「え?」
今、なんて。
「だから、戦いだと言っているだろうに。あそこの青いのと戦って儂が勝ったらおまえは儂のものになる」
「……なんでさ?」
思わず口から生前?の口癖が漏れた。無意識だった。
そもそも一体どうして彼が自分に求愛しているのか。そもそも一体何故、自分は女性の姿をしているのか。わからない。わからない。
全然どうして全くもってわからない!
「強い女子は儂の好みでなあ。いやいや勿体ない。この身がサーヴァントなどというものでさえなければ交わり、子を成すのに」
「子、?」
それは。
……子作り宣言、というものですか?
「ば、馬鹿を言うな!」
「照れているのか、愛い愛い。ますますもって勿体ない」
「おいちょっと待て戦闘狂」
そこに、青いの。すなわちランサーが乱入してくる。
「いい雰囲気作んな。勝手にオレの女をてめえのものにしようとすんな」
「おん、な――――」
何ということだ。ランサーまで自分を女扱いと来た!これが笑わずにいられるか!
「大丈夫だアーチャー、オレのアレならおまえも孕む。何せ光の御子のアレ、あいたぁっ!?」
「下品なことを言うな!」
「儂の嫁。顔が真っ赤だぞ。熱でもあるのか?」
「サーヴァントが熱を出すか!」
「だろうなあ」
楽しそうに笑っている。この赤髪!それに今さりげなく“儂の嫁”などと言ったな!許さんぞ!
「……いいか。私は誰の嫁にもならん。この身は元々男の物だ。だから……」
「ほほう!」
「ほほう?」
ついつい赤髪サーヴァントが楽しそうに発した言葉を繰り返してしまうと、随分と縮んでしまった体を上から下までとっくりと眺められ。
「な……何、かね」
「男でも構わん。儂は強い遺伝子を好むのでな」
「ええええ!」
「オレも構わねえぜ!」
「ええええ!?」
何、この人たちって変態!?
自分に有り得ない言葉遣いが頭の中を過ぎる。だって、だってだって!
元は男なのに構わないとか有り得ない!強い遺伝子だからオッケーだとか、そんなの有り得ない!
あと男同士で子供作りとか絶対有り得ない。有り得ないったら有り得ない。
「ランサー。……アサシン。君たち、」
「よし、ランサーとやら。こうなればどちらがこのアーチャーを早く孕ませるか勝負と行こうではないか!」
「その勝負、乗った!」
「仕掛けるな! 乗るな!」
最低だ!と喉の全力を使って叫ぶ。全くもって最低だ!
顔がかっかと熱くなる。おかしい。彼らはおかしい!一体いつ男に、ガチムチの男に戻るかわからない女を孕ませる勝負で盛り上がるなんて。おかしい。絶対におかしい!
「おっと、顔が赤くなっておるな? 照れているのか、愛らしい」
「……だから」
「アーチャー、さっそくオレのマイルームに」
「遠坂凛がいるだろう!?」
あかいあくま、マジ勘弁!
「だーいじょぶだって。嬢ちゃんなら面白がっ……ゲフン。……快く貸してくれるか、」
「ううん……儂のマスターはどうかのう……気難しい奴故に」
「ばか! ばかばかばか、ばかばかばかばか!!」
もう、頭を使った罵倒も出てこない。
「照れてんな! 超可愛い!」
「愛い愛い」
しかもそれを褒められた。有り得ない。
「君たちは最低だ、悪趣味だ、信じられない!」
「えー? いい趣味してっと思うけどなー、なー?」
「うむ」
意気投合された。信じられない。
「よし、ランサー。勝負より先に酒でも酌み交わそうではないか。マイルームに隠しておいた儂の秘蔵の一品がある」
「マジか」
「……もう、好きにしてください……」
「酒の肴はアーチャーだよな?」
「当然よ」
……もう、本当に最低だ……。
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