「ん……っ、んん……っ、はあ――――っ……」
どくん、と。
体の中で弾けたものに、たまらずアーチャーは声を上げていた。
それを見て嬉しそうに笑うランサー。互いの体は一糸も纏わず。
褐色の肌と白い肌、異なるものが融け合ってシーツの上で絡まりあっている。
はあ、はあ、はあ、と荒い吐息はぴったりふたつ分。
「アーチャー……」
ランサーは愛しさの溢れる声でそう名前を呼んで、正面から見つめあった鋼色の瞳を刻み付ける。
どこへ?その意識へ。永遠に、忘れたりなどしないように。
繰り返し繰り返し繰り返してきた行為ではあるが、その都度に発見があるのでその度に彼は彼を自身に刻み付けていくのだった。
「…………」
「おいおい、何呆けてんだ。……しっかりしろって、寂しいじゃねえか」
くつくつと笑いのこもった声でそう言って、ランサーはアーチャーの頬を軽く叩く。
ぺちぺち、と。
どこか間の抜けた音がした。
「あ……は……」
ゆっくりとアーチャーが口を開けば、上顎と下顎が唾液で糸を引いて繋がる。
その口内の赤さにどくん、と腰がまたもや疼くのを感じながら、ランサーはその衝動を治めようとする。
何しろ今晩で何度になったか。覚えきれないほどに体を重ね、心を重ねたのだ。これ以上はアーチャーに負担となる。
思って放ち、硬度を失ったそれを彼の内から引き抜こうとしたランサーだったが。
「っは……、ラン、サー……」
「…………ん? どした?」
その呼ぶような声に動きを止めて、口の傍に耳を寄せてやる。
そこに。


「君の精は……神性が強すぎて、どうしようもなく酔ってしまう……」


爆弾が、落とされた。
「んな……っ」
ささやくような、呻くような声で。
そんなことを、言う奴があるかというのだ。
腰に来るような、疼きをまた燃え上がらせるような。否応もなく震え上がらせるような声を!
「――――馬鹿野郎、てめえ……っ」
「え……? な、に……」
「犯す。もう、何度だって犯してやるから、せいぜいオレの…………に酔ってろ」
「何を言って、ランサー……んぅ……っ」
唇を無理矢理奪うとアーチャーは少し暴れたものの、唾液を流し込んでやればだんだん目がとろん、となってきて言葉通りに蕩けた。
隙間を縫うようにぬるぬると絡まりあう唾液と舌。
己より少々がたいがいいその体をシーツに縫い止めて、ランサーはさっそく硬度を取り戻した己でアーチャーの内へと侵入を果たす。
際にびくん!と一度大きく体が跳ねたが、それだけだ。蕩けた体と意識はランサーの思うがまま。
突き上げ、抉り、揺さぶって。
声さえ出ないかと思われたアーチャーだったが意外にもよく啼いた。
「あ、ぁ、あ! っは、ん……っ、らん、さぁ……!」
「てめえな! 今の面ビデオででも撮っておいてやろうか、んで、後で見せて……やる……よっ!」
「っ、は――――、」
軽く極まって、アーチャー。
仰け反る喉にランサーはどうしようもないものを感じて喰らいつく。
「おら、もっと酔え……!!」
叩き付けた何度目かも知らぬ精。それにアーチャーは「あ、あ、あ、」と母音を三連続で口にし、瞳を滲ませる。
その滲みを舌で拭い去りたい衝動を全て吐き出す精に変えてランサーはアーチャーの内へと叩き付ける。
びゅくびゅくと連続して敏感になったそこへとの刺激にアーチャーは声にならない声をあげ、いやいやと首を振る。
それでも、知っている。
嫌などでは、ないことを。
「ん……濃、い……」
だから。
瞳を滲ませながらうっとりとして、そんなことを言うのだ。
「……もっと、くれてやろうか」
「ふ……」
肯定も、否定もなかったから。
ランサーはアーチャーの腰を抱いて、シーツの海から抱え上げる。
そうして体を重ねたままに、不自然な体勢でくちづけた。
「ん……っ」
甘い声。甘い体。喰らい尽くしてしまいたくなる。
唇を離し、にやりと笑ってランサーは言った。
「もうやめろ、嫌だってくらい注ぎ込んでやるぜ。……耐えろよ?」



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