scene:01 
その気配は唐突に背後に現われた。いち、にい、さん。数えて三つ。
奇しくもクロトラケシスアポロトスと同じだ。いやそれはおいといて。
振り向けばそこに、
「姿が見えないと思えば」
「こんなところにいたわけ」
「それも―――――おふたりっきりで」
微笑を浮かべる三人の美少女。だがその全身から発せられる気はひどく禍々しい。
その気迫に圧されとりあえず言い訳をしようとして、自分たちの格好に気づいた。
「なっちょっうわっ!?」
せんせいこれはたいへんきけんです。あらためて自覚したことで耳まで真っ赤になって慌てて身を正す。もちろん同じくらいに真っ赤になったお相手の方もだ。
そのあいだも少女たちはにっこりと笑っていた。
ただ纏う気がとんでもなく物騒になっていくのが目に見えてわかった。
なんとかまともな格好にふたり直し、誤解を解こうと口を開く。
「あのな嬢ちゃんたち。どう思ってるかは知れねえが……それは勘違いだ。とにかく落ち着け。な?」
こっちも必死だ。いやいろいろと、ぶっちゃけて言えば肉体的にも精神的にもぎりぎりなのだから。
だが、
「わたしは落ち着いています。落ち着いていないのはあなたでは?」
いや、エクカリを構えて笑顔を浮かべるのはやめてください力任せ主義のそこの王様。
「そうよねえ? わたしたちなにも言ってないわよ。自爆するのやめたら?」
宝石両手に惜しげもなく持って笑顔を浮かべるのはやめてくださいわりと潔癖なそこのあかいあくまさま。
「姉さんたちの言うとおりです。というか実際問題目の前に現場突きつけられてそんな言葉になあんだって騙されるほどわたしたちおひとよしじゃないですよ」
……怖いです。黒いです。触手出てます。説明不要。
微笑む少女たちから後ずさり、てのひらをかざす。
声が上擦ってしまったのは、臆病だからなんかじゃない―――――!
「ま、待て。誤解だ。これは誤解だ……そもそもあんたらには坊主がいるだろ!?」
叫べば少女たちは微笑んだままで
「彼もまたシロウです」
「同じく」
「先輩は何人いても困りません」
いやそういう問題!?
“エミヤシロウ”を愛する三人の少女たちはにーっこり、それぞれが華のように笑って、
「覚悟はいいですね?」
「まあ答えは聞いてないけど」
「くすくすと笑って……ゴー……ゴー…………」

その、限りなく溢れる力で。

黄金の破壊の女王。
真紅の光速の女神。
桜色の禁断の女帝。
三人の運命の女神たちは、全力をもって裁きの鉄槌を下したのだった―――――。

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