淫魔の香気
1話
光の届かない木々に覆われた森の中。
柔らかい草の上に押し倒した女性を犯していた。
「あんっ……いいわっもっと……んっ……んはぁ!」
褐色の肌に白く長い髪、そしてぴんととがった耳は彼女が人間では無いと言うことを示している。
年齢は見た目から推測すると、20歳中盤くらい。
しかし、それはあくまで人間だったらの話。
今俺に犯されているこの女性は、ダークエルフと呼ばれる森の住人だった。
普通、森にいるエルフは人間と関わりを持たない。
だが今彼女は俺と性交をしている。
しかもさっき出会ったばかりにもかかわらずだ。
そこには知的なエルフを思わせる姿はなく、ただ快感をむさぼる雌がいるだけだった。
まるで淫魔であるかのように……。
「やぁんっ……もっと突いてぇっ……精液を中に出してっ!」
俺はそのリクエストに応えてもっと腰を突き入れる。
彼女は甘い嬌声を上げながら、背中に手を回してきた。
重量感のある胸が腰を突き上げる度に揺れ動き、互いの汗が飛び散っている。
膣の中はうねうねと蠢き、ねっとりと竿全体を愛撫し刺激を与えてくる。
でも俺はそれ以上に目の前の彼女に快感を与えていた。
自分よりも早く彼女を絶頂させなければならない。
なぜなら俺は淫魔ハンターだからだ。
「んあぁぁぁっ……!」
ダークエルフがひときは激しい声を上げると、膣肉で俺のモノを締め付けた。
「うくっ……!」
みっちりとした肉壁の甘美な感触に、思わず射精しそうになったがぎりぎりのところで耐えきった。
彼女は身体を痙攣させた後、眠りに落ちるように気を失った。
「あぶなかった……」
意識を失った彼女の膣内から自分のペニスを引き抜く。
愛液にまみれたそれを抜くとぬちゃっとした音がした。
草の上に倒れ込んだダークエルフの顔を見ると、目をつむり穏やかな息を立てていた。
よかった。
彼女を淫魔にしないで済んだ。
俺は裸で横たわる彼女にそっと服をかぶせるとその場を後にし先に進んだ。
目的地は、この森の奥にあるエルフの城だった。
数日前、静寂の森と呼ばれるエルフと妖精達の住む森に異変が起こった。
それは、その名の通りこの静かな森とは縁が無いように思えるものだった。
彼女達が村の男を襲いだしたのだ。
それも性的な意味で。
優れた理性と知性を持つ彼女達からは、想像もつかないことだった。
異変は村の少年がエルフの女性に連れ去られた事から始まった。
学校の帰り道、少年が森の側を1人歩いているところエルフが出てきた。
そのエルフは少年に話しかけると、そのままどこかへ連れて行った。
村人は少し不思議に思ったが、特に何かをするという事はしなかった。
エルフは森の賢者とも呼ばれ、森の住人の中でも特に知性的だ。
先ほどエルフは人間と関わりを持たないと言ったが、極まれにこうして人間の村へ来ることもある。
だから村人は彼女に何か考えがあってのことだろうと思っていたのだ。
しかしそれから数日経とうとも少年は帰ってこなかった。
心配した少年の両親と村の男達が彼を探しに静寂の森に入った。
そこで見たのは男女の交わりをしているエルフとその少年の姿だった。
草むらの上で仰向けに横たわった少年の上で、エルフがはしたない声を上げ腰を振っていた。
あまりに衝撃的な出来事に少年の母親は悲鳴を上げた。
エルフと少年はそれに気が付いたが、交わりをやめようとはしなかった。
彼らはすでに深く肉欲に溺れていたのだ。
男達がやめさせようと彼らに近づくと、どこからか他のエルフや妖精達が集まってきた。
彼女達は男達を捕まえると同様に襲い始めた。
それは異常な状況……。
淫魔と呼ばれる悪魔が人間を襲っているのと同じだった。
この事件は、そこから何とか逃げてきた村人により明るみになった。
それ以降、彼女達は時々森の方からやってきては男をさらい森の中に消えている。
緊急を要する事態だった。
そしてこの村で唯一の淫魔ハンターである俺が、その事件の原因を探るべく調査に向かわされたというわけだった。
行き先は森の深部にある、高名なエルフ達が住む城。
この件に関して、原因についての手がかりが全く何もない。
だからまずはそこに向かい、彼らから話を聞くのが先決と思われたのだ。
そうしてそこに向かっている途中、俺は襲われた。
まずはじめに襲ってきたのは、ドライアドという木の妖精。
彼女が宿る木の側を通り過ぎた時、根で身体を捕らえられ無理矢理に性交をさせられた。
身体の自由を奪われながらの不利な状況だったが何とか彼女を先に絶頂させることが出来た。
それからさっきのダークエルフ。
彼女の時も足にからんでくる草の罠にはまってしまった所を襲われた。
またしても不利な状況だが、ぎりぎりのところで彼女を先にイかせることに成功した。
幾度かそんな交わりを終え、自分の中には不安が生まれていた。
普通淫魔というのはイかせてしまえば、消滅していくはずだ。
だが彼女達は気を失うだけだった。
それは彼女達が淫魔になる手前の卵であると言うことを意味していた。
この状態では、幾らイかせても消滅しない。
意識を取り戻せばまた襲いかかってくる。
やっかいに思えるが、通常その状態の者達は淫魔としては非常に弱い。
だが、この森にいるエルフや妖精達はそうではなかった。
それは今まで俺自身がエルフ達と交わった事など無く、彼女達に対して耐性がないことが原因だったのかもしれない。
それもそのはずで、理性的な彼女達は淫魔から最も遠い存在なのだ。
エルフ達はそんな事はお構いなしに、美しい容姿と甘美な肉体をもって容赦なく責め立てて来ていた。
今までは1人相手だから何とかなったものの、この先も襲われ続け集団で囲まれたりしたら耐えれるのかわからない。
淫魔の卵である彼女達の中に精液を出すことだけは、なんとしても避けなければいけない。
不安を胸に出来るだけ出会わないように歩みを進めていった。
しばらく進むとうっそうと木々が生い茂っていた場所から、空の見える開けた花畑へと出た。
近くには小川のせせらぎも聞こえる。
まずいな……。
ここを通らなければ、エルフの城へはかなり遠回りになってしまう。
しかし身を隠すものが何もない。
丸見えになってしまうのだ。
それは襲われる可能性が格段に増すことを意味していた。
木の影に隠れ色々考えたが、結局そこを通ることにした。
遠回りをする道のりの長さから考えると、その道中で襲われてしまう可能性の方が高いように思えたからだ。
覚悟を決め花畑の中へと入った。
出来るだけ自分の事が悟られないように、足音に注意を払いゆっくりと進んでゆく。
そのおかげか、半分の所までは誰にも見つからずに来れたようだ。
残りもこのまま順調に行ければいいのだが……。
歩みを再開した。
そうして進み続けるとだんだんと眠いような感覚が襲ってきた。
なぜだかはわからないが身体が重い。
歩き続ける事がしんどくなってきた。
「うっ……」
軽いめまいのようなものまでする。
しかたがないので危険ではあるが、少しここに座って休憩することにした。
花を踏みつぶさないように腰を下ろすと、この花畑に漂う花のいい香りを強く感じる。
ぼうっとしながら辺りを見回すと、今回の異変がなければ平和そのものと思える光景が広がっていた。
柔らかく降り注ぐ太陽の光、水の流れるせせらぎの音、花のふわっとした香り。
なんだか思考までもがぼんやりしてくるようだった。
「こんにちは」
突然、女性の声が聞こえてきた。
いっきに気が引き締まり緊張が覆う。
しかし周りを見渡しても誰もいない。
ただ一面に広がる花畑があるだけだった。
幻聴でも訊いたのだろうか?
「わたしはここです」
するとそれを否定するように、再び今度ははっきりと声が聞こえてきた。
音の出所を探してそこをよく見る。
そこには一輪の白い花があった。
少し大きめのその花は、太陽のように四方に広がる美しい花弁を持っていた。
この花から聞こえてきた気がする。
じっと見ていると、その予想は正しかったようで花弁の中に1人の女性の姿が見えた。
とても小さく、人差し指の大きさほどしかない女性だ。
手のひらの上に数人は乗せれてしまうだろう。
そのあまりのサイズの違いは俺に安心を与えた。
性交を求められることがないと思ったからだ。
「や、やあ……こんにちは」
挨拶を返すと彼女はにこっと微笑んだ。
カワイイ……。
小動物に対する保護欲のようなものを感じた。
「君はピクシーかい?」
俺は彼女の事をピクシーと呼ばれる、いたずらな妖精なのだと思った。
ここに来る前に森に住まう妖精達については事前に調べていた。
その中で身体の小さな妖精というのはピクシーの事しか記していなかった。
「いいえ、私はピクシーさんではないです。エルフィンと呼ばれる花の妖精なんです」
でも彼女は、それを否定すると自分はエルフィンだと言った。
「へえー、そうなんだ」
彼女のなんとも、ぽわーとした話し方に自分もゆったりとした気持ちになった。
気の抜けた返事をしながら、ここに来る前に調べていた情報のことをまた思い返す。
確かにエルフィンというのは彼女の言う通り花の妖精だ。
でも記憶に間違いが無ければ、エルフの仲間で大きさも人間位だったはずだ。
俺はそれを訊いてみた。
すると彼女は、
「よくご存じですね。そうです、私は今はこんな大きさですがエルフさんくらいに大きくなることも出来るんですよ」
と答えた。
やっぱり記憶は正しかったようだ。
しかし、ということは――。
「この中であなたみたいな素敵な男性が通りかかるのを待っていたんです」
彼女が笑みを浮かべると、その小さな身体がみるみる大きくなっていった。
その変化に言葉を失う。
またたくまに彼女はエルフ達と変わらない大きさになった。
もう自分の目の前には豊満な胸に瑞々しい白い肌、肉付きのいいお尻を持った十分すぎるほどに性交が可能な可憐な女性がいた。
彼女の柔らかな匂いに誘われてか、情欲がかき立てられた。
エルフィンはだらーと力を抜いて座っている俺に跨がってきた。
ずっしりとした体重とやらかなお尻の感触が伝わる。
それから首に手を回してこう囁いた。
「私とエッチなことをしましょう? いっぱい気持ち良くしてさしあげますから……」
彼女は体重をかけ俺を花のベッドへと押し倒そうとしてきた。
そこで我に返った。
彼女もきっとこのよくわからない異変に巻き込まれて男を求めているのだろう。
このままされるがままに押し倒されるのはまずい。
俺は力の入らない身体で、懸命に彼女のことを押し返した。
「えっ、そんな。これだけ花の匂いをかいでこんな力が出せるなんて」
エルフィンは俺が押し返してくると思っていなかったようで、すぐに花の上に倒れた。
俺はそのまま彼女の両側に手を付き覆い被さる。
エルフィンの顔を見つめると、彼女は顔を赤らめた。
「でもこっちの体勢もいいですね……。さあ早く……」
エルフィンは下から手を伸ばし誘惑しはじめた。
こうなってしまったら、彼女をイかせて何とかするしかない。
自分の下着を脱いでペニスを露わにした。
彼女はすでに勃起しているそれを見て、
「ああ、ずっとそれを待っていたのです。私の準備はもう整っていますのでそれを……」
うっとりと呟き、俺の腰に足を回してきた。
肉付きのいいふとももが絡められると、もう腰を引くことは出来なかった。
ペニスの先には、シースルーの薄いドレスを着ているだけで隠せていなかったエルフィンの秘部があった。
毛のないそこには愛液が滴り、物欲しそうに時折ひくひく震えている。
遮るものは何もない。
腰を進めればすんなり彼女の中に入る事となる。
気を引き締めペニスを突き入れた。
「ふぁっ……これです、これが欲しかったのです……んっ、早く突いて下さい」
挿入を感じ取り彼女は嬌声をあげ快感を欲し始めた。
「うぅ……すごい」
しかし俺はと言うと、その膣内の感触に翻弄されまともに動くことが出来なかった。
肉壁がペニスにまとわりついたまま、ぴくぴくと蠢いている。
それは精液を求めて甘噛みするような動きだ。
まだ腰を振ってもいないのに、早速精液が洩れ出そうだった。
でも中に出す事、それは絶対に避けなければならない。
ここに来るまで何人かこうやって精液を求めてくる者達に出会った。
彼女達は皆、淫魔の卵だった。
その状態で体内に精液を注がれれば、本当の淫魔として覚醒してしまう。
そうなればもう一生淫魔のままになり、注がれた人間の精液に依存し、それなしでは生きられなくなってしまうのだ。
とにかく彼女達の一生を大きく変えてしまうことは避けなければいけない。
逆に絶頂に導いてあげれば、しばらくの間は眠ったように気を失う。
精液を出さずに絶頂させ、その間になんとしてもこの異変の原因を突き止め解決するのが自分の役目なのだ。
そんな俺の思いをエルフィンは知るよしもなく、“欲しい、欲しい”と一心に精液をせがんでいた。
口で説得するのは無理だろう。
ドライアドとダークエルフ相手に試したが、肉欲に染まりきっていていっさい聞き入れてくれなかったのだ。
エルフィンの素直な欲求は、ペニスの愛撫に直に現れていた。
「くぅっ……!」
甘美な締め付けが、ペニス全体にあますことなく振りかかる。
それを受けたペニスは快感を逃がすように震える。
このままでは一方的に、快感を与えられるだけだ。
どんどん不利になる。
だが腰を振ればきっとより強く感じさせられる事になる。
でも彼女をイかせるには、そうする他ない。
俺は根元まで咥え込まれたペニスを引き抜くように腰を引いた。
膣肉が逃がすまいとするように絡みつく。
突き入れると迎入れるように奥まで案内され、先を吸われる。
「あぁんっ……そうです、もっと……もっとしてください……」
たった1往復で彼女の名器を存分に思い知らされた。
俺はダークエルフと交わったあとに射精をしておかなかったことを後悔した。
射精をすれば持続力が上がる分、体力が下がる。
でも俺は体力を温存するために射精はしないという選択を取った。
しかし目の前のエルフィンをいかせるには、耐久力がなければまったく持ちそうにない。
しかもそれに加えなぜか温存させておいた体力までも低下している。
俺は腰を振りながらも耐えきれず、彼女の上に倒れ込んだ。
しっとりした肌が触れ、もちもちの胸がつぶれ柔肉の感触が伝わってくる。
エルフィンは、ふふふと笑うと俺の背中を抱きしめた。
「どうですか私と花の匂いに包まれながらの交わりは? 力も抜けて最高に心地よいでしょう? そうやってもっと甘えて下さい……後は私が最後まで導いて差し上げますから」
「…………!」
そう言われて理解した。
今俺の身体を包んでいる脱力感は、エルフィンと花の匂いによるものだったのだ。
確かに自分の体力が急激に低下し始めたのはここに入ってからだし、エルフィンと交わり始めてからはそれがさらに加速している。
そうとわかればこれ以上長く交わり続けるのは危険すぎる。
残っている力を振り絞って、腰を激しく出し入れさせた。
「……あっ……ふぁっ、んっ、まだこんなに元気が残って……あんっ……いいですっ!」
エルフィンはそれによって確実に快楽を感じていた。
俺はさらに彼女の胸を愛撫する。
手の形に合わせて形を変えるその柔肉に心を奪われそうになるが、必死に耐え彼女を絶頂へと導いていく。
その愛撫によってエルフィンは乱れていった。
しかし自分の限界も近かった。
きゅっと敏感な部分を締め付けるように蠢いたかと思うと、柔らかくまとわり甘えさせるような感触を与える膣、愛液による水音とエルフィンの嬌声、彼女と花の香り。
こんなものを味あわされては、射精を我慢している自分にとってはたまったものではない。
俺は自分に振りかかる快感をすべて受け止めながら、半ば賭けるようにして彼女を一心に突き上げていた。
そしてそのときはやってきた。
もう我慢が出来なかった。
尿道の先までせり上がってきた精液が出口を求めて今か今かと外へ向かおうとしている。
とっさに腰を引いた。
だが、みっちり締め上げられたふとももによって抜くことは叶わなかった。
ならばと、腰を思い切りエルフィンに押しつけた。
「やあっ、あっ……ふあぁんっ!」
それが最後の引き金となり彼女はついに絶頂を迎えた。
同時に俺を拘束していたふとももの力が緩んだ。
その隙に、瞬時にペニスを引き抜く。
とたん射精がはじまった。
「くぅぅぁっ……!」
びゅるびゅるびゅるるるる――!
我慢に我慢を重ねた精液が、もの凄い量と勢いと共に放出される。
線を描くように鈴口の先から出て行く。
腰が快感にがくがくと震えた。
精液がエルフィンに向かって降り注がれると、彼女のお腹と胸を白く染めあげる。
そうして欲望の証をすべて出し切ると、ようやく快楽の波が去った。
「はぁ……はぁ……」
射精したばかりで呼吸はまだ落ち着かないが、気持ちはだいぶ落ち着いた。
改めて自分の出したものを見る。
お腹を中心降りかかったそれは、エルフィンの美しい身体を汚していた。
自分の出した量の多さに驚いた。
彼女のおへそには精液の溜まりが出来ている。
エルフィンは既に絶頂で気を失っていた。
ほんとに危なかった……。
今回は寸前のところで中に精液を出さずに済んだが、もはやそれは自分の実力ではなくただの運なのだろう。
少しの差で、もし間に合わなければ彼女を淫魔にしてしまっていた。
その事実は、改めて早く異変を解決しなければいけないという考えを持たせた。
エルフィンの大事な部分を隠す様に自分の上着をかけ、足早にエルフの城に向かった。