わたし、弓兵アーチャー、なんです。
初めは男の身だったんですけど、柳桐寺の魔女に呪いをかけられて女の体にされてしまった。ショックでした。ええ、それはもう。
どれだけショックかと言いますと、三日三晩は泣き明かしたくらいです。
おかげで騎士王セイバーに心配されました。
もっとも、三日三晩泣いた原因は彼女によるところも、大きいのですけれども。
比喩ですけど、わたしのアヴァロンにエクスカリバーが入ってきて、わたし、翻弄された。聖少女に陵辱された。
それが、無性に悲しかったんです。
話を変えましょうか。
わたしの同居人にランサーというのがおりまして、槍兵なんですけれども。わたしの、恋人だったんです。いえ、恋人です。
彼、男なんです。わたしも男でした。
つまりは男同士。これっておかしいかしら?
でも、それがぞくぞくしちゃうんです。わたし、駄目な英霊なんです。
恥ずかしいんですけれど、感じちゃうんです。
狗の種類にもいろいろありますけれど、昼間は愛玩犬で夜は狂犬というのかしら。ありがちですけど、すごいんです。
わたし、人間ってこんなにいやらしく絡み合うことができるのかとびっくりいたしました。
だけど女になってから、ランサーの様子がおかしいんです。
なんだかわたしを避けているみたい。わたし、少し傷ついた。
剣で出来ていて磨耗しきった身ではありますけれど、心は硝子なんです。
だからわたし、聞いてみました。「どうして抱いてくれないんだ」って素直に聞いてしまったんです。
そうしたら、抱きしめられた。
それ違う、抱くの意味が違う、と思いながらも、わたし、癒されていた。エクスカリバーやルールブレイカー、ガンドや触手でいじめられて、毎日のように磨耗した身には、ランサーは優しすぎた。
ゲイボルクで貫かれるのを待っていたのかもしれない。だけど、ランサーはそうしなかった。
わたし、それがちょっと不満だった。いやらしいわたし。でも、じゅんっ、としちゃうんです。ゆるんでしまう。
わたし、ランサーにずっと抱きしめられていた。昔の自分、衛宮士郎がそれを見てまた鼻血を出しているのを知っていたけれど、そんなことは関係なかったんです。
だって、愛されているんだから、それでいいんじゃないかしら?



back.