「最初はグー。出したとしても我の勝ちだ! じゃんけん」
「それって意味ねえだろ、なあ!」
脱ぎたいのかおまえ!バカ殿!とランサーが突っ込んだ。手にはゲイボルクである、初っ端から殺る気満々だ。野球拳ごときで恐ろしい。
「ていうかぶっちゃけおまえの素っ裸見たってオレはどうとも反応しないんだわ。男で反応するのはアーチャーだけだ!」
「……男で?」
「失言しましたね、先輩」
うるせえだまれ失言なんかしてねえよ。ランサーは男らしく言った。だって男の子だもん。女の子に反応しないとか失礼さ。
言い切ったそれをどう受け取ったのか、ディルムッドは驚愕した表情を見せる。背景は無数のフラッシュ。無駄に耽美である。
「俺が間違ってました……!」
「うーんよきかなよきかなはからえはからえー。てなわけでディル、アーチャーの服一枚剥ぎ取れ、な!」
「ええ!?」
「ディルムッド、おまえは間違っていない。間違っているのは徹底してこの男とあそこの裸鎧の英雄王だけだ―――――!」
「なんであの人いつの間にか下の装備脱いでるんですか!?」
油断ならねえのである。
「素肌に鎧。なかなか斬新であろう?」
「んなわけねえだろ。素肌に聖骸布の方がよっぽどそそるね。な? アーチャー」
「うん。そうだな、君はあれだろう? 君の新しいマスターのことを言っているのだろう?」
「ばっ、んな、ちげえよ! いくら女だからってありゃガキすぎる! かといって育てばいいってもんでもねえぞ!」
「マグダラの聖骸布で自らの肉体をフィッシュというわけか、……フッ! 斬新すぎる性癖だなランサー!」
「だからちげえってんだろ! おまえのが見たいんだよおまえのが!」
「だが断る!」
そもそもカレンさんの聖骸布は男以外には効きません、というのはこの際問題ではない。
素肌に鎧→素肌に聖骸布→フィッシュ!とおかしな点に着地した裸○○トーク、アーチャーさんの断固断るが発動しました。というかだ、まず四次五次の槍さん弓さんが集まって何をするかといった話になって、何故野球拳なのか。何故なのか。そう聞かれれば理由はひとつくらいしかない。
そこに厚く着込んだ英霊エミヤさんがいるからさ。
「別に着込んでいるわけではない!」
「いや! 全身タイツふたりと裸鎧ひとりに比べればおまえの厚着はアヴァロン級だなアーチャー! 認めろよ……楽になれるぜ」
「いい声でささやいても落ちんぞ! おまえは私のことをなんだと思っている!?」
「ツンデレ時々ヤンデレ」
「よし、そこに座れ。貴様の全身タイツ、上から海老の殻のごとく剥いていってやる!」
「そういうところがヤンデレなんだよなー」
「え? これってヤンデレっていうんですか?」
ヤンデレのパターン広くなりすぎです。
というかいいからもう、
「痴話喧嘩などしておらんで早く脱がんか雑種共!」
「なんで既に脱いでるんですかあの人!?」
「……うわ。全裸で仁王立ちで高笑いのコンボは引くなー……」
「おまえの同僚だろうランサー。急いで行って止めてこい」
「おまえが半脱ぎして“ランサー、早く”って言ってくれたら行ってくるがどうだ」
「ディルムッド! おまえの槍を一本貸せ! この男、モズのはやにえさながらにしてくれる!」
「そのために俺の槍を貸し出すのは勘弁してもらいたいです!」
「もういいから早く脱げよアーチャー!」
「誰がいいと言った! おまえか! 私は御免被る!」
「むしろなんでそんなに脱ぐの嫌がんだよ? 体に自信がねえとかか?」
バッカだなあオレはおまえの全てを余すところなく愛してるぜアーチャー、と微笑みを浮かべて両手を広げるランサーへとアーチャーの渾身の回し蹴りが襲来する。
「あっぶね……!」
持ち前の敏捷さでとっさにしゃがんで避けたランサーはふと真面目な顔でちらり、と視線だけを上げた。アーチャーの顔に疑問符が灯る、のと同時に口笛が吹かれた。

「いい眺めだなあ、オイ」

アーチャーが呆然とした顔をしてから我に返った顔になり、それから羞恥心でいっぱいの激昂した顔になるまで約数十秒。
「これはあれか? 槍兵は全見せよりチラ見せが好きだと、そういうオチか?」
「俺に意見を求めないでください……」
あと、パンツだけでもいいので服を着てください。




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