「ん、んん、ん、……」
「ふ、ぅ、んっ……」
くちゅり。
続いてぐちゅり、と首筋にいっそう深く牙を突き立てられて、アーチャーは喘ぎを漏らした。
間近で鳴る血を啜られる音。ごくり、ごくり、と飲み干していくその音。その音は嫌いではなかったが、ひどく、とても、恥ずかしかった。
だから、
「ん、…………?」
嫌がるように身をくねらせれば、ランサーが不思議そうな声を上げる。
んく、と口内に溜まったであろう最後の血を飲み干し、ランサーはアーチャーの首筋に埋めていた顔を上げた。
「どした。痛いの、好きだろ?」
「きっ! ……らい、では、ない、が、」
「じゃあ」
「でも!」
恥ずかしい、と消え入るような声で言えば、赤い瞳がぱちりと煌めいた。
「――――今さら」
オレの前でさんざん痴態演じてるくせに、と笑いを交えてつぶやかれれば、アーチャーの既に火照った体がさらに赤く染まる。
褐色の肌が見た目でわかるほど染まっていく姿はどうしようもなく淫らで、かすかに震えるその体でさえランサーの情欲をそそる原因にしかならない。
「なあ、アーチャー?」
「何、だね……っ」
「オレたち吸血族にとってよ。吸血行為って」
アーチャーの血に濡れた唇で、ランサーは。
「……性行為と同じ意味を持つんだぜ?」
「…………ッ!」
ぞくん。
アーチャーの背筋が、震えを帯びる。
「オレに吸われてよ? 気持ち良さそうな声出しちまって。顔赤く染めて、身悶えて。それって立派な……」
「う、るさい……ッ!」
「なあ、どうだった?」
ゆっくりと糸を引くように開いていくランサーの赤い口内。真っ赤な、真っ赤な真っ赤な真っ赤な口内。その中に、舌に、牙に、付着した、のは。
アーチャーの。
「……なぁ」
白い指先を自らの真っ赤な口内に忍ばせて、唾液で薄まった血を白に乗せるランサー。
そして、それをまた自らの中へと戻してそのまま。
「――――!」
ごくん。
呑み込まれた音に、アーチャーの体が跳ねる。
「悦かった、だろ」
震えちまって、とランサーは笑う。
「悦、く、なんて、」
「疼いてるだろ?」
「…………ッ」
「オレが今、おまえの血を飲み下したの見て。感じちまってるくせに」
なあ、とランサーは。
「素直になれよ……アーチャー」
そうしたら。
「そうしたら、もっと……悦くしてやっから」
いかせてやっから、と。
言ってランサーは、アーチャーを抱き寄せる。そうして、先程自らの牙が穴を開けた首筋に舌を這わせて、そこにまた、
「い、っ……!」
「ん、んっ……」
太い牙を、突き立てた。
「あ、はぁ、んん、くぅ、ん……!」
「く、くく、…………っ」
「お、く、まで……」
はいって、くる。
夢うつつといったようにつぶやいたアーチャーの首筋に顔を埋めて、ランサーが小さく唸りを漏らす。
「ラン、サーの、太い、のが……」
恍惚としたような、声。
くく、と笑うような唸り。
じゅる、といったん牙を抜いて、あ、と喪失感に喘ぐ声を聞きながらランサーはアーチャーの赤く染まった耳元で。
「死んじまうほど悦くしてやるよ、……アーチャー?」
「あ、あぁ……っ……」
再び埋められる、ランサーの牙。
くったりと力を失っていたアーチャーの腕が、体が跳ねる。
そうやって、アーチャーは延々とランサーに血を吸われ続けたのだった。



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