槍兵は窮地に追いこまれていた。
「はっきり言うがいい、ランサー。こんなまがいものよりも私を選ぶと」
「ランサー? 私は信じているぞ。君は私を選んでくれる。なんといっても私は心から、狂ってしまうくらいに君を愛しているのだから、な?」
あー、えーっと。
どうしてこんなことになっているんでしょうか。普通黒いのって通常体とは一緒に存在できないはずじゃないんですか。え?話の都合?やめてくんねえかなあそういうの萎えるんで、ってなに?そういうの好きだろうって?ばっかおまえ違うだろ。無茶な拘束好きでしょうって話の都合に縛られるのは好きじゃねえよ。こっちから誓約したわけでもない……は?なんだと?ふざけんな、いっぺん死んでくるかオイ。
などと世界の意志と語り合っていた槍兵であったが、フレンドリーな世界に対して彼は一方的に牙を剥いているようである。
仕方ないかな、運命というのは大抵悲惨でその上で踊るのは道化。操り人形の指に赤い糸を仕掛けることが出来るのも世界、それを断ち切ることが出来るのも世界だ。
そんなわけで、運命のいたずら。槍兵の目の前では、赤い弓兵と黒い弓兵がそれぞれ全身から険悪な雰囲気をまきちらしながら微笑んで睨みあっていた。


「……ん。客のようだ」
間をおかずしきりに鳴る呼び鈴に赤い弓兵が腰を浮かす。さすがに概念武装は解除していて、黒の上下に臙脂色のエプロンをしていた。夕飯に使うさやいんげんの筋を取っている最中で、新聞紙の上でくるんと丸くなったそれと相まってその姿はどことなく愛らしい。
状況の微笑ましさに槍兵は相好を崩すと、寝転がっていた姿勢から上半身を起こす。こちらも概念武装姿ではなく、白いシャツに黒い革パンといったシンプルな格好だ。
「いいぜ。オレが出る」
「―――――君は連日バイトで、今日はたまの休みだろう。ゆっくりしているといい」
「なんだよ。気づかってくれてんのか? なら、オレにも同じことさせろ」
赤い弓兵は困ったように眉を寄せた。エプロンの紐を外そうとして動きを止める。ん、と首をかしげて、槍兵はその手を軽く掴む。
「ラ、ランサー」
「迷ってるなら一緒に行っちまおうぜ。それでいいだろ」
「な、なにがそれでいい、なのかね! 君は私の言うことをちっとも……」
「はいはい、理解してますよっと」
「ランサー!」
手をつないで廊下を歩く。大人の男ふたりの歩幅なら玄関まではすぐだ。それでも、赤い弓兵は槍兵の手を振りほどこうとしない。筋力?できない?違う、しないのだ。
槍兵はそう確信して、赤い弓兵の手を引いて歩く。後ろからたわけ、だの、放さんか、だの騒ぐ声が聞こえてきたがまるっと無視する。つないだ手がだんだん熱くなっていくのがおかしくて口端で笑う。まったく、素直じゃない。振り返ればきっと赤い外套の騎士、とその名のとおり顔を真っ赤にした姿が見れるのだろうと思ってうずうずした。
短い散歩はすぐ終わってしまう。少し残念だと思いながら、槍兵は玄関の引き戸に手をかけた。その間もピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンと、もうやめて!呼び鈴のHPはゼロよ!と喘ぐような音が連続してこだましたが、多少怪訝な顔をしただけで槍兵はそれを開け放ってしまった。
地獄の扉を。
「ランサー!」
は?
開け放った扉から飛びだしてきたのは、災厄だった。
漆黒の外套がふわりとたなびき、琥珀色の瞳がまっすぐに槍兵を見つめる。胸の中へ―――――というよりほとんどどこかのお嬢さまのように全身を使ってダイビングしてきたその男は、カラーリングさえ違えど赤い弓兵とうりふたつな風貌をしていた。
やけにゆっくりとスローモーションで槍兵の腕へと飛びこんできた男……黒い弓兵は満面の笑み(!)を浮かべると、呆然としたままで突っ立っていた槍兵の上に遠慮なく着地なさってくださった。
「ぐえ」
「ランサー!?」
「ランサー!!」
ユニゾン。驚きと喜びの。頭を打って呻いている槍兵の顔に手を添えると、黒い弓兵はうれしそうにささやく。
「ああ愛している愛している愛している愛しているぞやっと会えた私のランサー! まったく私を放ってどこに隠れていたのかと思えば、こんな辺鄙なところにいたとはな! ふふ、これも運命のいたずら……か? そんな茶目っ気のあるところも愛しているぞ、私のランサー……」
ノンブレスである。息継ぎひとつなし。近所の小学生が見たらすげぇ、と感嘆の声を上げるだろう。いや、それよりも前にその母たちが見たらいけません!と彼らの目を覆うだろうか?なにしろ、衛宮さんちの玄関先で男が男を押し倒しているのである。
しかも、片方はまるでコスプレのような格好をして。
軽く意識を失っている槍兵に愛をささやいた黒い弓兵は不思議そうな顔をして、ああ、とつぶやく。
「目覚めのキスが必要か? まったく、甘えん坊さんだ」
「おまえが甘えん坊さんだ! このたわけが!」
怒号が炸裂し、耳まで真っ赤にした赤い弓兵が、槍兵の頬を手で挟んでくちづけをしようとした黒い弓兵を蹴り落とした。
いつのまにか概念武装をきっちりと身にまとい、夫婦剣まで投影して手が白くなるほど力を入れて握りしめている。うつろな意識の中で槍兵は、そんなもん持ってるなら何故使わねえんだ、と思ったとか思わないとか。


それで、現在こんな状況になっているわけだ。
“何故やってきた?”と犬歯をむきだしてたずねる槍兵に、黒い弓兵は微笑んで“もちろん、君に会うために”と言い放った。
“どうしてここが?”とつづけて問うた槍兵に、黒い弓兵は微笑んで“愛の力だ”と言い放った。
“…………なんで生きてる?”げんなりしてちゃぶ台と仲良しになった槍兵に、黒い弓兵は微笑んで“愛の力だ”と繰り返した。
二度言った。
気に入ったらしい。
「ランサー、どういうことかね」
「オレに聞かれたって困る。第一、これ、おまえだろ? おまえのひとつの可能性だ。わかんねえのか、なんか」
「私が知るか!」
いまだ耳までを真っ赤にした赤い弓兵は叫ぶ。正座をして、膝の上に両手をそろえて背筋を伸ばして。こんなときでも礼儀正しい。槍兵などはもうぐだぐだになってしまってあぐらをかいた上、ちゃぶ台に肘をつき、とまったくやる気がない格好なのに。
「私とて貴様に知られたくなどない。私は私だ。ランサーを愛し、ランサーのためだけに生きるのが私だ」
黒い弓兵はそんなことを言うと、槍兵の腕に腕を絡めようとする。なあランサー?などと言いながら。
「…………」
ぺし。
赤い弓兵はその腕を平手で払った。黒い弓兵は目を丸くして、それからかまわずにまた腕を絡めようとする。また平手が飛んだ。かまわない。平手が飛ぶ。かまわない。平手が飛ぶ。まるで害虫相手の対応だ。かまわない。まるで空気相手の対応だ。
まったく相手をどう思っているのかがよくわかる……殺伐とした雰囲気がその場に充満して槍兵は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。殺気。これは、殺気だ。
本気の戦いは好きだが、こんな修羅場は困る。
日頃はいいもんだと思ってたが、こういう状況となるとこれはその……威圧感があるな。
赤い概念武装と黒い概念武装。槍兵だけが普段着で違和感がまるだしだが、ここに来て彼までもが概念武装をまとってしまったらなにか禍々しい出来事が起こりそうな気がする。来る。きっと来る。
なにかが。
「そういえば、この家では客人に茶のひとつも出さないのかね。まったく、里が知れるというものだ」
「貴様が隙あらばそいつに手出ししようとするからだろう!」
「言い訳だな。はしたないぞ、もうひとつの私という身でありながらそんなにみっともなく大声を上げてそのうえ嫉妬に狂うとは」
「嫉妬!?」
「嫉妬だろう?」
「誰が!?」
「貴様がだ」
「誰に!?」
「私にだよ」
唖然とした赤い弓兵の前で、とうとう黒い弓兵は槍兵の腕に自分のそれを絡めた。こつんと頭を肩口に当てるように首をかしげて、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「さあ、ランサー。言ってやるといい。おまえなどもういらないと、新しい君の伴侶は私なのだと哀れなそこの私に言ってやれ」
「―――――は? っておまえ、なにしてやが……放せよ! ってなんだこの力! はなれろって……万力かてめえ!」
「愛の力だ」
三度目だった。
ごろごろと喉を鳴らして槍兵にすがりつく黒い弓兵はまるで猫だ。腕を絡めるどころか膝の上にまで乗り上げて、放っておけば革パンを引き下ろしてあわや、というところまで辿りついてしまいそうなやる気を見せている。発情期の猫。
「おいアーチャー、どうにかし…………」
慌てて助けを求めた槍兵だったが、そこに赤い弓兵の姿はなかった。え?と思わず青ざめる。置いていかれた?これと?二人っきりで?
あわや泣きだしかけた槍兵は台所にその気配を見つけて安堵する。したが、何故突然そんなところに彼が移動したのかはわからなかった。ばさり、とのれんを分けて現れた赤い弓兵は、手にどんぶりを持っていた。ほのかな湯気を立てているのが見える。ずかずか、と足音も荒くちゃぶ台のところまで戻ってきた赤い弓兵は、黒い弓兵の前にどんとそれを置く。
「貴様なら、これの意味がわかるだろう。さっさと食べて、さっさと帰るといい」
これが私のもてなしだ。
その宣言に黒い弓兵は目を細めると、添えられたれんげを手にする。
槍兵は目をぱちくりさせていたが、聖杯の機能によってとある情報を入手した。
―――――ぶぶ漬け。
京都では帰ってほしい客人に茶漬けをふるまうという。そしてまさに黒い弓兵の前に置かれたのは茶漬け。無駄に手が凝った一品だったが、確かにそれは茶漬けだった。紅茶でも緑茶でも中国茶でもない。ティーカップでも湯呑みでも茶碗でもなく、どんぶりだ。
アーチャーこええ……!
白目になって内心でつぶやく槍兵だったが、彼はもっとおそろしいものをその後見ることになる。
黒い弓兵は一口どんぶりの中味をれんげにすくうと、あろうことか槍兵に差し出してきたのだ。
「ほら、あーん」
「ええええ!?」
「ん、大きな口だ」
うれしそうに黒い弓兵は笑うと、そこに吹いて冷ました茶漬けがすくわれたれんげをこともなげに入れてみせた。反射的に槍兵はそれの中味を飲みこんでしまう。咀嚼するのをうれしそうに眺めて、飲みこんだときに動いた喉仏にうっとりとしてみせる黒い弓兵。
「美味くはないだろうが、どうだ? 美味かったか?」
「矛盾した質問を突きつけるな!」
誰がランサーに食わせろと言った!と叫ぶ赤い弓兵に、黒い弓兵はうるさそうな視線を向ける。
「私は不味いものは食べたくない」
「不味くなどないわこのたわけ!」
「そうかね。では……」
畳に尻もちをついてひっくり返っている槍兵に、黒い弓兵はれんげを握らせた。そして手を引いて体を起こさせると、その前に正座して口を開く。
「食べさせてくれ、ランサー」
「は!?」
「どんなに不味い料理でも、たとえ毒でも君が差しだすなら私は悦んで口にしよう。毒、か……我ながら、言いえて妙だな……」
「不味くないと言っているだろうが!」
ぺん、と後頭部をはたかれて、黒い弓兵は軽くつんのめった。叩かれたところを押さえてまたもうるさそうな視線を赤い弓兵に向ける。と、なにを思いついたのか、ぱっと顔を明るくした。
「ランサー。痛い。撫でてくれ」
「今度はそう来たか!」
「私のくせになんて暴力的なのだろうな? ああ、痛む。ずきずきと痛むのだよランサー、撫でてくれ。そして君が望むなら他の場所も撫でてくれてかまわない」
たとえばここが疼くのだが……と擦り寄りながら槍兵の手を取って自らの胸に当てる黒い弓兵の頭をまたもぺん、と赤い弓兵がはたいた。
「隙あらば誘惑しようとするな! ええい、私と同じ顔をして気色悪いといったらない……!」
「何を言う。貴様が私と同じ顔なのだろう。私が存在するなら貴様は消えているはずだ。何故存在している?」
「それは私の台詞だ! 何故貴様は」
「愛の力だ」
四度目。
すっぱりきっぱり言い切った黒い弓兵は、槍兵にしなだれかかりながら陶然とした表情でささやく。
「私はランサーを愛している。ランサーのためならなんでも出来る。貴様はどうだ? ランサーの優しさに甘えるばかりで、自分からはなにもしてないだろう。ただ愛されているばかり……いや、愛されているのかどうかも怪しいな? なにしろ、貴様はランサーを愛していないのだから」
「なっ」
赤い弓兵と槍兵の声がユニゾンする。
「……アーチャー?」
「なっ、何を根拠にそんなことを……と、いうかだな! 何故貴様にそんなことを言われねばならんのだ……」
「ほら。そうやって都合が悪くなるとすぐにごまかそうとする。愛しているのならばそんなことは言わないはずだろう? 素直に、私のように言えばいいのだ。……なあ? 愛しているぞ、ランサー」
そう言うと、黒い弓兵は槍兵の唇を奪おうとする。あまりに突然の行為に最速のはずの槍兵も反応が取れない。と、いうかすっかり固まってしまっていた。い、と口だけが動く。ランサー、と吐息のようにささやいて、黒い弓兵は舌をゆっくりと差し出して、
べん!と赤い弓兵に頭をはたかれた。
「わ、私だって、私だって愛している! ランサーを、この男を心から愛している! 貴様などに渡してたまるか、たわけが!」
もはやどこもかしこも真っ赤になった赤い弓兵が頭から湯気を噴きだしそうな勢いで叫んでいる。槍兵はぽかんとそれを眺めた。
「アーチャー……」
その声に、はっ、と赤い弓兵は我に返ったような表情になる。愛しげに槍兵はその顔を見ると、つぶやいた。
「やっと言いやがったな……おまえ」
「わ、私は、その、」
「本当……待ってたんだぜ。遅いんだよ、ツンデレが」
「ツンデレ!?」
「このまえギルガメのバビロンから借りてきた漫画で覚えた。おまえみたいなのをそう言うんだろ?」
「し、知るか!」
ぷいっとそっぽを向いた赤い弓兵に槍兵が相好を崩して笑う。アハハウフフ、こーいーつーうー、とほんわかとした雰囲気が漂い始めたころ、
ぺん!と音を立てて黒い弓兵が赤い弓兵の後頭部をはたいた。
「恥ずかしいほどラブコメ脳だな。私でありながらその緩みきった態度、恥ずかしいことこの上ないぞ。ああ恥ずかしい」
「な、な」
おまえがいうか!三度もいうか!と叫んだ赤い弓兵をもはや定番となったうるさそうな視線で見返し、黒い弓兵は言う。
「私だから言うのだよ。己を見直せ、貴様」
「こ、の」
「先程も言ったが愛されるだけ愛されようなどと罪深い所業だ。愛というものは相手より深く持たねばならない。負担? そんなことは考えてはいけないのだよ。愛されれば愛されるだけ、相手は幸せになると考えねば誰かを愛することなどできん。……その点で、貴様は私に負けている」
ぱきんとなにかが音を立てて壊れたような気がした。槍兵はそう思った。


そうして、戦争が始まった。


「だから私の方がよりランサーを愛していると言っているだろう!」
「いや、違うな。私の方がランサーを愛している」
「私だ!」
「私だな」
「違う!」
「違わない」
聖杯戦争よりもおそろしい、それは槍兵戦争だった。嫁取り合戦ならぬ婿取り合戦。
赤い弓兵と黒い弓兵はのべつまくなしに槍兵に対する愛を語り、お互い一歩も譲らない。私の方が愛している、いいや私の方が。そして槍兵に迫るのだ。
どっち、と。
「ランサー! どうしてはっきり言ってやらない、こんなまがいものよりも私を愛しているのだろう!」
「いいや、ランサーは私を愛している。なにしろ私の愛は深い。海よりも奈落よりも間桐桜の暗黒面よりも深い」
あわわわわわ。
傍目から見れば幸せな光景かもしれなかったが、当の本人からしてみれば修羅場でしかない。殺気がなくなった分、嫉妬が濃くなった。愛されている愛されている愛されている……と必死に呪文のように唱えるが、効き目はなかった。
どっちを選んでも、いや、槍兵は赤い弓兵しか選ぶ気はないのだけれど、どっちを選んでも選ばなかった方に殺されるだろう。その分の嫉妬力といったら……。
「よし、わかった」
わかった?
話がなにかまとまったのかと思い、槍兵が顔を上げるとそこには余裕の笑みを浮かべる黒い弓兵の姿があった。
背筋にまたも冷や汗が伝う。
「これから二人でランサーに奉仕し、より高めさせた方が勝者というのはどうだね」
「えええええ」
ちょっま、なにいってんのこいつ。
「…………」
「アーチャー? ……受けねえよな。こんな馬鹿な話……よ、よお、なあ、アーチャー? 返事しろってなあなんで黙ってんだよ、ここはおまえが“出来るか!”とか言って破談だろ? なあ、おい! こら聞いてんのか! 襲うぞ!」
本音が出た。
槍兵もやってられないといった感じだったのだろう。その声に覚醒したように赤い弓兵は顔を上げた。彼はひどく真面目な顔をしていた。
「ランサー……」
「アーチャー」
大丈夫だよランサー。
そんな笑顔で微笑むと、一転険しい表情になって赤い弓兵は黒い弓兵に指先を突きつけた。
「その勝負、受けた!」
「受けた!?」
「ふ……その潔さ、さすが私と言っておこうか」
「認めた!?」
「貴様もな」
「仲いい!?」
ぐっだぐだだな!と叫ぶ槍兵をそろって見やって固まらせると、弓兵二人はそれぞれに違った微笑を浮かべた。照れたような微笑みと、妖艶な誘う微笑み。
「「ランサー」」
完璧にそろった声が槍兵を呼ぶ。槍兵は逃げようとしたが遅かった。最速のはずなのに、遅かった。
赤い弓兵がおそるおそる唇を塞ぎ、そのあいだに黒い弓兵が革パンのジッパーを下げていく。なんという天国で地獄。
愛している、とふたつの声が重なって名前を呼び、そうして槍兵の理性と意識はそこで途切れた。


結論はおそろしくて言えない。
ただ、これだけは言える。―――――パンドラの箱の中に最後に残ったのは“希望”という名のかけらだったことを。
そう考えなければやってらんねえのである。



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