「やったな!」
青い髪を金色の装飾品で括った男が快哉を上げる。
その手には大振りな銃。
赤い瞳を覆うバイザーをかしゃん、と解除して、双振りのサーベルを持った相方の背中を叩く。
「今夜はいい宿に泊まれるぜ! もちろん……」
「君との合部屋はお断りだ」
「……寝相が悪いからか?」
それとも寝言?いびき?と積み重ねる男に、相方は冷たい視線を投げて。
「一仕事終えた後に汗を流す風呂は最高だ。……なのに、君に乱入されてはゆっくりと入ってもいられんよ」
「オレたちこいびとだろ!」
「ビジネス上では他人だ」
「私生活ではこいびとだろうが!」
「あまり大きな声を出すな、」
耳が痛い。
そう言って男の相方――――白い髪に鋼の瞳の男――――は同じくバイザーを跳ね上げて、ふう、とため息を吐いた。
そんな男を、青い男はじっとりとした目で見つめる。
「何かね」
「おまえだって」
夜は。
「あんあん喘いでうっせえくせに」
「!?」
男は咳き込んだ。油断していたところに直球ど真ん中で受けてしまったストライク。
「あ、でも嫌ってわけじゃねえぜ? むしろどんと来」
「たわけ!」
青い男はもろに背中へと蹴りを喰らった。バランスを崩してちょうど目の前の坂をごろごろと落ちていく。
男がふん、と鼻を鳴らした。
「……たわけ、が」


結局、部屋は合部屋だった。
「襲ってきたらどうなるか、わかっているだろうな?」
「切り刻まれるな。おまえの得物で」
「わかっているのなら……」
「でも、抵抗されるだけ燃えるんだよなー」
男って奴は、などと言いうんうんと頷いている青い男――――ランサーはまたもや相方――――アーチャーに蹴りを喰らわせられそうになって。
「っと!」
素早く、身をかわしていた。
「あ、こら、避けるな!」
「無茶言うなって。……で? 切り刻まれるのか、オレ?」
片足と片腕を両方掴まれ、ベッドに身を投げ出されるアーチャー。ぼふっと彼の大柄な体を受け止めるベッド、今回仕留めたターゲットにかけられていた賞金はかなりの額だった、から。
“な、ここ泊まってもいいんじゃねえの”
全体的にスケルトン、けれど外からは見えない、なんて。
非常識な部屋を勝手に選ばれていた。
「…………」
「そう睨むなって。喰っちまいたくなる」
「……切り刻まれたいか。それとも君の得物で」
「腹を抉られたいかって? 今日のターゲットみたいに?」
「どちらか選ばせてやる。どちらがいい?」
「どちらも勘弁」
にーっこり、と年甲斐もなく笑ってランサーはくしゃりとアーチャーの前髪を乱す。
「な。おまえの血を浴びた姿、興奮すんだけど」
「なら、君の血で」
「だからそいつは勘弁」
この身勝手め!とアーチャーは身をくねらせる。ランサーは打って変わった真面目な顔で、
「サービス?」
「誰がだ!」
「いやよ、そんな感じに体くねくねされたら」
「暴れているのだ、わからんか!」
「わかんねぇ」
な、とつぶやいてランサーは身を屈めた。
「ん、…………ッ」
唇を奪われたアーチャーは息を詰まらせる。…………、とじたばた跳ね上がる足がベッドを叩く音。つ、と、唇と唇が銀糸を引いて。
「は、戦った後は、興奮すんな、やっぱ」
「…………ッ」
胸板を喘がせるアーチャーの顎に、そっと白い指先が触れて。
彼はまた、唇を奪われた。



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