英雄王が持ってる赤いキャンディ青いキャンディ知ってるかい?
「……呆れて声も出んわ、このたわけが!」
そう言い募る声はいつもより大分高い。ランサーはそれが変でかわいいな、と思いつつ、膝の上の小さな体を抱きしめた。
「出てんじゃねえかよ」
「〜――――ッ、そういう意味で言ったのではないとわかっているだろうが!」
わかっているのであるが。
「そんな生意気なガキにはおしおきしちまうぞ?」
「、おしおきとは一体何を……うわあああ!」
そんなサーヴァントふたりを、衛宮士郎と遠坂凛は物陰から見つめている。関わりたくないけど気になる、なんて感じで。
年若き少年と少女であるが故に仕方ない。
「何やってんだあいつら……」
「ほんとよね……わたしのアーチャーに何してくれてんのかしら」
ぼそりとつぶやく。ツーと言えばカー。怪しい道具と言えば英雄王ことギルガメッシュ。これ、割と世界の摂理である。
あぐらをかいてその上に小さくなってしまったアーチャーを乗せたランサーは、覗いているふたりに気づいているのかいないのか、実にマイペースにアーチャーをかわいがっている。さて、何故アーチャーが小さくなってしまったか?というと。
前述の通り、英雄王の怪しい道具のせいである。
「貴様の薦めるものを簡単に口にした私が愚かだった……!」
「おら、貴様とか言ってんじゃねえぞ年上のおにーさん相手に。いたずらすんぞ」
「先程おしおきとやらをしたではないか!?」
「おしおきといたずらは別ですぅ」
「なんだその口調は!」
ほんと何なんだ、という。
ランサー、ノリノリすぎである。ぶっちぎりマイペースでもある。ちょっと痛い。
とか言うとおしおきやらいたずらをされかねないが、その実ランサーのおしおきやらいたずらやらのターゲットはアーチャーのみなので、その心配はないのだった。
「あー、ちっちぇー。かわいー。かるーい」
「その頭の悪そうな喋り方をやめんか、うつけが!」
「うつけで結構。かわいいものはかわいいからしょうがない」
「意味がわからん!」
遠坂凛がぼそりとつぶやいた。
「ほんと意味がわからないわ」
けどあのアーチャーはかわいいかも……と言いかけてはっと我に返る。優雅であれ優雅であれ優雅であれ!とは彼女の魔法の呪文。
「髪の毛ふわっふわ。いや、さらっさら、か?」
「どっちでもいいわ!」
「よくありませんー」
「…………ッ」
ランサーフルスロットル。別に彼は幼児性愛者ではないはずだが、はてさて。
むしろかわいいものが好きなのはアーチャーの方のはずだったが?猫とか犬とか。動物類が特に。
「高い高いとかしてほしいか?」
「天井まで放り投げられそうなので勘弁してほしいのだがね……!」
「そんなヘマはしねえよ」
キラッ。
ここで男前スマイルを見せられても、という話だ。別に惚れやしないし!とかツンデレってみるアーチャーだった。
けれど彼はもう惚れているのだった。既に。
でもこんな姿を見せられては百年の恋も冷めるかもというところだったが……。
「ほーらアーチャー、ちゅー」
「誰がするか!」
「オレがする」
「やめんかー!」
じたばたじたばた暴れるアーチャー。その頬にキスするランサーに、やや引き気味の衛宮士郎。
「遠坂……もう……行かないか? これ以上いても何も……」
「何言ってるのよ! これ以上あの駄犬の狼藉を許せると思う?」
「……え、もしかして」
「乗り込むわよ士郎!」
「やめてあげてー!!」
それはあまりにも痛々しいから!と叫ぶ衛宮士郎だったが、遠坂凛はおかまいなしに突っ込んでいくのだった。
そうして遠坂凛とランサーの間でちっちゃいアーチャー争奪戦が行われるのは当然の話だった。
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