赤い閃光。
導かれ、降り立つ。
「君が私のマスタ……」
「ちょっとどきなさいよ!」
「嫌よ、どかないのだわ!」
「……は?」
ふたりいる。
全体的に赤い服でツインテの少女が。
顔付きは全く同じであるものの、瞳が違う。色ではない。様だ。
様変わりして、格好も派手に違い、彼女たちは仲違いしている。
「その……」
「ああ!」
「黒シェロ!」
くろしぇろ、とは。
思わず真顔になってしまっては、まともな方だろう少女がまともでないだろう少女を押し退ける。
「あなたのマスターはわたしよ!」
「えっと……?」
「いいえ、わたしなのだわ!」
なのだわ、とは。
今まで以上に真顔になってしまう。
そもそも何故同じ顔がふたりいるのか。双子なのか。
怖いなあ、と思っていれば、きゅ、と服の裾を引かれた。
「……え?」
ちいさい。
その、ちいさい。
「わたし、凛!」
ちいさいです。
とても、ちいさいです……。
「わたし、あなたのマスターよ!」
「はあ……」
三つ子だったのか。
しかし、それにしては小さい。
考えていれば、ばん、とドアが開いて。
「ちょっと待ちなさい!」
おおきいです。
いえ、そんなではないですけど。
三人に比べれば、おとなでした。
黒髪をくくった三人とは別に長く伸ばした美女は、つかつかと歩み寄ってきていーい、と指を突き付ける。
「あなたはわたしのものなの。わたしのアーチャー。わかる?」
「はあ……え?」
「わたしのものよ!」
「わたしの黒シェロなのだわ!」
「わたしのー!」
「わたしのものよ?」
四人です。
四人、います。
解せぬ。ちょっと待って欲しい。説明が欲しい。
考えていれば開いていたドアから、少年が。
「彼は僕のサーヴァントだけど?」
男ですけど。
すごく、四人と似ていますね。
「僕は遠坂凛。よろしくね?」
にこりと微笑んで手を差し出してくる。から、
「あ、ああ……」
思わず手を取ってしまったら、盛大に他の面子から睨み付けられた。
「ちょっと!」
「わたしの黒シェロに!」
「うー!」
「死ぬ準備、出来てるのよね?」
「落ち着きたまえ!?」
喉から出たのは、絶叫であり悲鳴だった。
遠坂凛。
彼女らもしくは彼らに共通する名前がそれであり、役職はマスターであり、性格は好戦的ということらしかった。
宝石をちゃらちゃらと鳴らしながら、遠坂凛たちは睨み合う。
その間に挟まれ、盛大にため息を吐いた。


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