煌々と電気が点いた一室に、彼らはいた。
「んん……っ……」
「ウゥ……」
目前には男のそれ。奪い合うようにしながら彼らはそれに愛撫を加えていた。赤いベルベットのような舌を出して。
一人は理知的に額を晒した男。黒の上下を纏っている。もう一人は前述の男と双子のような背格好、髪色などの特徴だったが服がまるで赤い襤褸布を這わせただけのような正反対のものだったのだ。
そしてもう一人。彼だけは肌の色も髪色も瞳の色も異なり、奉仕を受ける側だった。
時に片方の髪をくしゃくしゃと掻き乱してみたり、時に己を咥える片方の顎へ触れてみたり。そして、くく、と楽しそうな笑みを溢す。
「そんなに必死になっちまって……どこにも逃げねえから安心しろよ。……それにしても」
含む笑み。黒の男が目線を上げた。そこにばちりと音すらしそうなタイミングでかち合う奉仕される男の視線。
「“オレの”は……美味いか?」
「…………ッ」
黒の男がかあ、と赤くなる。意地悪げな笑みを受けて。
「そ、んな、はず、が」
たまらず文句を言うために口を離したところで赤い男が奉仕される男のそれに吸い付いた。ちゅぱちゅぱと音を立てながら滴るものを啜っている。
「こっちは素直だ。な?」
上機嫌そうに白い手が白い髪を撫でる。ぐるぐると喉を鳴らしながら、赤い男は奉仕される男の手の感触に酔いながら垂れ落ちるものを舐め上げ、口元を汚す。黒の男はそれを呆然と見て、
「お?」
赤い男から奪うように自らの欲望に吸い付いてきた黒の男に、奉仕される男は軽く目を丸くする。巧みに舌を使い追い上げる勢いで欲望にしゃぶりついた黒の男の所作を奉仕される男は見て、
「負けず嫌い」
短くそう、評した。


「ん……ん、んん……ふぅ、う、」
「アァウ……ウゥ、アァ、」
二人からの愛撫を、奉仕される男は当然のように受け止めて。
「……そろそろ、出すぜ……っ……」
簡略化された知らせの後に、二人の顔に向けて放っていた。


「ふ……」
「残さず舐め取れよ」
「アァ……」
赤い男は言われるまでもないといった風に両手でべたべたと自分の顔を撫で回し、放たれた白濁を集めては口に運んでいる。
一方黒の男は舌をちろりと出して口回りに飛んだものを照れ臭げに舐めただけだった。だがだんだんとその体が震えてきて、触れた膝がもじもじとし始める。
「…………」
奉仕される男の赤い眼がそれを見た。すい、と手が伸ばされる。
「ん、っ」
「我慢しないで味わえ。……な?」
白い指が掬ったのは己が吐き出したもの。それを、
「んぅ……っ……」
鼻にかかった声。白いものにまみれた指を含まされた黒の男は声を上げ、身を捩ろうとしたが上手くは行かなかった。とろり、その鋼色の眼が蕩ける。
「んん、ふ、」
「……美味えだろ?」
「ぅ、ん、」
「アウゥ……」
頷いた黒の男の顔に、赤い男の舌が這う。とてもではないが拭いきれなかった白濁をぺろぺろと、子猫か何かのように赤い男は舐めていた。
「よし、じゃあ今度は体重ねて尻こっちに向けろ。別にどっちが上でもいいぜ」
両方楽しませてやるから、と奔放に言い切って奉仕される側だった青い男は促した。
そして。


「あっ、あぁう、ランサァ、あぁ、も、っと、」
「アァ! ウゥ、ガ、ア……ア、ァ、アァ、ア、」
下肢を露にされて重ねられた黒の男と赤い男の秘奥に、青い男は交互に復活した己が欲望を突き込む。
さんざん指と舌で慣らした二つのそこは柔く解けて、青い男が突き入れるごとにぐちゅぐちゅと淫らな音を立てた。
「あ、あぁ、は、んっ!」
「ウゥ、ァ、グウァ、アァ、ッ!!」
身悶える黒と赤の男たち。その奥に交互に突き込みながら、仰け反る背や震える足指などを見て青い男は楽しむ。
「……ったく、エロいなぁ、おい」
舌舐めずりをして打ち込めば、悲鳴のような嬌声がちょうど順番だった黒の男の口から迸った。
肉を打ち付ける音はしばらく続いた。それと嬌声。上に乗った黒の男のそれは赤の男の体で擦られ、赤の男のそれは床で擦られた。赤の男は言葉にならない呻きを漏らし、涎を溢す。
「アァ……グウ……」
床に自ら擦り付けるように腰を蠢かせる赤の男。そこに深い突き込みが来て、さながら獣の絶叫が上がった。
「もう限界、だろ……っ!」
深々と一度ずつ重く抉られて、二人は声にならない声を漏らす。
「は、」
青い男の吐息。次の瞬間抜き去られた欲望から撒き散らされた白濁が黒と赤の男の体中に降りかかった。
白い髪に、褐色の肌に、黒いシャツとスラックスに、赤い布に、降り注いでいく白濁。やがて二人は染め上げられて、青い男は息をついた。
「…………」
床に転がる二つの体。青い男は息を整えてそれを見る。それから口にした。
「ちょいと、虐めすぎちまったか」
笑うようなその声に、ちっとも罪悪感などなかったのだった。



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