だいいっかいー、アーチャー争奪戦チキチキ猛レースー。
気の抜けたアナウンスと共に金色の宇宙船が宙を走り抜ける。
それに乗ったのはかの英雄王と賞品のアーチャーだ。高笑いをかます英雄王、手足を縛られたアーチャー。
その後を待てよと駆け抜けるのは敏捷トップクラスの五次槍、四次槍、旧槍。
やっちゃえバーサーカーと声を上げるのはアインツベルンの令嬢で、虎とブルマが後を追う。
宝石剣を翻し駆け抜けるのは遠坂の令嬢、後ろをペガサスに乗って飛ぶのが五次騎嬢と間桐の令嬢。
衛宮の士郎が慌てて駆ければ、隣を言峰の士郎が並んで。
木の幹を飛んで言峰神父が追えば、小さな英雄王がツッタカターと駆けていく。
慎司くんは転ぶし、一成くんも転ぶし。
全然勝敗関係なく妻を抱いて走るのが葛木教諭で、腕の中で幸せそうなのが妻のメディア。
切れたスタートテープを回収する三人娘、電子の海から棘の足と巨大な鍵爪を持った少女がご挨拶。
センパイ!と白衣姿の少女が声を上げて、そっくりな黒衣の少女がセンパイッ、とはしゃぐ。
はいてないアトラス院はぼんやりと宙を見て、セーラー服のトオサカリンが忌々しげに駆け出した。
じゃんけんしねぇと雄々しく叫ぶのはマクレミッツ嬢、最弱のサーヴァントはケタケタと笑い。
ゴールで待つのはクール&ワイルドなアーチャーエクストラ、獣の姿勢のアーチャープリヤ。
さてさて勝敗はいかに。コードキャストを起動させ、名も無き少年/少女がニヤリと笑った。
「やっぱりワープ技とか持ってた方がいいよね!」
遥か彼方で聖剣使いふたり。虚空を睨んではそろった声で、
「エクス……」
「カリバー落ち、ダメ、絶対!」
悲鳴のような声でアーチャーはそんなことを言った。
ちきちきましーん、ちきちきましーん。
とりあえず、全員落ち着いてマシーンに乗れ。
「……大丈夫かね?」
転んだ者を介護して、アーチャーリリィは首を傾げた。
包帯を転がし、アーチャーオルタがぴょんぴょんと飛び跳ねる。
ちきちきましーん、ちきちきましーん。
とりあえず、おまえら落ち着いて正座しろ。
町は壊れて死人は出ず。
さてはともあれ第一回。
平和とも言えず、惨憺たる結果でもない。
かと言えど可と言えず、不可でもない。
結局中庸に落ち着いた猛レースの、勝者は一体誰なのか。
逃げたる者が、勝ちなのか。
価値は果たして、どこにあるのか。
「士郎、おかえり」
最終的に微笑んだのは、魔術師殺しと異名を取った男と、その愛すべき妻だった。
ちきちきましーん、ちきちきましーん。
マシーンに乗ってるのは英雄王だけだ。
「ふむ。乗り遅れたな、次は余が戦車を駆り出すか!」
「ばか! ばかばか、ばかぁ! 余計な魔力使うなあ!」
「クール! COOOOL! な、次は参加しようぜ旦那!」
「落ち着きなさいリュウノスケ。まずは申込書にサインを」
「この戦い我々の勝利だ!」
「はい、時臣師」
「桜ちゃんじゃないならいらない。凛ちゃんでもないんだろう? 葵さんなわけでもない」
「ソラウ! ソラウ!?」
「ランサー! ディルムッド!」
乗り遅れたのは、Zero勢で。
プリヤ世界はひとやすみ。
ちきちきましーん、ちきちきましーん。
さてさてお開き、また今度。開催の予定は未定です。
またのご来店をお待ちしております。
“皆様。出したゴミはお手数ですがお持ち帰りくださいますようお願いいたします。美しい町。美しい聖杯戦争のため、ご協力ください”
“くださいー”
“ください!”
聖杯の意思、ユスティーツアが小さな白黒聖杯たちとアナウンス。
ゴミを拾い出した参加者たち、マナーはきっちり守りましょう。
「……ところで、どこが聖杯戦争?」
「弓兵戦争だよなあ」
「ですよね」
ランサー三人がぽつりと零し、フラガラックの打ち損じや黒鍵の柄などを拾い集めていた。
美化清掃活動に、ご協力ありがとうございます。
またのご参加を、お待ちしております。
「さあ、家に帰ろう士郎! また、君の美味しいご飯が食べたい!」


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