「あああああランサーがひとりふたりさんにん! もう私は死んでもいいっ! あっでもその前にランサーたちにぐちゃぐちゃに犯されて嬲られて甚振られてから死にたいっ!!」
「心の欲望垂れ流しだなてめえ!!」
「…………」
「元気なのはいいことだ」
最初っからクライマックスなアーチャーオルタに思わずツッコむノーマルランサー、無言のランサーオルタ、微笑むランサーリリィ。
ただただ慈愛の念を向けるランサーリリィに、……はい?みたいな顔でぎぎぎぎ、と向き直るノーマルランサー。
「……なあ、おい」
「何だろうか」
「そういうのやめてくれませんかねえ!? こいつがオレまでそんな気になっただとか勘違いしかねませんので!」
「ああ、ランサーとランサーが私を取り合って喧嘩している! いい! 思わず私は……ああっ!」
「ほら来た予想通り来た思う様に来たあああああ!」
絶頂クライマックス、所謂ヘヴン状態なアーチャーオルタにノーマルランサーは己の愛するノーマルアーチャーを思って口内の頬肉を噛む。血が出そうなほど、いや、もう既に出ているほどに思いっ、きり、噛む。噛み噛み噛む。
汚されないように……守りたいあの笑顔!
UBWスマイルなノーマルアーチャーを心の拠り所にして耐え、ノーマルランサーは拳の中の爪を己が肌にぎりりと立てた。マゾになった訳ではない。耐えているのだ。
そんな間にも、アーチャーオルタはランサーリリィの前につつつ、と歩み寄っていき。
「……ランサー?」
「うん?」
微笑みながら優しく答えるランサーリリィに、アーチャーオルタは。
「この淫乱が、と私を罵ってはくれないだろうか……」
「だからやめてくれませんかねえそういうの!!」
「…………」
ランサーリリィはひときわ輝く笑顔で微笑んでから。
「……悪りぃな。オレの愛するあいつの写し身であるおまえにそんなひでえことを言うだなんてオレには出来ねえ。オレにもやってやれることとやれないことがあるんだ。本当に、済まねえが」
「……それなら」
あ。
来るわ、これ。
ノーマルランサーが思った時だ。
「それならば、抱いてくれ! 私を! めちゃくちゃにしてくれっ!」
「ほらねええええやっぱり!」
何が“それならば”なんだか。話の軸こそがめちゃくちゃである。ぶっ飛んでいる。このドMが!
――――ドMは今は関係なかった。
「!」
くるっ、と。
己の方に向き直られて、ノーマルランサーはびくりと身を竦ませる。金色の瞳でアーチャーオルタはそんなノーマルランサーをじっと見て。
「ランサー、三人で……しよう?」
「いや、“しよう?”って言われても」
お友達からも勘弁したいんで。
すっぱりきっぱりとなるべく、いや、確実に伝わりやすい方法で言ったノーマルランサーを見て、アーチャーオルタはきょとんとする。え?なに?なんて風に。
「……しよ?」
「いや、萌えキャラっぽく言われても」
ないんで。
上目遣いとか使われてもないんで。有り得ないんで。
「君の燃え滾るものを私に思う様ぶつけていいんだよ?」
「遠慮してる訳じゃねえから心底駄目だから言ってるんだよ! わかってんのか! わかってねえよな! うん!」
わかっていなかった。
???と無数のクエスチョンマークを飛ばしているアーチャーオルタに向けて、ノーマルランサーは。
「おら、よっと!」
「!」
「…………」
どん、と。
ランサーリリィと、ランサーオルタの背を勢いよく突き飛ばした。
もふっ。
「……っと」
「…………」
白黒ランサーふたりとぶつかる形となったアーチャーオルタは、目と口をぽかんと丸く開けて。
「あああああぁランサーがふたり私にくっついて密着してああああぁぁぁ」
「狙い通り! ……だがこの気持ちは何なんだろうな……」
きっとそれは、悪寒というのだ。
背筋に走る寒気を振り切って、ノーマルランサーは走り出そうとする――――が、無残にもびたんと転んだ。
「ててて――――……な?」
足元を見てみれば。
そこには、ぎらぎらと欲望を写したように輝く太い鎖。
「逃がさない☆」
……天の、鎖だった。
そしてランサーたち三人とアーチャーオルタは、それなりに楽しく過ごしたと言います。
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