興味がある。
殺したい。
ただ、ただ、想うという意味では同じだ。
「意味が解らない」
露骨に眉をしかめたアーチャーに、言峰は愉しげにくつくつと笑う。
「あんな者、ただ殺したいばかりの存在だろうに」
「そうか? 私は興味があるのだがね」
「だとしたらくれてやっても……ああ、いけない。私が殺さなければ」
この目で確かめなければ、とアーチャーは声を沈ませて。
「確かに、奴が死んだことを。この目で、確かめないと」
確かに。
「私の存在も消える、ことを」
この身で確かめないと、とアーチャーは。
「そんなにも手に掛けたいのかね」
「ああ、縊り殺したいとも」
「顔が切羽詰っているぞ。……本当は?」
「本当も何もない。私は衛宮士郎を殺したい」
この手で、と言うアーチャーの手は震えている。興奮のためか。それとも、恐怖か。
それは、誰にも、
「それは困る。私があいつの全てを知る前に殺されてしまっては」
「なら、私がたった今、貴様に引導を渡してやろうか」
かすかにアーチャーは笑った。鋼色の瞳を細めて。
「冥界に落ちてしまえば気になることもないだろう?」
「どうかな。私は執念深いぞ?」
冥界に引きずり込んででも奴を知りたがるかもな、と言峰は尚も笑いながら告げた。
「……それは、」
「…………」
「……それは、困る。貴様の言葉の繰り返しになるが。衛宮士郎は私の手で殺さないと」
オレの、手で、と。
「他の誰かの手で殺されるなんて」
そんなの、耐えられない。
「まるで恋焦がれているようだな、アーチャー?」
いや。
「英霊、エミヤ」
その言葉を聞いたアーチャーの瞳が殺気を帯びる。
さながら尖った剣の切っ先。
なのに、言峰は笑っている。
愉しそうに。
「――――おまえを、先に殺してやろうか」
「それでもいいがね。だが、本末転倒というものではないか? エミヤ」
「その名で呼ぶのは止めろ。オレは……」
「おまえはエミヤだ。エミヤ、シロウでしかない」
「……止めろ! オレは……」
ぐ、と噛まれた唇。
つ、と、流れた、
「――――オレは……!!」
「おまえはエミヤシロウだ。エミヤ、」
「止めろ!!」
がっ。
鈍い音。
ひびの入った、長椅子。
それを眺める茫洋とした言峰の瞳、けれど奥には光があって。
ふふ、と言峰は笑った。
「被ったものが焼け落ちているぞ、エミヤ」
「殺してやる」
「十年前の火事を思い出したか」
「止めろ」
「焦げて。肺は熱い空気を吸い。肌は爛れ。何もかもが、死んで」
「――――止めろ!!」
音。
ばらばらに砕けた、長椅子。
「好いているのだな」
言峰は笑った。
「殺したいほどに」
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