「カフェオレが飲みたいの♪」
「おいやめろ」
「強いコーヒーもいいけど♪」
「おい」
「やさしいミルクも素敵なの♪」
「……おい」
「結局ランサーなら全部いい!」
「やっぱそうなりますよねえええ!」


なのであった。
強いコーヒー……ランサーオルタは宙を眺め。
やさしいミルク……ランサーリリィは微笑んでいる。
てめえらちょっとは突っ込め。オレひとりに任せんな。でもオレが突っ込みポジションですよねーですよねー!白黒つけないカフェオーレ♪ことのノーマルランサーはごりごりと磨耗し続けていた。磨耗はアーチャーの専売特許だというのに。あ。まあ、いや、何もアーチャーに押し付けようってんじゃないですよ、このめたくそな状況への突っ込みを。
だって時たま見せるあの笑顔が曇ったりしたら悲しいですし。槍弓運命共同体だというのに。
「ランサー……そんなに私のことを……!」
「いやおまえじゃねえよ!?」
「ランサーのカフェオレが飲みたい……」
「それ絶対違う意味だろ。そうだろなあ!?」
「飲みたいったら飲みたい!!」
「ここそんな主張するところか!?」
「ころしてでも  うばいとる」
「何を!?」
「ランサーのカフェオレ」
「キリッとした顔で言ってんじゃねえよ!」
明らかに違う。カフェオレ違う。もしカフェオレだったとしても性的な意味でのカフェオレだ!
いや、性的なカフェオレとか意味わかんないですけども。
「私の胃袋にはランサー専用スペースがあってな」
「えっ何それいみわかんない」
「上からでも下からでも存分に注ぎ込んでくれ!」
「逆セクハラ過ぎんだろてめえええ!」
きょろん?となにそれいみわかんない、と先程のランサーのような顔をするアーチャーオルタ。
だって、なんで?なんで注いでくれないの?
「私の胎は準備万端だというのに」
「何の準備? なあ何の準備?」
「ランサーのカフェオレを受け取って孕」
「だああああ!」
最早人間の発する言葉でもない。最速速度でびゅんと地を駆け、ランサーはアーチャーオルタの口を塞いだ。
「ん、んん?」
「…………ッ」
「ん、んー……」
「はっ!」
かと思えば慌てて離れる。アーチャーオルタの瞳がうっとり陶然と蕩けていたからだ。
「何だ。もっと塞いでくれないのか?」
「んな危ねえ目してる奴と関わりたくねえし!」
「凄く……」
「おいこらちょっと待て」
「苦しくて……悦かった……」
「だから待てって言ってんだろうが――――!!」
ビッ、とランサーの指がランサーオルタとランサーリリィを指す。
「欲望のはけ口なら! オレじゃなくともあいつらがいんだろ! な!?」
「ランサーは別腹」
「は……?」
「何人いても困らない、何なら三人がかりで注いでくれても」
「節操なさすぎだろうがてめえ!」
「何故?」
「こっちが何故? だよ!」
ランサーの頭にビジョンがちらつく。ランサーのゲイボルクに奉仕するアーチャーオルタ。その後ろではランサーオルタが、腰の砕けたアーチャーオルタの腰を抱えてランサーリリィがゆったりと頭を撫でる。
「はぁ……ランサーのカフェオレが飲みたい……」
「ねえから。オレのカフェオレとかねえから!」
そもそもオレ紅茶キャラですし!もしくはコーヒーな!と言った途端、アーチャーオルタの金色の目がきらんと輝き。
「ならミルクティーを!」
「それカフェオレだよなあ。紅茶のカフェオレ版だよなあ!?」
「苦いのでも私は一向に構わない!」
オレが構うんだよと。
返事をすれば、斜め上の返答が返ってくるであろうことを見越し、ランサーは口を噤んだ。さながら貝のように。



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