「よお、アーチャー!」
食堂。
サーヴァント用のそこで、快活な声が響き渡った。
「……む」
“アーチャー”と呼ばれた男。赤原礼装を纏った男はアイスティーが満たされたグラスをテーブルに置いた。
その向かいに座った男は、不機嫌そうな表情を露にしている。
がたがたがたん。
「隣。空いてんだろ?」
「空いては、いるが」
相手もいる。
「なんだそれ」
洒落かよ、と笑いつつ声の主――――ランサーはアーチャーの隣にわざとらしく腰掛けた。
「――――気遣いがねぇ奴ですねえ」
「あ?」
何だこの緑いの。
「だったらアンタは青いのですねえ」
「はあ?」
「ランサー!」
それにロビンフッドも!と赤い男は声を上げる。ざわざわと騒がしくなってきた周囲。赤い男は、アーチャーは注目を浴びるのを全くもって全然好まない。ランサーは俄かに顔を顰めて、
「何で」
「は?」
「何で真名呼びなんだよ」
「それ、は」
「クラス名が同じだからですよ」
にーっこり。
わざとらしく快活な笑みで、緑色の男――――ロビンフッドことアーチャーは笑った。ランサーの額にぴきりと青筋が立つ。
「んだよ、それ」
「おそろいってことです」
「喧嘩売ってんのか、ああ?」
「ランサー、ロビンフッド、やめないか!」
「真名がいい」
「え」
「オレも真名呼びがいい!」
がたん、と椅子を鳴らして立ち上がったランサーにアーチャーは慌てる。秘匿性が云々……だが、ランサーはそんなこと聞いてはいない。
「呼べよ、親しげに。甘ぁく、“クー・フーリン”……って」
「浅慮なお方ですねぇ」
「はぁ?」
「そんなんじゃ、マスターさんに叱られちまいますよ?」
「そんなんてめぇだって同じだろ」
「オレは。旦那の許可を得てますから」
にっこりにこにこ。
「職場恋愛の許可も得てます」
「職場……」
アーチャーが“頭痛が痛い”という顔をしてみせる。ある意味職場でしょう?とロビンフッド。
「ちょいと血生臭い職場ですけどねぇ」
「やるか?」
「応とも」
「ふたりとも!」
ここをどこだと!そんな悲鳴じみたアーチャーの声は、翻される緑のマントと薄く発光し始めた青いケルティックスーツに閉ざされる。全く、迷惑なことこの上ない!
「商品は?」
「この赤い兄さんで」
「よーし、興が乗ってきた!」
「やめないか、ふたりとも!」
料理がもったいない!
「え、そこ?」
「そこなんですかい」
「そ、それに、恥ずかしい、だろう!」
「なんで」
「どうしてなんです?」
「…………ッ」
そんなふたりが睨みあっている内に。
「あ」
ぱっ、とその姿が掻き消える。
「ペナルティ……」
セラフでの私闘は禁止されています、とか何とか。
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