「わからぬな、雑種。そこなフェイカーを我に捧げようというのが何故解せん?」
「わかるか!」
ランサーが吼えた。当然である。
昼下がりの衛宮邸、軽いティータイムなど営んでいたところにやってきたのが英雄王。足をちゃぶ台に乗せて何を言い放つかと思えばこれである。がたん、と、思わず湯呑みを倒して呆然としているアーチャーに英雄王ことギルガメッシュが指を突きつける。
「フェイカーよ! 貴様もこの狗のものになるより我のものになることを望むだろう?」
「いやだが断る」
速攻だった。ぽかん、とその場に空白が開く。
む?とギルガメッシュは首をかしげた。
「何故だ」
「生理的に無理だからだろ」
「何だと!?」
「そこまでは言っていない!」
思わずフォローに回ってしまうアーチャーだった。
「とにかくだな、アーチャーはオレのものなんだ。だからおまえに渡すわけにゃいかねえ」
「それでも我はフェイカーを求める」
「贋作贋作言っといて何なんだ、その執着は!」
「嫌よ嫌よも好きの内と言うではないか」
「意味が違う!」
ふん、と鼻から息を吐いてギルガメッシュは。
「どうしても我のものにはなりたくないと申すか」
「当たり前だ」
「我のものにはしないと言うのか」
「当然だろ」
「なら、仕方ないな」
諦めて帰ってくれるか――――槍弓がそう思った時だ。


パチン。


指を鳴らす音が鳴ったかと思えば、ランサーの両腕、アーチャーの両足を鎖がそれぞれ拘束していた。
「な――――」
「んだと!?」
宙にぶらりと下げられた格好になったランサーが驚愕の声を上げる。がくんと足の支えを失わされたアーチャーはかろうじて畳に膝をつく。
「これで我が思うがままになったな」
「何を考えてんだおまえは!?」
「何。貴様らの自由を奪い我が自由とするというだけよ」
にやにやと厭らしい顔で笑うギルガメッシュ。そしてアーチャーの背後に回ると一気に、
「!?」
「何だ、色気のない下着を履いておるな。もう少し身だしなみに気を使ったらどうだ?」
「何を言っている、貴様……っ!」
「ギルガメッシュ、てめえっ!」
目の前で恋人であるアーチャーに無体を働かれ、声を上げるランサー。だが両腕を鎖によって拘束されているために身動きが取れない。どんなに解放されようとしてがちゃがちゃと鎖を揺らしても、ただその音が虚しく響くだけだ。
「おお、そうだ」
アーチャーの下肢から剥ぎ取ったスラックスを遠くに放り投げたギルガメッシュは、悔しそうなランサーを見て楽しそうに。
「フェイカーよ。その舌と口で狗に奉仕してやるが良い。そこならば自由になるであろう?」
「なっ!」
驚きの声はランサーとアーチャーのもの。ギルガメッシュだけがニヤニヤと笑っている。
ぐい、とギルガメッシュはアーチャーの後頭部を押し、ランサーの下半身に押し付けようとする。
「やっ……めっ……!」
「ギルガメッシュ、てめえ……っ!」
「おお、そうかそうか。下肢を緩めてやらねば口淫することも出来んな?」
言ってギルガメッシュはランサーの下肢に手を伸ばす。そうして革パンのジッパーを引き下ろすと、まだ猛っていないランサー自身をそこから取り出した。
「んっ……!」
まだ芯を持っていないランサー自身を無理やりに口に含まされ、アーチャーが呻く。ぬるりと唾液の力を借りて招き入れさせられてしまったそれに、自然に舌が絡んだ。
「ん……っ、んんふ……っ、う……」
「アー、チャー……」
止めようとしたい、けれど出来ない。鎖は動きを封じて、ランサーはギルガメッシュの蛮行を許すことしか出来なかった。
「んく……」
唾液でいっぱいになったのか、ごくりとやけに生々しい音を立ててアーチャーが喉を鳴らす。それを見て、ランサーの喉もごくりと鳴った。
「おいおい、我を置いて楽しげではないか。……ほら」
アーチャーの喉仏をなぞるようにして伝った唾液を掬い取り、ギルガメッシュはアーチャーの下着に手をかける。
「んんう――――!」
その途端びくりと弓のように仰け反った背筋に噛み付いて、ギルガメッシュは残ったアーチャーの下着を引き下ろした。
「――――!!」
外気にさらされて声なき声を上げるアーチャー。その臀部をアーチャー自身の唾液に濡れたギルガメッシュの指先が辿っていく。ぬめぬめと、まるで軟体動物であるかのように。
その度にびくびくとアーチャーの背がしなり、最奥近くになった時にはさながら生娘のように敏感に震えた。
「ほう……この反応、初めてであるのか? 狗と済ませたものと思っていたが……見込み違いであったようだな」
「っふ、あ、あ!」
「その割には奥まで随分としなやかに飲み込んでいくな……? 生娘か娼婦か……判別がつかぬ」
そこで、ギルガメッシュはぺろりと舌なめずりをすると。


「何事も、試してみなければわからぬということか」


ずるり、と音を立てて指が引き抜かれた。
そして。
「あっ……あっ、あっ、あぁ――――!」
最初から手加減なしに押し入られ、アーチャーの口から叫び声を上げさせる。その際に口に含んでいたランサー自身を放り出してしまい、ぽたぽたと畳に唾液を垂れ流させる。
「この締め付け……生娘のようでいて、しかしうねり引き込むような感触……娼婦のそれだ。はは! フェイカーらしい矛盾ではないか! 良いぞ良いぞ、もっと我を楽しませよ!」
「あっ、ゃ、っはあ――――うぁ、だ、めだ……っ」
「そのようなことを言って……男を誘う手管さえも身につけておるのか、恐ろしい男よ。いや……“女”か?」
音を立てて抽挿され、喘ぐアーチャーに外の声は聞こえていない。外の光景、すらも届かない。


「アーチャー……」


そこで、声が響いた。
「!?」
ぐい、と熱を喉の奥まで飲み込まされ、アーチャーは喘ぐ。
自由にならない手の代わりに腰を使われ熱を奥まで入れさせられて、アーチャーはランサーの熱に必死に舌を這わせていた。
「んっ……んっ、ん、んぅ……――――」
ぐちゅぐちゅと前から後ろから響く粘着質な水音。ふたりの男に犯されながら、アーチャーはただただ翻弄されていた。
「んっ、んんんっ、くぅっ、ぅふ……っ」
「いいぞフェイカー! もっと喘ぎ、悶え、我を楽しませよ!」
「てめえが……っ、こいつを見るんじゃねえよ……っ!」
ぽたぽたと落ちていく水。体液。それは混じりあってとろけていく。
ふたつの白い足、褐色のひとつの足の上へ玉のように落ちて。
「ぁ――――あぁ、あ……!」
びくんびくん、とアーチャーの体が跳ねると同時に、口内へはランサーの白濁が注ぎ込まれ、体の奥にはギルガメッシュの白濁が注ぎ込まれたのだった。


無言でそっぽを向いているアーチャーに、ランサーは土下座、ギルガメッシュは堂々と前を向いていた。
「君たちとはしばらく口をききたくない」
「そんな、許してくれよアーチャー!」
「悦かったのであろう? 何を照れる必要がある」
「照れてなどいない!」
本当の本心からアーチャーは照れてなどいなかったので、ランサーとギルガメッシュはしばらく衛宮邸を出入り禁止となったそうだ。
結論。
無理矢理相手に行為を迫るのは、やめましょう。


back.