※この主人公の名前は男主は真壁海之(まかべみゆき)、女主は真壁七海(まかべななみ)と言いますが小話を読む際に全く知識としては必要ありません。
 あしからず。
※また、Fate/EXTRA materialのネタバレを多大に含みます。読んでいらっしゃらない方はリターン推奨。

■好悪
「ほら、マスター」
ぱあああああ。
「なんで? なんでアーチャー、俺の好物があんみつだって知ってたの?」
そこにあるは手作りのあんみつ。チェリーもきちんと乗っている。ぎゅうひだってきっと手作り。
「私がおまえのことをわからないとでも?」
ぶんぶんぶん、と首を左右に振って。
「――――よな」
感動に、声を打ち震わせて。
「知ってる、よな」
にっこり、と開け放つような笑顔で俺は微笑んだ。だってアーチャーはアーチャーだ。俺の大切なサーヴァント。それなら、アーチャーだって。
「ほら、早く食べてしまえ。おっと、とは言っても急いで食べろという意味ではないぞ? 鮮度が落ちるから、早く食べろという意味で」
「うん、うんっ」
今度は首を縦に振った。そしてスプーンを手に取って――――。
「アーチャー!」
ガラッ、と。
マイルームに響いた音に、食べようとする動作を止められた。
「……七海?」
そこにいたのはもうひとりの俺、だった。ぜーはーぜーはーと肩を喘がせ、どうやら必死で駆けつけた様子。
「ずる、い」
「え?」
「わたしにも!」
「え?」
ぴったりとハモる俺とアーチャーの声。
「海之にだけ好きなもの作るなんてずるいよ! わたしにも!」
ギブミー、と胸元に手を置いて言う七海。えーと、七海の好きなものと言えば。
「飴、だったな」
「うんっ」
「え、ちょ、なんで把握して」
「彼女も私のマスターだからな」
「というわけで!」
飴ちゃんプリーズ!と胸をばしばし叩く七海に、アーチャーは少し困った顔をした。
「しかし、飴……となると。少し時間がかかるが、いいかな?」
「作れるの!?」
そりゃ、驚いた。飴って作れるもんなんだ……。
「アーチャー手作りの飴が食べられるんならいつまでも待つ!」
雄々しい様子で、ぐっ!とこぶしを握った七海の前で、アーチャーは首をかしげて材料は、だとかキッチンを、だとか言っていた。の、だが。
「…………」
「アーチャー?」
「いや。私からは遠慮させてもらおう。英雄王、だったか? 彼辺りにもらってくるといい。ほら、駆け足」
「え……ええええ!?」
なんで!?アーチャーなんで!?とアーチャーに駆け寄って腕を掴み、地団駄を踏む七海。スプーンを持ったままの俺も唖然としていた。アーチャーが……マスターである七海を拒んだ?
「所詮私は」
アーチャーは、息を溜め。
「……君が嫌いな、武器自慢の話を長々とするサーヴァントだ。済まなかったな」
――――あ。
「え、違う、違うんだって、あれは違うの、アーチャー!」
「本当に済まなかった。さぞかし苦痛だったことだろう」
あーあ。
出来立てのあんみつをぱくつきながら、俺は必死に自虐モードのアーチャーに縋り付く七海を見ていたのだった。乙。

■身長
「あと……17センチ……ッ!!」
そして出来れば体重も!!
ガッツポーズを取った俺の傍に、アーチャーが近付いてきて。
「? あと17センチ、とは?」
「ヒャッ」
「? マスター?」
「な、なななななんでもない!」
「そ、そんなに声を震わせて何でもないということはないだろう! どこか体調でも悪いのか? とりあえず熱を測るから、額を……」
「その格好で屈まないでェ!」
「?」
胸元丸見えです、身長187センチのアーチャーさん。
そしていつかはさようならしたい、身長170センチの俺。

■飽きた
「あ〜ああ、飽きたなあ〜」
チラッチラッ。
「…………?」
「全くもって飽きたなあ〜。正直きっついなあ〜」
チラッチラッ。
「…………?」
「麺は喉に絡み付くようだし、紅しょうがは刺激的だし……あ〜あ、正直毎日焼きそばパンはきっつ」
「……わかった。弁当でも作ろう」
「アーチャー大好き!」

■ナマ
「アーチャーの生乳ィィィィ!!」
「ヒャッホオオオオ!!」
「こ、これはさすがに、いかんのではないかと思うのだが」
「全然! 全然大丈夫! むしろ行こう! このままで行こう!」
「うんうん! むしろエネミーもアーチャー生乳の魅力で完☆殺! みたいな!」
「生乳ヒャッホオオオオ!!」
「イェ――――イ!!」
「いや、その、これでは、戦う時も心許ないというか、」
「だから大丈夫! その姿を見た瞬間、エネミーも昇天するから!」
「恥ずかしいなら手ブラする? してあげようか!?」
「さすがに女子がその発言はやめなさい! “てへぺろ”などと可愛らしい顔をしても駄目だぞ、あっ、こら、あっ!」

■コスプレ
「今度はこれ着てみてくれないか!」
「マスター、その、あの、」
「執事服あざてええええ!!」
「マスター! いや、七海! 女性がそのような言葉遣いはやめなさい!」
「しかも眼鏡を装備することによって攻撃力は大幅アップ例えるならば九割増、いや、むしろ十割だアーチャーの魅力は眼鏡で完成されるそれはわたしがいっちばんよく知っている眼鏡マイスターのわたしならばアーチャープラス眼鏡の魅力をアンデルセン並みに綴って夏冬の祭典で薄いのに厚い本を出しソリッドブックみたいに! ソリッドブックみたいに! とBBに言わせて開始三十分経たずに完売もやむことなし」
「いや、その、マスター? 夏冬の祭典とは? ソリッドブックとは何のことだ?」
「大丈夫……今夜は……生やしてきてるから……」
「いや! いやいやいや! “今夜……家にはお泊りだって言ってあるから……”のような感じでそのようなことを言うのはやめてもらおう!」
「わたしのエクスカリバー・イマージュが今! 輝く時!」
「ああ、駄目だなこれは。海之、済まないが止めてく」
「アーチャーを貫くのは俺のカラドボルグだぞ!!」
「駄目だった。何もかも。そして何故おまえは学ランと赤シャツを持っているのか」
「アーチャーと生徒プレイしたいなって思って! 俺が後輩でアーチャーがせんぱ」
「いやいやいや、それは無理があるだろう」
「無理も通せば押し通る!!」
「いやいやいやいや」
「さあ! クローゼットに突っ込んだぞ! これで着替えられる!」
「いやいやいやいや!」
「ちなみにアーチャーの設定は“ちょっと不良な三年生の先輩、でも本当は優しいの☆”」
「どうしておまえがそこで乙女になる?」
「学ランの前ボタンは開けて着るんだぞ」
「真顔が怖いぞ、マスター」

■学生服プレイ
「ハハハハハ! そんなところに我参上!」
「何ッ!? 旧制服コスのAUO……だと!?」
「彼の呼び方はそれでいいのか……?」
「よきにはからえ雑種。その呼び方、我も割と気に入っている」
「あ……そうなんだ……へえ……」
「フェイカーと学生服プレイをするのはこの我であるぞ! 雑種共は失せておれ!」
「な、何ィッ!?」
「何だと……!?」
「だから七海。君は女性なのだから無駄に雄々しい呻きを上げるのはやめなさい」
「フェイカーよ」
「あ……うん、今忙しいので、少々待ってくれるかな、英雄王」
「だが断る。どうだ……この衣装と書いてドレス」
「それでいいのか、その変換」
「似合うであろう?」
「あ……うん?」
「素直な気持ちを口にして良いのだぞ? すなわち……賛美せよ! 賛美せよ!」
「ああ、うん……うん……」
「良し、認めたな。ならば盗んだヴィマーナで飛び回ることにするぞ!」
「盗んだのか!? そして豊!?」
「いや、気分で言ってみただけだ。きちんと我のものよ、安心せよ」
「気分とかな、君な……ああ、もういい。ひとしきり暴れて満足しただろう? そろそろ自らのマイルームへ……」
「だが断る。さあ! ザギンで」
「だが断る!!」

■はいてない
「ラニは制服の時もはいてないって聞いたんだけどさ」
「はい、はいてませんが、何か?」
「認めた。この子認めた」
「あのさ、ラニ。……サーチ出来ない?」
「サーチ。と、言いますと?」
「クール&ワイルドの時のアーチャーがはいてないかどう」
「ちょっと待ちたまえマスター!」
「あ、それ俺も興味ある!」
「マスタ――――ッ!!」
「わたしも興味がありますね。……でしたら、サクラメントをいただければすぐにでも」
「いくら欲しい?」
「言い値を出そう」
「駄目だこのマスターたち。早く何とかしないと」

■緑茶
「だからなの?」
「は?」
唐突に何なんですかオタク、と再生怪人こと緑茶は返してきた。だって。
「いじけた女が嫌いなんだろ?」
だからアーチャーが嫌いなんだろ、と聞けば、後ろからスパンと頭を叩かれた。思わず涙目で振り返る。
「アーチャーが俺のことぶったぁ」
「ぶったのではない! 殴ったのだ!」
「あー、そうですねェ。確かにいじけた女もどきは嫌いですわ」
「君、私に喧嘩を売っているんだな? そうなんだな?」
「買ってくださいよ、高く。何しろ生活に困ってましてねェ。カッツカツなんですわ」

■めるとりりす
「きゃー、可愛い! 何なのかしらこの可愛さ!? 彼の可愛さと魅力をフルに再現しきってるじゃない! 素人の集まりだなんて侮っていたけど、モデラーも見直さないとならないわね。使用用、保存用、布教用と三体買って、そうね、……添い寝、用とか……買っても、いいかしら……」
「…………」
「…………」
「アーチャー、アーチャー、わたしのアーチャー……わたしの、こい、びと……やだ! 誰も聞いてなかったわよね!? 聞いてたら殺さないと」
「聞いてた」
「えっ!?」
「済まない、私も聞いていた」
「やだ! 他でもないアーチャーに聞かれていただなんて! これはお仕置きが必要ね! わたしの新開発ウイルスで身も心もとろとろに蕩かしてあげる! さあ、逃げてみなさいアーチャー!」
「顔が真っ赤なんだけど」
「ううううう、うるさいわねっ!」


ありがとうございました。



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