きらきら光る、夜空の星よ。
「綺麗だな、姉さんの髪は」
「ん? そう?」
「うん。星空のように輝いて」
イリヤの髪をブラシで梳きながら、アーチャーはにこりと笑う。
「でも、シロウの髪の色と同じ色だわ」
「だけどオレは姉さんみたいにさらさらな髪じゃないし」
「そう? ちょっと、手を止めて」
「?」
言われた通りにアーチャーがすれば、イリヤがくるりと振り返り。
「屈んで」
「ん、」
慌ててそうすれば、なでりと触られる。
「…………?」
「そうね、ちょっときしきししてるわ。けど、綺麗」
かわいい。
そう言っては、イリヤはアーチャーを甘やかす。
「かわいいわ、シロウ」
「ん……いや、その、姉さん」
「いや、なの?」
「あ。その、いやではなくて」
「じゃあ、なあに?」
くすくすと笑うイリヤ。むう、というような顔をアーチャーはして。
「少し。……照れくさいな」
「そうなの? でも、あなたわたしの弟でしょう? なら甘やかしてあげるから、甘えてしまいなさい」
「んっ……」
なでり、と撫でられて。
アーチャーが小さく声を上げる。
「どう? 気持ちいいかしら」
「うん……ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
にこりとイリヤは笑う。
「わたし、あなたに甘やかされるのも好きだけど同じくらい甘やかしたいわ」
ねえ、お願い。
「だからたくさん好きってして、させてね」
「うん……わかったよ、姉さん」
「おねえちゃん、って呼んでもいいのよ?」
「……それは」
「ふふっ。冗談だったら」
かわいいシロウ。
「シロウ。シロウ。シロウ。わたしのシロウ」
歌うように、浮かれるように、艶やかに華やかに微笑ましくイリヤが笑う。
それはまるで百合の花だ。
白く可憐に咲いては妖艶に咲き誇る。
愛らしく美しい。
それがイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
それが彼女だ。
きらきらと星のように髪を、瞳を、心を、声を輝かせ。
アーチャーを導く。
ああ。
「姉さん」
「なあに」
「好きだよ」
「ええ、わたしもあなたが好き」
愛しているわ。
「わたしのかわいい、弟」
シロウ。
「ずっと、一緒にいましょうね」
いられなかったんだもの、これまで。
「取り戻すために。一緒にいましょう」
ずっと。
「永遠とは言えなくても。出来る限りはいましょう」
わたしの弟。
「シロウ」
微笑んだイリヤは。星のようで、花のようだった。



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