「マシュマロホイップ……」

そんなことを、かつての英雄は言った。
士郎は聞かないふりをした。
「君な、頭の悪い発言はほどほどに……」
「だってよ、そんな感じなんだぜ!? ほれ。ほれ、ほれ、ほれほれほれ」
「ん、っ……、こら、やめんか! そう乱暴にするものではない!」
乱暴ってなんですか?
そして目の前でいちゃついてるおんなのひとたちはなんなんですか?いや、確かにうちは女子寮状態ですが目の前の人たちは違います。違うはずです、違うったら!
セイバー。遠坂凛。間桐桜。ライダーときどきイリヤスフィール&タイガー。
それが我が寮……家の女子フルメンバー。年齢制限については言わないでおく。特にタイガー。
だから目の前にそれ以外の女の子がいる現実はおかしいのだ。夢か?そうか、夢か。ははは、ちょっと自分をどうかなー、と思うところとかあったりなかったりするが、夢なら仕方ない。だって夢ならなんでもありだからなっ!
「おい坊主。現実逃避してねえでおまえも触ってみろよ。いつもは絶対に許さねえんだがな、特別だ」
「触らない! 絶対に触らない! だってこれは夢だし夢には触れないものだから!」
「おいランサー。小僧に私の胸部を触らせるとは何事だ。君には失望したよ、よりにもよってそんな……」
「いいじゃねえか、男だったら胸のひとつやふたつ! でもおまえがそう言うならな……」
目の前の女の子ふたりの間で話は立ち消えになったようです。
士郎があーよかったナーと安心していると、
「代わりにオレの胸を揉め坊主!」
「絶対に嫌だああああああああ!」


というわけで。
毎度のごとく、ランサーさんとアーチャーさんが女の子になりました。
「だから悪い魔女とかちっさい英雄王とかには気をつけなさいってあれほど」
「いやわかってるって。わかってるって嬢ちゃん。でも問題はそうじゃないんだわ」
「なに、言い訳? それとも泣き落としかしら?」
「ん」
たゆん、と胸を揺らしてランサーが指差した先には。
「…………」
三時のお茶とお茶菓子を用意していた間桐桜さんがきょとんとした顔で自分を指す爪先を見て。
「……あは、ごめんなさい、つい呑んじゃいました☆」
「黒化の他に女体化までできるのあんたって!?」
便利すぎるわよ!すこぶるね!
キイキイ怒る姉に困ったように頬に手を当て微笑みつつも桜の顔は上気してなんだかとろけている。目線はランサーとアーチャーへ。
「前も思ったんですけどランサーさんは格好よくて、アーチャーさんは可愛くていいなあ……いいですよね……」
お似合いのふたりです、と百合園の主のようにとろける桜。咲き乱れるは大輪の百合。
「あの、おふたりとも、ちょっと触らせてもらってもいいですか?」
「ちょ、桜、なにを触る気なのよ!?」
「おー。いいぞ嬢ちゃん、触ると言わず揉め揉め」
「あんたは状況を悪化させるんじゃないの!」
「桜……私はその……触る、というのはちょっと……」
「ああ……イメージ通りです、豪快なお姉さまランサーさんに貞淑なロリっこアーチャーさん……うふふ、ここはアヴァロン、わたしの、わたしだけのアヴァロン……」
「耳障りのいい言葉でごまかすんじゃないっ!」
と。
すったもんだが遠坂姉妹とランサー&アーチャーの間で行われたが、士郎はその間ぶるぶると震えて自分の世界にゴーゴーしていた。
こっちもある意味アヴァロン状態。わかりやすく言うと引きこもりだ。
「柔らかい……柔らかいですランサーさん! 大きいですが大きすぎることなくっ!」
「おー、そうかそうか」
パライソ!パライソ!
もういつ死んでもいい、でもお迎えが来たら全力で追い返すっていうか殴っ血KILLゾ☆な桜さんでした、まる。


「はあ……」
自室に戻り襖を閉めたアーチャーは、深々と長いため息をついた。
「なんだ、随分と疲れた顔だな? アーチャーよ」
「そう見えるかね。……疲れているからな」
はふう。
二度目のため息をついて、アーチャーは、す、と床に正座する。そして、
「桜だが……彼女がああいう趣味だとは……いや、知ってはいたがあそこまでとは知らなかったよ」
だったらしい。
磨耗したからだとかそんなんじゃない、アーチャーは単にエミヤシロウである時点で彼女の本質を計りきれなかっただけだった。言うのなら、今明かされる真実!ばばーん!
とか、そんなんで。
はふうと三度目のため息をついたアーチャーに目をやり、首をわずかに傾けてみせるとランサーは少し離れた隣に座った。
「疲れたか? 悪乗りしちまって悪かったな」
アーチャーはだいぶ上にあるランサーの顔を見やる。そうして黙ると、首を左右に振った。
「……いや。そういうより、は」
「ん?」
そういうよりは?
さらに首を傾げてランサーが問うと、アーチャーはそっと頬を赤く染めた。
それから。
「いくら桜といえど、あまり君に触れてほしくないと思うのは……私のわがままだな」
「…………」
さんてんりーだがいっぱい。
それに似合う沈黙をランサーは醸しだして。
「うわっ!?」
「そうかそうか、おまえもオレと同じ気持ちだよなやっぱり! んー、わかったわかった。これからは嬢ちゃんに触らせるのは最低限にして、おまえにだけ触らせるから大丈夫だぜ!」
「!? いや、なんの話を!? というか、苦し……っ」
「そんでオレにもおまえのこと触らせろな! ていうかおまえちっちぇのに、どうして胸はこんなに……」
「わーっ! わーっ、わーっ、わーっ! 言うな喋るな黙れっ、それはきっと元の体のときの胸筋が、むぐぐ」
「なるほど、おまえは男のときからボインと!」


「ボインとか言うな―――――っ!!」


いうなー、いうなー、いうなー。
響き渡った絶叫に、部屋の隅で体育座りをしていた士郎はびくりと大きく震えたといいます。


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