わたしはメディア。好きなものは宗一郎様と可愛い女の子よ。
今日は少しだけあなたにも秘密の花園をのぞかせてあげる。特別によ?次はないわ。
「くっ! ……そちらは大丈夫か、セイバー!」
「大丈夫です! わたしのことよりも、自分のことを!」
さっそく来たわ!戦場での乙女たちの絆。なんて素晴らしいのかしら!無慈悲に襲いかかってくる魔手、けれど決して彼女たちはあきらめないの。戦うのよ。己の力で!
ちなみに配置したのはエキストラの竜牙兵。だからどんなに壊しても斬っても叩いても大丈夫。自慢じゃないけど弱いからまかり間違ったって乙女の柔肌に傷をつけることなんて出来ない。ほら、あーんしん。
セイバーは上から攻めてくるのを、アーチャーは下から攻めてくるのを斬り捨ててるわね。可愛い女の子は大好きよ。そして強いのならとびっきり最高だと思うわ。
さて、そろそろ次の準備準備、と……。
「―――――……?」
「セイバー?」
「攻撃が、止んだ」
怪訝そうに辺りを見回すセイバー。その凛々しい顔、素敵!
階段を這い上がるもの。それに気づいたのはセイバーが先だった。
「アーチャー! 危ない……っ」
「!」
気づいたのね、だけどもう遅いわ。
「っこの……、くあ……!」
「アーチャー!」
足を掴まれて、段から引きずりおろされて呑まれていく。得体の知れない色合いの不定形物に褐色の肌が呑みこまれていくのってすごくドキドキすると思わない?じわじわと食われていくの。
……あら。セイバーが走っていく。剣を振りかざして……
「闇の眷属め! 消え失せるがいい!」
勇ましく叫ぶと勢いよく振りかぶった。悲鳴みたいな音とおかしな臭いを発して、アーチャーを呑みこもうとしていた魔物は消え去った。一瞬で、よ。
すごいわセイバー!さすがわたしが認めた子!拍手したいけど邪魔しちゃ駄目よね。我慢よ、メディア。
「大丈夫ですかアーチャー!」
「油断した……済まない、セイバー」
「いいえ。気にしないでください。決めたではないですか。ふたりで、お互いを守りあうと」
美しい乙女の気遣い合い!いいわ、すごく素敵!メディアはなまるあげちゃう!
「セイバー……」
「それにわたしはあなたを守りたいと思っている。騎士としてではなく、王としてではなく……ただ、わたしの心がそう叫ぶのです」
「…………」
「襲いくるどんなものからもあなたを守り通したい。それがわたしの願いだ」
「セイ、バ、」
……来た?
サービスタイム到来?
ガッツポーズを取ってカメラは回し続ける。だってそれがわたしのジャスティス。
「傷つけさせはしない……誓って、あなたを守りきりましょう。この身は剣。何者にも負けぬ、最強の剣……!」
抱擁キター!
っ……は、あらやだ、ちょっと興奮しすぎちゃった。落ちついてメディア。カメラがブレるわ。
「なあ、マスターよ」
金と銀の少女……対なる存在、勇ましい戦乙女たちが戦場で育てる愛!これいいわね、メモに書きとめて……っと。
「マスター」
ここ編集したいわね。特殊効果入れて……音楽も入れたいけど、そうすると声が聞こえなくなっちゃうかしら。声と言えば
「なによアサシン。殺すわよ」
「相変わらず気の荒いことだ……宗一郎に嫌われてしまうぞ?」
「お黙りなさい! それより用件があるなら早く言ってさっさと退散してちょうだい、はっきり言って邪魔よ」
「いや、用と言うほどでもないのだがな。先ほど見目麗しい梟がやってきて、これを」
梟?
手渡されたものを広げてみる。するとそこには真っ赤な文字で


うちのこふたりを早く返還されたし てゆーか殴っ血KILL


「……………………」
「……………………」
「アサシン」
「なんだろうか」
「ひとっ走り行ってあのお嬢ちゃんと坊やを消してきてくれないかしら。これは命令よ」
「ははは、忘れたのか? 私は山門に縛られた身。使いっ走りなどできん」
「ああもう役立たず!」
わたしはやりたいことをしてるだけなのに!
だけど負けちゃ駄目メディア!あんなお子様魔術師崩れふたり、どうやったってこっちの方が上位に決まってるじゃない。
そうよ、そうよ頑張って。だってまだ、あんな服やこんな服も着せてないんだから―――――!
「アサシン、撮影頼んだわよ。ブレたら殺すからしっかりなさい」
「承った。それで、マスター殿はどこへ?」
振り返って、わたしは笑う。
「赤い悪魔とやらとナシつけに」
そんなわけで、いそいそとその場を後にしたわたしがどうなったかはまた別の機会にね。
……あら、次はなかったんだわ、ごめんなさいね?



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