「グ、ガ、アァウ!」
涎まみれの舌を出し、腰を震わせ獣はもう何度目か知れぬ吐精をした。腰回りの赤い襤褸布は己が吐き出した白濁でぐちゃぐちゃだ。
『なぁ』
指に絡めて、目前に差し出したのは粘性の高い透明な液体。
『これ、舐めてみろよ』
にっこり笑ってそう言えば、獣は首を傾げた後で素直にその指に吸い付いてきた。熱い舌が余さず液体を掬い取り、喉仏が淫らに動く。ごくり。音を立てて獣はそれを飲み込んだ。
『アァ……ウゥ……?』
やがて怪訝そうに獣は呻くと、獣にしては弱々しい艶めいた声を漏らした。その下肢は、触れても触れられてもいないのに確かな反応を見せていた。
獣に与えたのは媚薬。それも、何倍にも薄めて与えなければならないものを原液で与えたのだ。当然効果は抜群。あっという間に獣は一度、絶叫と共にどこにも触れられないまま白濁を放っていた。
「アッ、アァッ、アァガ、アウゥ!」
また、一度。獣が白濁を吐き出す。白く染め上げられた赤い襤褸布。きっとそれと同じものに隠された目の焦点は快楽に飛んでいる。
「ア……アァ、アァ……」
「……こりゃまた随分と、」
乱れるもんだなあ、と独白。どこにも触れてはいないのに、もうこの獣は独りで何度達したことだろう。きっとこの状態の獣に普段するように突き入れれば、頭の螺が外れてしまって戻ってこなくなるはずだ。
それを考えると、ぞっとする。破壊衝動。この獣と鏡写しのように似通った弓兵にはとてもじゃないが出来ないことを様々に考えた。
「ガ、……アァ……!」
その内に、また獣は独りで果てていた。
例えば、頭がおかしくなってこのまま。だとか、酷薄なことを考えた。快楽のままに狂っていくのもいいだろう。叫んで、吼えて、喚いて、啼いて。
「なぁ」
聞こえていないだろうけど、語りかける。
「おまえ、これからどうなりたい?」
返事はない。獣はただ呻くのみ。当たり前だ。獣は口がきけない上に、今は思考がぶっ飛んでしまっているのだから。
またびくん、と獣の腰が跳ねる。一部始終を見られているというのに、恥じらいもなく獣は意味のない声を垂れ流して呻いて、細かく痙攣するように体を震わせていた。
「アァ……ウゥ……」
ふと、思い立った。
「アァウ……?」
呂律も怪しく呻く獣の体を仰向けに床へと押し倒し、足を広げさせ手近にある瓶を取る。
「ガ、ア――――!!」
たっぷりと掬った粘液を、最奥に撫で付けてやればまさに悲鳴のような叫びを上げた。さっそく一度達する。もう何度目だかわからないそれが頬に飛んできたが、構わずぬるぬると指遊びを始める。
「ア、ウゥ、アー、ウー、アァ、ウゥ、」
だらしない喘ぎ。口端からはだらだらと涎が垂れ流されている。腰が突き上がるように床の上で跳ねる。一番感じるであろう場所へと粘液を塗り付けてやれば、声にならない声を上げてまた、達した。
床にはちょっとした白濁の池のようなものが出来ている。体を動かしたせいで目を覆う布がほどけかけていた。
「…………」
思うところがあり、それに噛み付くと引くように動いてみる。
するとやはり現れたのは焦点を失った鋼色の瞳だった。こちらを見ているのか、認識しているのかどうかもわからない。ちょっと、あたまにきた。
「ア、ウゥアァ、ア、…………!!」
足を抱え上げ、慣らすこともなく突き入った。それなりにきつくはあったが、快楽のためか、それと獣自身が吐き出した白濁のせいか動くことに不利はなかった。
獣は床の上で暴れ回る。当然だろう、媚薬の原液を上と下から含まされたのだから。
「ガァウ! ア、アァゥ、ア、ゥ……」
声は段々と力を失っていき。
「アァ……ガァ……!!」
かくん、と。
首が前に折れて、力を失ったところでようやく途切れた。最後のきつい締め付けに遠慮なく中へと放つ。
「…………ッ」
ふと、思い付いて。汗ばんだ肌に貼り付いていた髪を、出来るだけ優しく梳いていた。



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