君の怒号が好きだ。
私を睨み付けてくれる、その赤いまなざしが好きだ。
殺そうとして殺せない、そんなところも愛している。
結局、私は君の全てが好きなのだ。
ああ、ただ――――。
ただ、ひとつだけ。
もうひとりの、私を。あの男を。
あの男を恋い慕って追いかける、その点については考えなくてはならない。
殺そうか?
きっとそうすれば、君はもっと殺意を持って私を見てくれる。いつも殺す寸前になって萎えてしまう、そんな君が本気で、私を殺そうとしてくれるなんて!
ああ、ああ、ああ――――……ぞっとする。
考えただけで達してしまいそうになる。なあ、殺しあおう?命を懸けて戦おう?あいつを殺してから、本気になった君と私は戦いたい。あいつの悲鳴を想像するだけで。首を切り裂き、みっともなくスプリンクラーのように溢れだす血を被り、涙を流して命乞いをするのを笑って拒否して絶望する様を見たい。
ランサー、と。
私だけが呼んでいい名を呼びながら、死んでいく様を思う存分見たい。ランサー、ランサー、ランサー、ランサー……。
溢れだす血が少なくなっていくごとに声も勢いを失い、最期には何も言えなくなる。
でも私は許さない。
最期まで、首を絞めて。
握り潰すように、搾りだすように最後の一滴まで血を。
あはは。
あははは。
あはははははは!
なあ、君。
そうしたら、君は私を憎んでくれるだろう?そうしたら私を愛してくれるだろう?だって、私は奴なのだから。
奴がいなくなったのだから、もう選択肢はひとつしかない。私を選んでくれ。
何なら君に殺されるのもいい。以前、穿たれた胸を貫かれて死ぬのもいい。痕があるんだ。奴と同じというのは気が乗らないが、そこに。君に貫かれた痕があるんだ。愛しいよ、とても愛しいよ。
だって、君が私に残してくれた痕だろう?
だから。
だから……だから。
もうひとりの私もが、それを持っているのは、許せない、んだ。
なあ、殺しあおう?
なあ、愛しあおう?
なあ、憎みあおう?
そうして最後には。最期には――――どちらが死んでもかまわない。
それは私たちが慈しみあった結果だから。ふたりで死ぬのもいいかもしれないな。運命的だ……そうだな。それもいいかもしれない。


なあ。ランサー。


だから、私を見てくれ。だから、私を呼んでくれ。だから、私を愛してくれ。だから、だから、だからだからだからだから!


私は君を愛しているよ。殺してしまいたいほどにね。
よくある話?そうかもしれないな。けれどそれだけ想いは深いんだ。よくある話ほど、伝承として伝わって力を得る。
ランサー。
愛しているよ。




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