呪いのエロビデオ 人形の館編
「おい、知ってるか?」友人のSが突然話題を変えた。
「…何が?」
「なんでも、日本のどこかに"呪いのビデオ"が実在するらしいぜ。」「あーあー映画の見すぎ〜!」「いや、あのビデオじゃなくて、まったく別の奴らしいぞ。」「有名になると類似品が出るもんさ。ってか話題としてはもう古いね。」「相変わらず幽霊とかの類は信じない奴だな。」
「そんなのいる訳ないじゃん。」僕は現実派だ。
「まぁ聞けよ。普通の呪いのビデオは、見たら死ぬって話だろ?だけどさ、こないだ聞いたのはちょっと違うんだな。」「?」
「それも"呪いのエロビデオ"らしいんだ。…って、おいおい、どこ行くんだよ。」
「もー付き合ってらんないね。バカバカしい!」
「まぁ待てって。そのビデオを見ると、女の幽霊とエッチできる様になるらしいんだよ。」「…ハイハイ。」「すごいいい気持ちらしいぜ。」「…。」
ワイ談とかは嫌いじゃない。そういう創作話ならいいかもな。
「そのビデオを見た男は、文字通り昇天できるって噂だ。」「…本当にそんな事があるならいいね。僕みたいに彼女がいない男には特にね。」
「…でも、そのビデオを見た男は、みんな失踪しているんだ。」「はっはっは、来たよ来たよ。ホラーや怪談の常套だな。」「…やりにくいなあ。やっぱりそういうの信じてない奴に話しても面白くないか。」「そうだな、もっとエッチ部分を強調して創作すれば興味が出たかもね。」
もう夕方。僕はSと別れて家路についた。Sはそういうのが大好きな男だからな。ま、話半分でいつも聞いてはやるんだけど、相手もそれが分かってて話してるんだから、ケンカにもならない。それなりに仲のよい友人だった。
翌日の朝、電話が鳴る。パンを齧りながら学ランを着ていた時だった。Sの家族からだった。なんでも早朝にSが私服のまま黙って家を出て行ったのだという。今日は学校は休みなのかという確認らしい。もちろん今日は平日だ。休みじゃない。
だが、ちょっと奇妙だ。Sは家族とよく話をする。僕みたいに両親とあまり会話がないのに比べれば立派な奴だ。そいつが何も言わずに無表情・無言のまま黙って家を出るなんて考えられない。しかもSの父親が健康の為のランニングをしようと準備をしていた5時30分頃に、ふらりと外出するなんて考えられない。それから2時間あまり経っても戻って来ないと言うのだ。
とりあえず今はもう時間がない。Sの両親もそれは変わらない。とりあえず今日一日様子を見るという事で電話を切った。
その日の夕方。一段と肌寒い日。Sの姿はなかった。夜になって、再びSの家族から電話。まだ戻らないのだという。明日は休みなので、彼の家に行って見る事にした。同世代なら、彼の部屋から手がかりも掴みやすいだろう。
次の日のお昼頃、僕はSの家にお邪魔した。Sの部屋に通される。整然とした部屋だ。綺麗に片付けられている。特に変わった所はなかった。彼は昨日の朝からまったく戻っていないし、連絡もないとの事。
少し厚めのノートが机の上にある。日記のようだ。ご両親の顔を伺うと、うなずいた。事態が異常なだけに、日記を見ても構わないだろう。後で謝って置くか。
「●月●日 晴れ」んー、ホラーとか好きで結構スケベな癖に、僕よりも丁寧に字を書いてるな。
「やっと手に入れた。でも、一人で見るのはちょっと怖いかな。そうだ、N(僕の名だ)でも誘ってみようか。」
「●月●日 晴れ
Nを誘ったけど、やっぱりあいつは現実主義者だ。一緒に見てくれる気配もなさそうなので誘えなかった。仕方ない、これから一人で見る。インチキなのはNに指摘されなくたって分かってる。それを楽しむから面白いんじゃないか。」
…。一昨日の会話を思い出した。「手に入れた」ってのは、"呪いのエロビデオ"の事だったのか?いや、まさかね…
「!」
ページをめくると、前までの丁寧に右上がりに並んだSの文字とはとても思えないような、乱雑な殴り書きがページいっぱいに大きな字で書いてある。「え…い…」
えいさべーな、いや、えりざべーと、と読めるな。エリザベート?人名かな。でも、これだけじゃ、何の事だか全然分からない。
日記はここで途切れていた。「これから一人で見る」次の日の早朝に、Sはいなくなってしまった。まさか、本当にビデオがあるのか…?
僕はビデオデッキ周辺を探してみた。几帳面な性格だから、Sはテープにもちゃんとラベルを貼っている。もちろんエッチなビデオは別のタイトルだ。「実録 足尾銅山事件」とか、「実録 ケネディ大統領暗殺の真相」とか…。"実録"って書いてあれば、それはエロビデオなんだ。ごまかし方がうまいんだかヘタなんだか…
その中にラベルの貼っていない古びたテープがあった。このテープだけが違和感がある。
「まさか…」
このビデオを見て、Sは呪われ、失踪してしまったというのか。もし、あの日Sに誘われて僕も一緒に見てしまったら、僕まで呪われて失踪してしまったのか…?
いやいや、そんな!僕とした事が、ばかばかしい妄想をしてしまった。非現実的だ。ありえない。きっと関係ない。そうに決まってる。
しかし、手がかりになりそうな物はとりあえずこのビデオだけだ。僕はこれを借りる事にした。多分ものすごいイベントの告知なんかが収録されていて、大急ぎで会場にでも行ったのではないか。泊りがけで。…この推理も非現実的だなあ。
とにかく、このビデオを借り、家に帰った。今日は両親とも夜勤の為、僕しかいない。ビデオをセットする。スイッチを入れようとして、指が止まった。
もし、もし、本当に、このビデオが呪いのビデオ、いや、呪いのエロビデオで、僕まで呪われて失踪してしまったら…
確か、女の幽霊とエッチできるとか言ってたな。最高の快感なら、それも悪くはないが、その後失踪というのがオチだからな…
いざとなると怖い。見るべきか、見ざるべきか!
…。バカみたい。何を悩んでいるんだ。そういう風に尾ひれを付けて噂が広がっただけじゃないか。このビデオだって呪いのエロビデオかどうかも分からないしな。
が、リモコンのスイッチを押そうとすると、やっぱり指が止まってしまう。心の奥底で、まだ恐怖が残っているのか、誰かが遠くからミルナ、と叫んでいる感じ。実際Sは行方不明だ。
ボタンを押そうとしては止め、押そうとしては止めを何度か繰り返して、結局見るのは止めた。こんなので悩む位なら、初めから見なければいい。Sの事は警察に任せよう。
イジェクトボタンを押した。が、ビデオは取り出されず、デッキの奥でうなるだけだった。
「あれ〜、おっかしいな。古いテープ入れたから壊れちまったかな。」何度やってみても、テープは出てこなかった。中で絡まったりしてるのか。参ったなあ。しょうがない、ビデオの事は後で考える事にして、とりあえず夕食にしよう。エロビデオが中に入ったまま修理する事になるのかなあ。最悪。
ビデオデッキのスイッチを消し、用意されていた夕食を温めて平らげると、急に眠くなって来た。こんな時間に眠くなるなんて、どうしたんだろ。でも立ってられない位強い眠気だ。誰もいないし、もう寝てしまおうか。僕は戸締りをして、布団にもぐった。あっという間に夢の世界に堕ちて行った。
夜中。ふと目が覚める。部屋の奥の明かりがチカチカとしている。見るとテレビが付いていた。つけっぱなしだったかな。いや、ちゃんと消した筈だけど…
起き上がって電気を付ける。まだ頭がボ〜ッとして、何が何だか訳が分からない。ふらついてうまく歩けない。まるで雲の上を歩いているみたいに体がおぼつかない。
あれ?テレビの前に何かあるぞ。イスみたいだけど、こんなのあったかな…
そのイスは冴えた頭ならすぐにその奇妙さに気づくだろう。長身の裸の女性が中腰になり、イスの形の姿勢を保っている。女体でできたイスだった。膝までが90度垂直に立ち、膝から90度曲げられて水平に太ももが広がっている。そして、腰から上半身まで、まっすぐに伸びている。手が肘から前に突き出され、握りこぶしが作られている。これが手すりの役割を持っていた。イスに座った上で同じ格好はできるが、何もなしに"彼女"は椅子のポーズを取り続けている。
その表情はまったく無表情で、生気をまったく感じさせなかった。無機質な椅子とまったく同じように、不自然な格好でテレビの前に「空椅子」をしていた。女性が椅子のポーズを取っているのか、椅子が女性のコーティングをしているのかさえ分からなくなって来る。
それでも奇妙だ。この形の椅子なら、お尻の部分に二本脚が下へ伸びていなければバランスが取れない筈。が、この椅子はまっすぐになっている。
何故か僕はほとんど驚かなかった。正常な判断力がほとんどなくなっていたのかも知れない。「変な椅子があるな」位にしか思わなかった。テレビ画面は音もなく砂嵐を映し続けている。
僕は椅子に触れてみた。女性特有の柔らかさと弾力、肌の張りを感じる。間違いなくこれは女体が変化したものだ。
すっきりしない頭で、目の前に何が起こっているのか分かっていなかった為、却って冷静だった。
「私に座って」不意に椅子が口を利いた。「服を脱いで、そして私に座るのです。」僕は状況に何の疑問も持たないまま、言われるままにパジャマを脱ぎ、全裸で"彼女"に座った。
フモッと弾力が背中からお尻、太ももの裏側に吸い付いて来る。僕が座っても椅子はまったくバランスを崩さず、さりとて無理して空椅子をしている様子もなく、つまり筋肉の隆起も感じないで、椅子が僕を包み込んでいる。そのおっぱいが僕の背中でつぶれると、ペニスが反応し始めた。
僕が彼女の手すりに手を乗せると、手すりは指を開いて、僕の手のひらを握って来た。指と指の間を細くしなやかな彼女の指が滑り込む。スベスベしたしなやかな座り心地が、さらに僕を夢心地にした。僕の首筋は彼女の唇が吸い付いている。ちうちうと小さな音を立てて首筋にキスマークをつけようとしていた。
「…あれ?」気がつくと、僕は手足と腰を固定されていた。手首と足首は革の様なバンドで彼女の手首足首と結ばれ、腰にもバンドが締められていた。四肢と腰が椅子と密着したまま縛られる格好になった。
僕は立ち上がろうとしたけど、まったく身動きが取れなかった。座った姿勢というのは無防備だ。手足は動かず、辛うじて上半身を前に倒せはするが、腰を持ち上げようにもそこもしっかり固定されてしまっている。
段々頭がすっきり冴えて来て、正常な判断もできるようになるに連れて、今自分が置かれている異常事態を理解し始めた。僕は罠にかかったのだ。いや、それ以前に現実にありえない状況が起こっているんだ。
「!」テレビ画面が切り替わった。数人の全裸の女性が映し出されている。彼女達は妖しく微笑みながら、どんどんこちらに向かって歩いて来た。彼女達の体がどんどんアップになっている。
ついに、一人目の女性が、画面からこちらに手を伸ばした。白くなまめかしい二本の腕は、あっさりと画面を突き抜けてこちらに伸びている。画面の端を持ち、身を乗り出すと、テレビ画面から娘の上半身が突き出された。画面の向こうから、裸の女の子が「抜け出して」来たんだ!
僕は恐怖に震えながら、それでも成り行きを見守るしかなかった。
二人目、三人目も、同じように画面から出て来た。そして最後の四人目が抜け出すと、画面はまた元の砂嵐に戻った。
僕の目の前には、四人の全裸の女性が立っている。妖しく微笑む人、歯を見せずにやさしく微笑んでいる人、無表情の人、いたずらっぽく笑顔を見せる娘。全員、背が高く巨乳だった。
これに椅子の女性を入れれば五人、僕を取り囲んでいる。僕は訳が分からないまま恐怖に怯えていた。が、逃げ出そうにも既に体は固定されている。
娘達の一人が、ビデオのリモコンを僕に手渡した。これまで注意していなかったが、デッキの電源も入っていた。
恐怖の興奮は、そのまま性的興奮に転換された。絶対逃げられないと分かると却って落ち着いて来た。それと共に裸の女性達に囲まれているという状態が、僕を高めた。
「わたし達と、イイ事しない?」リモコンを手渡した女性が囁いて来た。僕はSの言っていた事を思い出していた。「ビデオを見ると」幽霊とエッチができる。僕はデッキを確認したが、呪いのエロビデオが再生されている気配はない。只電源が入っているだけだ。
そして思い出していた。ビデオを見た男は失踪する。
「気持ちよくなりたかったら、『再生』ボタンを押すのよ。」
目の前に繰り広げられている非現実的な現実は、「ビデオは絶対再生してはいけない」事を直感させる。
座っている僕を見下ろしながら、グラマーな女性達が自分の胸を揉みしだいたりオンナをいじくったりして、僕を誘って来た。若くて耐性のない僕はあっさりと勃起してしまう。だが、右手に持たされた再生ボタンを押せば、きっと殺される。そう思って、体をこわばらせた。
多分、彼女達の誘惑に負けてビデオを再生すれば、僕は呪われてしまうだろう。そしてSと同じようにどこかに連れ去られてしまうんだ。女体の誘惑に屈しちゃダメだ。ここはじっと堪えるしかない。
彼女達は僕がビデオを再生しなかったから、誘惑を始めたのだろう。何とか僕にビデオを見せようとしているんだ。その手には乗るか。
僕がボタンを押そうとしないのを見て、美女達は一斉に僕に群がって来た。僕の唇は柔らかい口唇に包み込まれ、舌先も弄ばれている。右乳首は冷たいしっとりした指先が、左乳首は舌先が、上下左右に弄られている。三人目はわき腹やおなかなどをさすっている。四人目は、太ももや足の裏などをさすって来た。
背中はもち肌の椅子が密着している。全身をめぐる快感に悶えても、身を捩るしかできない。椅子は段々汗ばみ、じっとりとした感触によってさらに肌の吸い付き度を高めた。
だが、誰一人として、いきり立った僕のペニスには指一本触れようとしなかった。あちこち交代しながら愛撫攻撃が繰り広げられても、ペニスは放置された。ガマン汁がどんどん滲み出て来る。
「さあ、『再生』を押しなさい。これはどう?」僕のわきの下が後ろから揉みしだかれ、また僕の太ももを二人がかりで股洗いして来た!椅子の足ごと大きく開かれ、ペニスが空中に伸びている。
くッ、再生を押さなければ、ペニスには触れないという訳か。僕は快感に堪えながら、どんどん誘惑が強烈になって行く中で絶望的な抵抗をする。再生だけは押さない。押してなるものか!
四人の手が一斉に下半身に伸びる。一瞬期待したが、彼女達のスベスベの手や指先が弄んだのは、玉袋や会陰、股の付け根、そしてお尻の穴周辺だった。下腹部に手が固まりになって蠢いているのに、そこから長く伸びたペニスだけは無視された。
この攻撃は強烈だった。ペニスの周りに集中して素早く滑らかに動き回る手。僕が身を捩らせ、体を何とか動かしてペニスに触って貰おうとあがいても、巧みに女手達はペニスを避ける。
椅子もブルブル震え出し、お尻の側に刺激を送り込んで来る。僕の手は椅子の手にガッチリ固定され、自分で自分のペニスを触る事もできなかった。
もう耐え切れない。僕にできるのは再生ボタンを押す事だけだった。
「お願い、もう…」「さあ、再生ボタンを!」「わたし達を見て下さい!」愛撫の手や唇、ペニス以外を這い回るオッパイや太ももやお尻の攻撃が、さらに加速度を高めた。
「うああああ!」僕は再生ボタンを強く押した!その瞬間ビリビリッと全身に激痛が走り、僕の意識は急激に遠のいていった。
…。
…。
気が付くと、僕は真っ白い窓のない部屋に全裸で立っていた。ここは一体どこなんだろう。それにしても、狭くて息苦しい部屋だ。目の前に扉がある。とにかくここから離れよう。
小さな部屋を出ると、広めの細長い通路が奥まで続いていた。四畳半の部屋と同じ位の幅の通路が、長くまっすぐ続いている。奥はもう見えなかった。壁は相変わらず真っ白で、窓も何もない。壁全体が光っていて、電灯なしにも十分明るかった。
何よりも僕の気を引いたのが、通路の両脇に連なっている棚だった。棚というより、僕の腰の高さまで両側の壁が出っ張っており、ちょうど"四"の文字がひっくり返ったような構造になっている。だから通路は広かったが、実際通る道は狭かった。人と人がすれ違う事ができる位だ。
それが一目見て「棚」の役割をしているのは分かった。出っ張りの上部には、奥の方までびっしりと、「人形」が並べられていたからだ。すべて女性の人形で、フランス人形から日本人形まで、体型や服装も千差万別あった。
人形が奥まで続く通路にびっしりと並べられている光景は、かなり不気味なものだった。ここは一体どこなんだ!
今自分が置かれている状況を整理してみた。さっきまで、そうだ、幽霊達に誘惑され、それに負けて「再生」ボタンを押してしまったんだ。その後、一瞬で気を失って、気がついたらここにいた。
やっぱり再生ボタンを押すと、どこかに連れて行かれてしまうんだ。でも、腑に落ちないぞ。Sの場合は、自分から歩いてどこかに行ってしまったんだ。でも僕は、気がついたらここにいたので、完全に連れ去られた形だ。とにかくここにいても仕方がない。僕は歩き出した。奥の見えない通路を。
大分歩いたが、まだ奥が全然霞んでいる。僕は、もしかしたら出られないんじゃないかという思いを必死にかき消していた。歩いて行けば、きっと出られる。そう信じ込んだ。
それにしても、大勢の人形に見つめられながら全裸で歩くのは気分のいいもんじゃないな。全部の人形を後ろ向きにする訳にも行かず(一体何千体あるかも分からない)。黙って歩くが、やっぱり気分が悪い。
そういえば、さっきは幽霊達にペニス周りまで触られて、再生を押せばしてくれるって言ってたのに、再生を押してもこんなヘンな所に連れて来られただけ。詐欺じゃん。
段々腹が立って来た。「畜生!」僕は怒りで傍にあった人形数体にラリアートを喰らわした。人形はぼたぼたと棚から落ち、僕の足元に転がる。「…?」一体の人形のスカートがめくれている。小さな脚の間に、ちゃんとオンナがついていた。この人形は全部ノーパン・ノーヘアに作られているのか。
僕は振り払った人形を拾い上げ、もっと間近で見てみる。たしかにこの形は…。棚に飾ってある浴衣を着た人形を手にとり、そのピンクの浴衣をはだけさせた。すると、サイズが小さい以外、本物の女性と同じように精巧に作られていた。どの人形も、たしかにスベスベで柔らかい材質でできている。男性のペニスが挿入できるように、オンナだけがサイズ不釣合いに大きかったが、ちゃんと胸のふくらみも弾力もある。
僕は人形をじっくり見ている内に、また興奮して来た。さっき抜かれそうで抜かれなかった事も手伝って、精巣の精子はパンパンに溜まっていたんだ。
辺りを見回す。誰もいないし、足音も何も聞こえない。人の気配はない。誰も見ていない。
僕はフランス人形と浴衣人形の服を剥ぎ取った。特殊なシリコンでできているみたいで、肌触りももち肌で心地よかった。きっとここは、人形型のダッチワイフを保管して置く場所なんだろう。そう思うと納得できる。
僕は誰もいない事を確認して、いきり立ったペニスを人形に押し付けた。亀頭がおなかの部分にめり込んで行く。思った通り気持ちいい。行為はエスカレートして行った。浴衣人形の両足の間にペニスを挟み込み、両側から人形の腰を押した。するとペニスを包み込んでいた太ももや臀部がペニスを締め付けた。
浴衣人形を棚に仰向けに寝かせ、今度はフランス人形を手にとった。僕は自分の手でフランス人形を上半身やおなかにこすり付けた。女性と同じスベスベの感触が伝わって来る。
フランス人形と浴衣人形を棚に並べ、ペニスを胸部分で挟み込むようにして押し付けた。小さな、でも結構ふくよかな四個のオッパイが、ペニスに纏わり付く。
僕は調子に乗り、周りにある十数体の人形も全裸にした。そして、わきの下に抱え込んだり、あちこちに侍らせたりして遊んだ。勝手に閉じ込めたんだ、ここで僕が人形を使ってオナニーしたっていいだろう。
一体の人形を股に挟むと、特殊シリコンが玉袋や会陰を包み込む。さあ、いよいよ本番だ。僕はさっきの浴衣人形を拾い上げると、足を大きく開き、いきり立ったペニスにオンナをあてがった。そしてそのままおもちゃを挿入し始めた。
驚くほどあっさりと、人形は僕のペニスを飲み込んで行った。先端に亀頭が当たると、蠢きながらペニスを奥に飲み込むように自動的に動く仕組みらしい。ペニスは根元まで人形に包み込まれた。
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ…
完全に飲み込まれたとたん、人形全体がバイブし始めた。強烈な刺激がペニス全体から全身までに一瞬にして広がった!その上飲み込む機能が蠕動運動になり、グニグニとペニスを揉みしだいている!
「あああー!イイッ!す、スゴイよこれぇ!」僕は恥も外聞もなく叫んでしまった。性玩具は僕のペニスを容赦なくむさぼり続けた。
僕は数体の人形を上半身に抱え込みながら、浴衣人形にあっさりと高められ、あっという間に精液を中に放出してしまった。
放出が終わると、僕も脱力し、棚に腰を下ろしてため息をついた。こんなに気持ちよかったのは初めてだ。僕は浴衣人形を外し、棚の奥に無造作に放り投げた。人形の中には僕の精液が溜まっている。そう思うとちょっと遠ざけて置きたいかな、ってか用済みだ。
ちょっとの間、僕は放心してしまった。が、ここから脱出するという目的を思い出し、再び立ち上がって歩き出そうとした。
「!!」股に挟んでいオナニーの道具にした人形が、股に挟まれたままだった。いや、人形の方が僕の股の間にしがみついていた!?脱力して足も開いていた筈なのに、人形は下に落ちていない。それ所か、玉袋やペニスの根元にしっかりしがみついて、まるで自分の意思があるみたいに股の間に挟まり続けていた。
僕は人形を引き離した。ペリペリと心地よい音がして、人形は股から離れた。それも側に投げると、また歩き出した。今全裸だけど、このまま外に出るのはマズイかもな、と考えながら。
「はうっ!」僕は股の間に柔らかい弾力を感じ、再び股間に目をやる。さっき捨てた筈の人形が、またしがみついていた!今度は、完全に意志を持っているみたいに、自分から動き、そして自分から僕のペニスに手を伸ばしていた!
バカな!人形が動くなんて!
「…動くだけじゃないよ。」…しゃ、しゃべった!
股間の人形はなまめかしく全身を蠢かせ、その小さな両手がペニスをしごき始めた。
「うわ!やめろぉ!」僕は強く人形を叩き落した。すると、側にあった人形が立ち上がり、自分の服を脱ぎ始めた。どこかから芳香が漂い始め、辺りが淫らな雰囲気になった。
僕は訳が分からずに走り出した。人形達が動いて、自分に迫って来る!しかも、奥にある人形も後ろにある人形も、数千体以上はある。これがすべて同じように僕一人めがけて襲いかかろうとしている!
この香りには催淫効果があった。走りながら、段々体の力が抜けて来るのが分かる。それと引き換えに、ペニスには力がどんどん蘇って行く。その上セクシーなドール達がゆっくりと服を脱ぎ始めている。
人形達は、全裸になったら僕を追いかけて来るだろう。まるで見せ付けるように誘いながら淫乱に服を脱いでいる為、彼女達はなかなか全裸にならない。その間に逃げ切らないと。でもこの通路はどこまで続いてるんだ!
勃起したまま走るのは難しい。体のバランスがうまく取れない。だから足は遅くなる。その上薄いピンクの霧を走りながら吸い込んで脱力させられているんだ。それでもこの場を離れなければ、捕まったら大変な目に遭う予感がする。僕はできるだけ早く走り抜けようとした。
服を脱ぎ終わったドール達は、棚の上から、また棚を降りて、ものすごいスピードで追いかけて来た。
「うわ!」棚の上からジャンプした人形が僕の顔を塞ぐ。あわてて僕はこれを振り払い、他にも上から飛びついて来る人形達を叩き落した。
そうしながら走り抜け続けるが、どんどん襲い掛かって来る人形の数が増えて来る。
「あぎゃ!」突然ペニスがバイブ付きの快感に包まれる!後ろから追いついた人形がさらに僕を追い越し、ジャンプして自分のオンナを亀頭に押し付けたのだ。後は自動的に飲み込む機能だから、一瞬にしてペニスは根元まで吸い込まれてしまう。
「くそ!」僕は力いっぱい人形を引き剥がし、また走り出した。が、もう普通に歩くより遅くなっていた。
飛び付いて来る人形達や足を広げてペニスめがけて飛んで来るオンナミサイルを、よけたり振り払ったりしながら、僕は抵抗し続けた。が、その数はかなり多くなり、人形数体をしがみつかせたまま走るようになって行った。
「!!!!」
僕は立ち止まった。棚から通路から、ものすごい数の全裸の人形が、びっしり僕の目の前に立ち裸っていた。前からも追いかけて来ていて、それが完全に追いついたんだ。
後ろを振り返ると、もちろんさっきまで追いかけて来た人形で埋め尽くされている。
前後左右、全裸の淫らなドール達に囲まれてしまった。追い詰められ、僕は絶体絶命だと思った。「こ、ここまでか…」
一体の人形が一歩前進し、僕を見上げながら言った。「出口なんてないわよ。あなたは出られないの。」「くそ…」「勘違いしないでね。出ようと思えば、あなたは何度も外に出るチャンスが『あった』のよ。只、あなた自身で出られない運命を『自分で選択した』だけ。」「な、なんだと?」
「まず、ビデオを見なければ、ここに来る事はなかった。あなたの意思が、あなたをこの快楽地獄に呼んだの。」後ろから別の人形が叫んだ。
「次に、人形を性欲の道具にしなければ、すぐにでも外に出られたわ。でも、あなたは浴衣の女の子の中に精を放出した。これであなたは私達に精を提供する意思があるとみなされたの。」右から別の人形が叫んだ。
「そして。」左から。「わたし達とセックスをしても、そこに愛があれば、ちょっと精を頂くだけで許そうと思ったわ。でも…」
正面のドールがさらに一歩進む。「でもあなたは、射精した後の浴衣人形をゴミ同然の、用済みの物として邪険に扱い、用が済んだらわたし達を全員邪魔者扱いした。生きた人形を叩きまくり、踏んづけまくり、蹴飛ばしもしたわね。私達はたしかに魔性の存在。でも、ちゃんと独立の人格を持った"人間"扱いして欲しかったな。」
「そんな…。だって、捕まったら何されるか分からないから、怖くてそうしたんだ。僕は悪くない!それに、動かないと思っていた人形が動いたから、びっくりしたんだ。只の道具だと思っていたから。魔性の存在だか何だか知らないが、やっぱりこんなの非現実的だよ。そんなのをいきなり人間と同じように接して欲しいって言われたって、無理だよ絶対!頼むから元の世界に返してくれ!」
「…。」「あーあ。」周囲からため息があちこち聞こえる。
「そして、最後のチャンス。私達に抗議されて、それを受け入れて謝ってくれたら、許そうと思っていた。たしかに怖いですし、無我夢中で逃げていたから、私達への暴力も仕方ない不可抗力かも知れない。でもやってしまった事を謝って欲しかった。そうすれば、ある程度精を吸い取るだけで許そうと思っていた。でも、あなたは、自分は悪くないと言い、その上私達の存在を認めてもくれなかった。…ゲームオーバーよ。」
「そ、そんな!」「あなたはもう、永遠にこの『人形の館』からは出る事ができない。永遠に私達の性欲の道具にされるのね。ふふ、心配しないで。私達は全員極上。そして永遠に漂い続ける催淫の霧が、あなたの性欲を枯らす事無くあなたを勃起させ続ける。苦痛はないわ。永遠に快楽を味わいなさい。」
永遠に萎える事も疲れる事もないこの通路で、若く精力が溜まっている状態のまま、数千体以上の人形に犯され続ける…帰る事はできない。
人形達がジリジリ迫って来る。僕は自分の運命がまだ信じられないでいた。
「そうそう、始める前にいい事を教えてあげる。あなたの友達、S君といったかしら。彼はスケベだけど誠実だったわ。人形でオナニーはしたけど、終わった後はちゃんと服を着せてくれたわ。だから、今頃は家に帰っているでしょうね。」「…!」
なんてこった、Sの几帳面な性格が、こんな所で役に立っていたとは…あいつは元の世界に帰れたのか…
じゃあ、僕がビデオを借りなければ、そのまま解決してた事になる…僕は運命を呪った。
「泣きそうな顔ね。でも、その顔を快感にあえぐ満足の顔に、すぐ変えてあげるわ。」「ふふ…たっぷり悦ばせてアゲルッ!」
人形達が一斉に群がって来た。「うわああ!やめろーー!」僕はまた抵抗したが、もう無駄だった。あっという間に数十体の人形に全身を埋め尽くされ、体全体が女体に揉みしだかれる。もちろんペニスは人形の中にすっぽり包まれている。蠕動やバイブ、出し入れ運動や絶妙な締め付けで、また代わる代わる挿入して犯す事で、僕はそのまま何回も果てた。
だが、何回イっても萎える事はなかった。催淫効果と人形達の強烈な快感で、射精しても勃起は収まらず、疲れる事もなければ痛みを伴う事もなかった。それ所か、抜かれれば抜かれる程、ますます興奮は高まり、敏感になって行った。
通路いっぱいに仰向けになっている人形達の上にうつぶせに寝かされ、ローションを滲ませながら蠢くドール達に翻弄された。上からももちろん僕の体にびっしり人形が張り付いている。僕はうつぶせのまま床に射精した。
次は胡坐をかいて座るように命じられ、人形一体につき1秒間挿入で次々と入れ替わって行った。ルーレット感覚で誰の中に出すか競うのだ。射精しても、このゲームは続いた。
柔らかくてスベスベした人形達がペニスに体を押し付け、こすり付け、数体がかりでペニスを包み込むと、ドールの間から白濁液が吹き出るのだった。
蠕動もバイブもしないドールの体を前後させながら「自分で」射精に導くよう命じられたりもした。
人形同士で融合して僕と同じ位のサイズになったドール達もいて、ペニスをしごいたりフェラチオしたりパイズリしたりして精を絞る者もいた。あの時の「幽霊」は融合した人形達だったのかも知れない。
もちろん等身大のドール達のオンナも優しかった。なまめかしく腰を振るドールに、僕はバックの体勢で放出する。
何リットルその小さな体に収まるかを試す為に、ガッチリペニスに吸い付いてむさぼり続けるドールもいた。周りの人形達のサポートを受けて、僕は同じ人形に相当量の精液を溜め込んだ。彼女のおなかがどんどん膨れて来たので、やっと離して貰えた。
大小さまざまのドールが次々と群がり、あっという間に僕を射精させては交代した。女は数千なのに対して男は僕一人…完全に性欲処理の道具にさせられ、僕はそれでもいや増す快感に震え続けるしかないのだった。
「人形の館編 おしまい」