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間違っても純情だとかそんな奴じゃなかった。
「……っ、はあ……」
人のことをたらしだなんだと言うくせにてめえも女のあしらいが無意識に上手い。積極的に粉をかけるとかそういう類いじゃなかったが、相手どりゃリードを取るのは確実で。
―――――なんていうか。
そうだ、生まれついてのってのだな。
それが、いま。
「…………ら、ん、さ」
掴まれる服の裾。閉じられた目。眉間の、皺。
布越しに体を触られて、耳たぶを齧られて、名前を呼んで。汗ばんだ首筋を舐めると明らかに動揺したみてえに肩を揺らした。
この国では珍しい褐色の肌、ってのが。
赤い。
(……なんで)
数えりゃ軽く片手を越す疑問「なんで」。考える頭がまとまらねえ。

やめろ、とか。
言わねえんだもんなあ…………。

間違っても純情なんてもんじゃねえ。だが顔が熱くなって胸がやたらとどきどきする。
やることやってんのに。
やがて開かせるために胸元やら脇腹やらに触って。その、真っ最中だってのに。
色気も素っ気も洒落っ気もねえ黒い上下の隙間からのぞく肌に、手や指や歯や舌で。
だってのに、なんなんだよ。
恥ずかしいだろうが。
いろいろと予想外で卑怯だろうが馬鹿野郎。
「ん…………」
服の裾を掴む力が強くなる。生唾を飲む。
頼むから。
いますぐ、その反則的な面をやめてくれ。
冗談じゃねえ。
“そういうこと”に手馴れたふたりそろって顔真っ赤にして、恥ずかしがってるなんて笑い話にもなりゃしねえだろうがよ。

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