突然ですが、アーチャーさんがちっちゃくなりました。
凛さんのうっかりでもキャスターの魔術でもギルガメッシュの道具でもありません。もちろんイリヤ&桜の白黒聖杯コンビのせいでもなく。
じゃあ原因は何だ、いつ戻るんだ、と辺りは一時騒然となりましたが、今はとりあえず落ち着いています。
――――まあ、落ち着いていると言っても前とは明らかに様子がおかしいんですけどね。


Case.1 ランサーさんの場合
ちっちゃくなってしまったアーチャーさん。外見と喋り方はそのままで身長体重などのデータがミニマムになってしまっただけなので、所謂幼士郎状態になったわけではありません。
そんなアーチャーさん改めアーチャーたんは、首をかしげてあざとい可愛さ(本人無自覚)でランサーさんに向かって尋ねます。
「かわいいは、せいぎか?」
その問いにデレッデレに萌え崩れた顔で、アーチャーたんを抱っこしたランサーさんは言いました。言い切りました。
「正義☆」
「このペド」
凛さんの突っ込みも今はランサーさんの耳には届いておりませんでしたとさ。


Case.2 主に女性陣の場合
ランサーさんから奪われて女性陣に囲まれたアーチャーたん。
原因究明というかつるし上げのために衛宮邸に呼ばれたキャスターが体温上昇を抑えるためにピコピコと忙しなく動くエルフ耳もそのままに口にします。
「普段は大きくて口うるさくて筋肉ダルマだけど、こうなってみると可愛いものねぇ」
「わたしのアーチャーなんだから当たり前でしょ」
同じくつるし上げのために呼ばれた凛さんがそんな浮かれ気分なキャスターに冷水をぶっかけるような勢いで言い放ちます。
ですがキャスターはどこ吹く風。
「あぁんもう、このまま連れ帰ってわたしと宗一郎様の子供にしたいわ、というかするわ!」
「わたしのアーチャーだって言ってるでしょ!?」
「わたしのシロウよ!」
甲高い声を上げて同じく以下略なイリヤが間に飛び込みました。ろりろりーんなお姉さまであるイリヤと同じくらいに小さくなってしまったアーチャーたんは、三人の間でむっすうと眉間に皺を寄せていました。訳:だれでもいいのではやくたすけたまえ。
けれどその願いは叶えられることはなく、結局戦利品であるアーチャーたんをゲットしていったのは何故だかセイバーさんだったのでした。
「ふふ、今のあなたはわたしの腕の中にすっぽり収まってしまいますね」
「むむう……」
※in 道場。


Case.3 ライダーさんの場合
じーっ。
廊下。
セイバーさんからようやく解放されて、てとてとと廊下を歩いていたアーチャーたんはばったりとライダーさんと出会いました。
皆様ご存知かと思いますが、ライダーさんは女性としますとかなりの長身である部類に入ります。
すこぶるミニマムになってしまったアーチャーたんは、そんなライダーさんをせいいっぱいの努力で背伸びして見上げ、「らいだー、わたしになにか?」と尋ねます。
ライダーさんは文庫本を片手にぽつんとつぶやくような声で一言、
「……わたしは、背の高い女ですか?」
ただ、それだけを言いました。
しばしふたりの間に無言の時が流れます。
やがてアーチャーたんがいいました。
「そうだな」
眼鏡の奥のライダーさんの目を見つめ、アーチャーたんは返します。
「だが、それがわるいということではない。らいだー、きみはたしかにじょせいとしてはちょうしんのぶるいにはいるとおもうが、なにもそれがみりょくてきでないというわけではないんだ。わたしはきみをじゅうぶんにみりょくてきなじょせいだとおもっているよ」
「…………!」
ライダーさんは四角い瞳孔を開いて少し、驚いたような声を上げました。
そして、まじまじとアーチャーたんの顔を見つめます。
アーチャーたんも自然と、ライダーさんの顔を見つめ返すような格好となりました。
今度は先程とはもう少し違った、長めな無言の時が流れまして。
「……ありがとうございます、アーチャー」
ふふ。
そんな表現が似合う、いつも彼女が見せるのとは異なった少女のような笑みをライダーさんは浮かべ。
「けれど、今のあなたもかわいらしくて魅力的だと、わたしは思いますよ?」
艶っぽい声でそっとそう、つぶやいてアーチャーたんの目を覗き込みました。
やはりアーチャーたんは元エロゲーの主人公ですので。
性根はこう、無意識にも女たらしなのでしょうね。
いくらちったくても。
喋りが全部ひらがなに聞こえる、呂律の回っていない舌ったらずであろうとも。
ええ、偉そうな喋り方でも舌ったらずなのです。
本人は普段の調子で漢字がたくさん入っている感じで喋っているのですが、周囲の面子には完全にオールひらがなに変換されています。
あと、関係ありませんが今のライダーさんとアーチャーたんの関係は、世に言うおねショタ(おねえさんとショタ)というやつでした。


その日以降、妙にライダーさんと仲が良くなったアーチャーたんの姿が衛宮邸で見られたと言います。
ランサーさんとセイバーさんはアーチャーたんをもう一度抱っこしたくても、本人がライダーさんのすぐ隣で壁に寄りかかって足を投げ出し文庫本を読んでいる姿を見せ付けられて、「ワンモア」と口に出来ずギリギリしたと言います。
士郎さんはとりあえず「なんでさ」とオチを担当したそうです。



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