あなたは彼のことをどう思いますか?
「ええ、とても素敵な人ですとも。その脆い部分を切開して中を見てみたい……あら、いやだ、わたしったらつい本音が。ええ、ええ、とても高く評価していますのよ、だってあんな美味しそうな方はめったに見ませんもの。あなた知っていて? ……知らないの、そう、少し残念。もし見つけたら教えてくださると嬉しいわ。ただ、あの方ほど美味しそうな方は、本当にめったに見られないでしょうけど」
「……どう、とあらためて問われますと少々難しいですね。わたしは誰かのことを評価するのは得意ではありませんから。ただサクラやリン、イリヤスフィールには好かれているようですね。彼にとっては彼女たちは天敵なのだと聞きますが。可愛らしいものが苦手なのでしょうか? それにしては、小さきものを抱えている姿はよく見ますけども。たとえば猫などですね」
「お兄さんのことですか? うーん、まだ深くは知らない。ってところですね。大人のボクもフェイカー、だとか呼んで嫌ってたみたいですし。いや、ボクは嫌いじゃないですよ、あのひとのこと。可愛いですよね、なんて言ったら怒られちゃうかな? でも由紀香に近い感じもするんです、こう、つい助けてあげたくなる、みたいな? あはは、これほんとに内緒ですよ? 嫌われちゃうの、いやですもん」
「ランサーの知人ですね。詳細は何も……私と来たら本当に何もわからないことばっかりで、自分でも呆れてしまいます。でもランサーには言われたことがあるんですよ、彼と私はちょっと似てる、だなんて。特に不器用なところがなんて、失礼しちゃいますよね。まあ、そう言われても私からは言い返せないんですけれども。……本当に、迷惑をかけてばかりです、皆さんには」
「魔女に弄ばれた哀れなひとりかな。私自身もあやつのことは気に入っているが、いやはや。災難に遭いやすい性質だと言えるだろうな。不幸体質というのか何というか。さすが幸運度が最低のことはある――――何? それくらいは知っているとも、何しろあやつは魔女のお気に入りだ。同じ者の下に一時でも仕えた者として、必要最低限のことは知っていないと、無礼であろう?」
好きか嫌いで言うのなら?
「好きです。もちろん、恋愛的感情ではありませんが……? どうしてそこで、残念そうな顔をするのかしら。何も好き嫌いがすべて、恋愛に基づくことでなくともいいはずでしょう? わたしはそう思っていますし、神もきっとそう思っているはずです、ええ」
「…………また、難しいことを。わたしは誰かを好きや嫌いで区別することも苦手でして。ああ、そうですね。血の味で言うのならば、おそらくは好きの部類に入るのではないでしょうか。何せ過去の彼の血はとても美味でした。ですから、きっと彼もそうなのでしょう。ふふ、そうですね。いつかこっそりと、彼にお願いしてみるとしましょうか?」
「好きですよ。ボクは大抵の人が好きですから。……ってひどいなあ、どうでもいいってことじゃありません。王としてボクはすべての民を愛してるんです。まあ、ちょっとは贔屓も入ってますけどね? 大人のボクはどうかは知りませんけど、ボクはお兄さんのこと結構、好きだったりするんです」
「……? 好きか嫌いか、ですか? すみません、質問の意味がちょっとわからなくて……ああ、そうですね、ランサーは好きだと言っていました。男同士? そんなことは英霊同士ではさほど関係のないことでしょう、現世では何かと不便かもしれませんが。それで、ええと、私自身のこと、ですか……。すみません、やはり難しいです。今の私では、判断しかねることですね」
「ははは! またこれは面白いことを聞く、好いているかいないか、と? それは私にたずねているのだろうなあ、何しろ私の他には誰もいない! そうだな、とても面白い者だと思う。どちらかといえば、好いているのだろうな。ただあやつにも意中の相手がいて、ならば私がとやかく言うことでもない。話はこれで終わりだ、さあ夜も更けた。足元がおぼつかなくなるうちに家へと帰るがいい」
最後にひとことずつどうぞ。
「まるでそうね、砂細工のよう。儚く崩れてしまいそうで見ているとぞくぞくするわ」「君の瞳で見られるとぞくぞくする、と言われたことは覚えていますよ」「ああ、そうですね、ボクも同じことを言われたことがある気がします」「……私は、危なっかしくて、他人に思えない、と彼に」「笑ってくれと言ったのに、渋面を作られたな! はは、私もつくづく嫌われたものだ」
五人の意見は似通っているようでばらばらで、ばらばらなようで似通っています。それが彼を表す形となって、今日も彼を紡いでいくのでしょう。
ああ、以前言いましたね。今度は彼にひとこともらう、と。しかし残念、彼はするりと逃げてしまって捕まらずじまい。まったく本当に逃げるのが得意な方です。
それでは、またいつか。いつの日か、彼から何か言葉をもらえるとそう、願いつつ今回はさようなら。
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