「真剣勝負だ! 宝具を使うのもありだ! オレは死をも厭わねえぜ!?」
高々と狼煙をぶち上げるランサー。腕の中にはアーチャーだ。アーチャーはちょっと恥らっている。さもありなん。
そんな二人を冷ややかな金眼で見やるランサーオルタ。やや黒い艶のある髪が肩を滑っていく。
三人の間に横たわるのは沈黙。―――――。と耳が痛くなるほどの。
「別に……オレは……いらん……」
「いらん!?」
「!?」
さすがに両者ともエクスクラメーションマークとクエスチョンマークを出した。出すだろう。そりゃあ出すだろう。いらんて。いらんてどういうこと。お題はアーチャーを取り合ってのランサーとランサーオルタのガチンコ真剣勝負である。それがいらんて。
「い……いらんとは貴様、どういうことだ!」
「そのままの……ことだ」
「オレがもらっちまうぞ!」
「好きに……すればいい……」
やる気のないランサーオルタ。ダウナーにも程がある。なんかヤクでも決めてるのか。
「なら……欲しいとでも、言えばいいのか……」
「いやいやいやいやいやいや!」
「勘弁してもらおうか!」
かと言って欲しがってほしいわけでもないのである。女の子と違って男の子も、好きと嫌いだけで普通がないの!
ランサーオルタは気だるげな面持ちで後れ毛をかき上げる。
「面倒……臭いな……」
「いやいやいやいやいやいや!」
(おまえが面倒だ……!)
ランサーは繰り返し、アーチャーは口元を押さえ内なる心を解き放つ。実はこのランサーオルタ、スローテンポながらも内心は物騒で、むやみやたらにつつけばゲイボルクが無造作に飛んでくるという危険物なのだ。
下手に惚れれば即死するぜ!
「そ……そうか、いらねえならオレがもらっちまうぜ! いらねえもんを無理矢理押しつけるのも迷惑だもんな!」
「―――――」
ギィン。
夫婦剣が襲来。
間一髪ゲイボルクで受け止めたランサーは赤い瞳をぎらぎらとぎらつかせている。奥歯がぎゅい、と音を立てた。
「いらないものと自覚はしているが―――――」
「…………」
「面と向かって言われると腹に据えかねるものだな……」
「怒ったなら怒ったって言えよ!」
アーチャー、ちょっと血走った目で涙目。
「それにいらねえなんて言ってねえだろ! あれは方便ってやつで」
「嘘などつかなくとも良い!」
「あー面倒臭いけど可愛いな!」
「いらねえのか……?」
「へ?」
ランサーとアーチャーはそろって気の抜けた声を上げる。金眼がゆらり、と二人を見て。
「いらねえもんならもらっていくが、どうだ……」
ヒッ。
「マスターが……欲しがってたような欲しがってもいなかったような……気がしてな」
「そんなところまでマスター頼りでいいの!? おまえ!!」
「もっと貪欲に自分の意思というものを持つべきだ、君は!」
赤青ふたりが声をそろえた。
熱い忠誠心とか一見思えるがなんかそれって違う気がする。
むしろもっとMOTTO自我をしっかり持って!!
「マスターの命令が……オレの全てだ……」
「―――――ッ」
「…………ッ、」
赤青ふたりがそろって息を呑む。
そして同時にランサーオルタを指差した。
「……吸えばいいのか?」
「それは前作だしメイドだ! いいからそこに座れ!」
そうしてそれから懇々と。
そして切々と自分というものは何か、とアーチャーとランサーの二人に説教を食らったランサーオルタであった。
今回の勝負:勝者ゼロ。
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