りを上手に駆使しながら、僕の全身を愛撫しつつ、巧みに指先をコチョコチョと動かし、感じやすい部位のすべてをくすぐってくる。
脇の下、脇腹、内股、会陰、玉袋、膝裏、そして足の裏まで、まんべんなく女の子たちの指先が吸いつき、素早く滑って、くすぐったいところをお構いなしにくすぐってくる。彼女たちは交代しながら、ひとりが一カ所をくすぐるのではなく、様々に個性のある指先や手のひら、しっとりした甲を駆使して、決して飽きのこない愛撫とくすぐりを続けるのだった。
あまりに心地よいくすぐったさに、くぐもった声を出して四肢をばたつかせ、暴れそうになるが、ナースたちは慣れているようで、そんな僕を押さえつけるでもなく、やんわりと鎮める手段を心得ていた。
くすぐりポイント以外の場所では、ほとんど全身を埋め尽くすほどの、女手による愛撫がくり返された。それは確実に、僕の性感神経を直撃し、くすぐったさに暴れる身体を、やんわりとなだめる効果があった。くすぐったさに逃げようとする反射神経まで、性感を高めるために利用されているんだ。
どんなに激しくくすぐられても、それに反応して体をくねらせることもできない。おまけに四肢は縛られている。
その心地よい感触はすべて、僕の股間に集約され、性的な興奮を高める方へと逆流していく。
看護婦さんたちは容赦なく、刻みつけるように、女手のなめらかな感触を、僕の全身に滑らせていく。みずみずしく手入れされた手のひらも、白魚のような細い指先も、スベスベの手の甲も、すべてはペニスに興奮と血流を与えるために駆使されている。
「ほらっ、ココもすっかりいい気持ちになってるよね。」
「うぐ……」
ペニスは激しく隆起していた。波打つように揺さぶられる女体の群と、おっぱいの肉厚のうねりが、とっくに僕を高めていたが、そこへくすぐりと愛撫攻撃が加わり、若い僕はこれにあらがう手段を持っていなかった。
「ちんちん、すっかり大きくなっちゃいましたねー♪」
「でもぉ〜皮がぜんぜん剥けてないよ?」
「手で剥いたらムケるんだー☆」
あれだけ激しく僕の全身をまさぐっているのに、やわらかなレディーたちは、ペニスに対しては、おそるおそる手をのばし、指先でつまみ上げたり、軽い力で握ってみせたりするばかりであった。
それは、彼女たちが男根に不慣れだからでは決してなかった。全く逆だ。
女の子たちがこなれた手つきで、余裕にペニスをかわいがれば、逆に僕なんかは、すぐに精液を吐き出してしまう。そんなこと、彼女たちは百も承知で、だからこそ、存分にくすぐり愛撫しつくしてからでなければ、おいそれとペニスを心地よく刺激することができない。
やわらかにうごめく彼女たちの腕の動きと、惜しげもなく披露される脇の下のスベスベの質感、そして揺れる乳房……。僕はこれに夢中になり、凝視した。もはやこちらも向こうも、何も包み隠さずに、欲情を吐き出し続けるビイストに変貌していた。
しかし一方で、身動きがとれない僕は、積極的に精を吐き出すこともできず、彼女たちのなすがままになり、その心地よさに酔いしれ、みずから射精を抑えて、いつまでもこの気持ちいいままで過ごしたいと願望していた。それがストッパーとなり、僕はすぐに射精してしまうような情けない状況を回避できていた。
もちろん看護婦たちも、そこまで計算ずくで連携して動いているようだ。ペニスが脈打たないギリギリのところで、快感が持続するよう、上手にコントロールしている。僕の男性としての本能も心情も十分に忖度して、イクかイかないかギリギリのところで、気持ちよい刺激だけを与え続けている。
ナースたちはしっかり交代しながら、ペニスの根本をつかんだり、先端を指先でつついたり、尿道口を拡げてみたりする。軽い刺激だけでも、全身のマッサージおよびくすぐり攻撃によって、存分に高められている。彼女たちは、僕の足の指の間など、きめ細かな部位まで、鋭く見つけだしてはくすぐり、かわいがり、やわらかな刺激によって股間の快感を引き上げてきた。
「そろそろ出してみましょうかー?」
「どうしましょう。ふつうにしごいて出させます?」
「そしたら飛び散っちゃいますねえ……」
「じゃあやっぱり、仮性用のフィニッシュでリラックスしましょう!」
あうあ!
これまでとは明らかに違う、ペニスへの集中攻撃が始まった!
ナースの一人が、ペニス先端の皮をつまみ上げ、親指と人差し指だけできゅっと引き締める。皮をしっかりつまんで塞ぎ、すばやく先端を揉みしだき始めた。先っぽばかりに快感が押し寄せ、皮越しにではあるが、女性特有のしなやかな指先の感触が、尿道口や裏スジに刻みつけられ、瞬時にしてイク直前の多幸感に高められてしまう。
一方で別の看護婦が、おっぱいを揺さぶりながら、ペニスの根本を右手で摘まむようにし、人差し指から薬指の中間あたりで、シュッシュッと軽い力で素早くしごきたてる! あえて強く握らずにスピードを重視したせいで、僕は却ってペニスの先端以外をその女性に支配され、ただひたすら射精の準備に入らされるばかりであった。
先っぽの皮が揉まれ、亀頭全体に強い快感がこみ上げてくる。収まることは決してなく、快楽は強まるばかりであった。
さらに別の女性による、やわらかでスピーディな手コキによって、精巣から押し上げられる体液が、これでもかと尿道へと絞り出されていく。
「むぐう!」
これ以上耐えることはできなかった。
ペニスはどくどくと激しく脈打ち、その律動が心臓の鼓動とリンクして、全身が射精しているほどの錯覚を受けてしまう。
だが、精液は決して外に飛び出さず、ナースの指先によってせき止められた。白濁液を見られることはなかった。それはすべて、皮の中にため込まれる。先っぽが少し膨らみ、包茎ペニスの皮袋の中に、しっかりと収まってしまう。どんなに量が増えても、細い指に挟まれた先端から、精液がこぼれることはなかった。
律動が終わってもしばらく、女たちの手は止まらなかった。最後の一滴を出し尽くすまで、集団ナースたちの手の攻撃は止まない。しばらく愛撫や手コキ、先端揉みしだきが続けられ、もうこれ以上はどうしても脈打たないというところにくるまで、女の子たちはノンストップで”営み”を続ける。
どろり……
ステンレスの皿が用意され、ペニス先端にあてがわれると、ペニスから濃い体液が吐き出される。乳を搾るように、代わる代わるペニスが根本から先端に絞られ続けた。彼女たちは、しつこく手を動かし続けて、尿管にあるすべての精液を、執拗に吐き出させようとしてくる。
もう、何も考えられなかった。ただ性感の虜となり、看護婦さんたちの優しい手の動きに誘導され、射精が終わるまで深いため息とともに”リラックス”させられた。
出し尽くした脱力感で、僕はぐったりとなった。
「はーい。すっかりリラックスしましたねー。じゃあ、”処置”に入りますね〜」
ロープを解かれ、上半身を抱き起こされる。
すぐさま、耳元でハァハァとくすぐったい吐息が密着する。
見ると、まだ10代かと見まがうほどかわいらしい娘さんが、しなやかな手で僕の片腕をつかんだ。
「大丈夫……私……やれるっ!!」
肩までのツインテールがふさふさと揺れる。テールの先っぽだけが、くりんと跳ね上がっていて、とても初々しい感じの娘さんだ。
彼女のもう片方の手は、なにやら特殊な注射器が握られていた。その先端がふるふると大きくふるえている。
「きっ、筋肉注射なんだから痛いけど……こないだは30回目で成功したんだから、今度も大丈夫……がんばれ私っ!」
「えっ……ちょっ……」
かろうじて飛び出した言葉は、次の瞬間には完全に寸断された。たとえようもない痛みが腕に襲いかかったかと思うと、僕はまたもや、前後不覚に陥るのだった。
心の奥底に沈み込むように、「しばらくうちに入院ね☆」という若娘の最後の言葉が、ほんとうに最後の最後に、耳をかすめた。
(完)