わくわくざぶーん。
男女入り乱れる冬でも常夏なリゾート。本来プールを満たす水がお湯になっているというスパ・リゾート。空は太陽に照らされ、明るく常夏に。
夏、女子たちがあふれるはずのビーチには。
「わはははははは! 坊主は相変わらず貧弱じゃのう!」
「うるさいよ……」
「あ、主、主、イチゴフロートを召し上がりますか?」
「うるさい! そんな女子供の食べるものいらんわ!」
「ランサー、マーボーフロートを食すか?」
「いらねえよ外道神父! オレはアーチャーの作ったふわふわのお好み焼きを」
「誰が作ると言った!」
「おまえ」
―――――とまあ、まあ、男だらけのリゾート地。家事が好きなアーチャーでもふてくされて波打ち際に体育座りをしていた。仕方ない。ランサーがあまりにも横暴だったからだ。好きだと言えども我慢の限界がある。
ザザーン、ザザーン。
波打ち際に座りこんでアーチャーはふてくされていた。大柄な体躯で。ランサーはもちろん謝ったが、アーチャーはふてくされていた。 アーチャーといえどふてくされるのだ。心は硝子故。
「おう、若白髪!」
あんまりといえばあんまりな呼び声と背を叩く手に、アーチャーは勢いよくつんのめった。若白髪。若白髪って。
紅葉柄を背にさすがに涙目で振り向くと、そこにはやきそばとたこやきを手にしたイスカンダルがいた。やきそばとたこやき、当然マスターの財布から出たものである。
体を丸めて上目遣いでイスカンダルを見るアーチャーに、イスカンダルは豪快に笑う。そしてアーチャーの横に砂を蹴散らしながら座り込んだ。当然砂が舞い散る。けほっけほっけほっ、アーチャーはたまらず咳きこんだ。
「君な……」
「まあまあ。腹が減っていては気も荒れよう。ほれ、食べんかい」
「むぐ―――――……っ」
一個二個三個、続けざまにたこやきを放りこまれてはたまらない。アーチャーは目を白黒させて口を押さえた。もごもごもごもご、口を押さえてなんとか咀嚼する。
イスカンダルはにかりと笑った。
「美味かろう?」
「…………」
冷えたたこやきは美味かった。驚くことに。どすどすとやってきたイスカンダルは体育座りをしたアーチャーの隣に座り、自らも同じく体育座りをした。
「……何故」
「うん?」
「君は、私の隣に」
座るのだね、とアーチャーは態度をやや軟化させてイスカンダルにそうたずねた。体育座りのまま。
「そうさなあ」
顎に手を当ててイスカンダルは考え込んだ。少しだけ。
「余のマスターに似てたから。かな」
「…………」
彼のマスターは矮躯でふとすれば少女に見間違えそうで、ちっともアーチャーとは似ていない。顎までのさらさらとした黒髪。……似て、いない。
じっとりとした視線で見やるアーチャーにイスカンダルは豪快に笑ってその背を叩いた。筋力D、関係はないだろうがアーチャーは身悶えた。
「見かけだけとは限らん。内面が似ているということもある」
ますますわからなくなって、アーチャーは渋面を作った。
反面、イスカンダルはにかりと笑う。
そのとき、甲高い声がやってきた。
「ライダー! 何やってるんだよ!」


アーチャーとイスカンダルがそろって振り返れば、矮躯のライダーのマスターがやってきていていた。
海パンを身にまとっていなければまるで少女のようだ。
「おう。どうした」
「どうしたじゃないっ! 敵と仲良くして、一体何やってるんだよ!」
「敵? 敵と言ったか?」
イスカンダルとそのマスターは一方的にマスターがきいきいと騒いでいる。アーチャーは少し呆気に取られて砂の上を後ずさった。イスカンダルは掴みかからんとせんばかりの己がマスターに飄々と、


「こやつは敵ではないぞ」
「なっ―――――」
「―――――」


三者三様の反応。イスカンダルはやはり飄々と言い、ライダーのマスターは目を見開き、アーチャーはぽかんと我を失い。


「馬鹿あああああ!」
突然絶叫が沸き起こった。自分の倍以上もあるイスカンダルを、ライダーのマスターは首根っこを掴んで引きずっていった。
「お、お、お? 一体何を―――――」
イスカンダルの声がどんどん遠くなっていく。アーチャーはそれを呆然として見送った。
「あの坊主、随分と力があるな」
と、聞き慣れた声がしたと同時にアーチャーは首を絞められていた。絞められて―――――といっても柔く。
「ランサー!?」
「あのでかぶつとおまえが喋ってるとき、オレがどんな気分でいたか。おまえ、知ってるか?」
「知……っ」
「まあ、おまえの想像通りだ」
「だから知らんと言っているだろう!」
「あ」
「あ」
砂浜でライダーのマスターとサーヴァントが諸とも転ける。
声が唱和した。


「……あのでかぶつ……あそこもでけえんだな」
「……知るかっ!!」



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