さらさらとしていて触れていて気持ちいい。
そう言ってやればきっと奴は眉間に皺を寄せて「何を」とでも言いたげな顔をする。
サーヴァントでも汗をかく。褐色の肌に伝う透明のそれは舐めてみれば血や精のごとく甘い味がするのだろうかなどと思った。
太陽を見上げると夏の日差しに目が焼かれる。眩しい。
けれど、自分にとっては傍らの男の方が余程眩しい。
日差しに焼かれた目を細め、そちらへと視線を飛ばす。奴は花に草に水をやっていた。
ふと、笑う。
不可思議そうな目で、夏の日差しに焼き焦がされてしまったような鋼色の瞳で奴はこちらを見てくる。
おまえの手ずから水を受けられるのなら、きっと伸び伸びと育つだろう。
おまえの手は創る者の手だ。創り、携え、振るう。
ぞくぞくぞく――――。
不意に背筋を這い登っていったものを何だと思う。だが、次の瞬間すぐさま気付いた。


これは。
これは、欲だ。
闘争本能という名の欲だ。満たされたがっている。駄々をこねる子供のように欲しがる。


弾いて。
抉って。
撃って。
貫いて――――。


「ランサー?」
声がした。
それが耳に届いた途端飛びついて抱きしめて、耳元にささやいた。
「なあ――――」


今日は、暑いな。
唐突かつ当たり前のことを言った自分に奴はきょとんとして。
何を、と。
先程の妄想の中の台詞をその唇が発する前にくちづけた。


今日は、記録的な猛暑だ。



back.