くすくすと笑う。
額をくっつけあって。手を繋ぎあって。指先を絡めあって。
周囲は色とりどりの花畑、頭にはそれで作った花冠。白い髪の少年は「少しかわいそうだな」とつぶやいていたが、青い髪の少年が「おまえの彩りになれてこいつらも喜んでるよ」とささやいた途端に顔を真っ赤にした。
にっこりと、青い髪に白い肌、赤い瞳。
少女のような少年。
「ほら、エミヤ」
手渡したのはこれもまた、花畑から摘み取って作った花束。ブーケだ、と青い髪の少年が言う。エミヤ、と呼ばれた白い髪の少年は笑って。
「ありがとう、クー」
少し高い声で、そう返した。
その言葉にクーと呼ばれた青い髪の少年は目をぱちくりとさせると、すぐさまにっと笑って。
「当然だろ。オレの花嫁」
褐色の手の甲に、かわいらしいくちづけをした。
調子の外れた鼻歌を歌いながら手を繋いで、クーはエミヤを連れ歩く。
たたたたーん、たたたたーん。
そんな単調なメロディをふふふーん、と紡いで、クーは大股でしかし、エミヤを置いていかないように歩いた。
「どこまで行こう?」
ふと、エミヤがそんなことを問うた。クーの歩みが止まる。振り返れば結ばれた青い髪が揺れて。
赤い瞳がぱち、ぱち、とまばたいてエミヤを見つめる。
そして、桃色の唇が開いた。
「おまえが行きたいところまで」
にっかりと、美少女然とした表情が台無しなほどあっけらかんと笑う。
エミヤは同じくぱち、ぱち、と鋼色の瞳をまばたかせて、
「だったら」
ふわり、とタンポポの綿毛のように柔らかく微笑んだ。
「どこまでも。君と一緒ならばどこまででも行きたいよ、クー」
「――――ッ」
がばっ。
「……! クー……!」
草むらに落ちる花束。抱きしめられて瞠目するエミヤ、その丸い肩がびくんと跳ねる。
「や、くすぐった、」
「エミヤ、好きだ、オレのエミヤ」
オレの嫁さん、とささやいてクーはエミヤを抱きしめる。その勢いを殺しきれずにエミヤはそのまま――――。
「わ、わ、わ……!」
どたん。
青と白、それぞれの頭の上から落ちてしまう花冠。草むらでころころころ、
「っ、たたぁ……」
「…………っ」
転倒の衝撃に頭を押さえて呻くクー、目を閉じて耐えるエミヤ。
そしてぱちん!と全く同じタイミングで開くその目蓋たち。
見つめ合う、赤と鋼。
「……くくっ」
「ふふ……っ」
草むらに、子供ふたりの笑い声が響き渡った。
「病める時も健やかなる時も?」
「誓うよ、クー」
「愛し合うことを!」
「もちろんだとも」
「嬉しいぜ、オレのこいびと」
……じゃなくて。
「嫁さん」
言い直してクーはエミヤの頬にくちづける。ぱちくりとまばたき、真っ赤になるエミヤの顔。
「……エミヤは?」
「私も」
「うん」
「あいしている」
「!」
また、クーが飛びつくようにエミヤに抱きかかる。そしてそのまま。
「わ、あ、あ、あ――――!」
どったんごろごろばったん。
「まったく、君と一緒だと生傷が耐えないな」
「……ごめんな?」
「嘘だよ」
言って、エミヤはクーの白い頬にくちづけて、林檎のような顔色にさせたのだった。
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