■princesse de blank

 カミサマが世界を作ったのか世界がカミサマを作ったのか、人が人を作ったのか、昔々、足りないものを作った時代

 人々は同じ姿の人々でなく
 人々はカミサマが足りなくて神様をつくった
 神様にするためにいろんな生き物をつくった
 カミサマになるために、その生き物はがんばった
 その小さな娘も、望まれたカミサマになる為に


 出来上がったカミサマは優秀だった


 優秀なカミサマはみんなの役に立った?

 立ったけど、神様は正しすぎて、皆はだんだん困った。
 カミサマは優しすぎて、世界はだんだん困った。
 カミサマになった娘は正しすぎて、優しすぎて、まばゆすぎて、みんなが困った。
 作った神様が都合の悪いカミサマになったので、人々はカミサマを世界から放り出した。
 出て行けといわれてヘビのような小さな娘はタコのような髪で、レースのようなヒレの小さな手で顔を覆って泣きながら、どこへとも知れないどこかへ逃げ出した。
 カミサマだった娘を追って、彼女だけが自分達をみてくれたという、何だかよく分からない生き物たちが、彼女を追いかけて、暗闇の沼へ歩いていった。その異形の行列は何日も何日も──人によれば7度の夜と5度の昼を繰り返す間──人々の目の端に移り、その間世界は灰色の雲に覆われ、太陽の瞳から忌まわしいものを隠すかのように振舞った。
 どこへいったのか知らないカミサマだった娘は、どこかもわからないような器官を振り上げ祈る異形の生き物に、いまでも、どこだかわからない場所でひっそりと祈られ、生きているという。

 それもまた、何度も明日を繰り返したある日、おわる。


 せかいに終わりの日が来るかもしれないと知って、人々は困った


 世界に横たわるあの穴≠ノ潜れば、何かを拾えるかもしれない。
 誰もが近づけない、誰もが潜れないその穴に、昔カミサマだったあのタコのような娘なら潜れるかもしれないと、誰かがいった。
 忌まわしい虚無の穴≠ヨ、あの忌まわしい異形の姫なら辿り着くかも。
 世界に背中を押されて、娘は考える。
 どうすれば、世界に異形がなくなるか、
 そして世界から押し出された娘は穴の底へ、自分で決めた目的を下る。

 穴を下ったカミサマだった娘は、ひとり、いなくなろうとする彼女を泣きながら見送る隅でじっとしている異形の影を思いながら暗闇すら飲み込む虚無の底へ


 娘がどこまで下ったのかは、誰も知らない。
 ただ、彼女の送って寄こした知識の欠片が、世界をすくったかもしれないという記録も、曖昧なままだとか。
 彼女はいなくなり、穴を下った罰として、タコのような小さな姫は本物の神様に呪われて、名前がなくなり、いなくなった。
 いまでは、世界の隅の方に消えた小さな異形たちが、覚えているのかいないのか、身を寄せ合って何か、わたしたちにはわからない言葉で何かを訴えるだけで、だれも、そのカミサマだった娘をしらない。

 そして、いつか、また人はカミサマを作り続けて、何度かの滅びを繰り返し、生まれて、死んで、あるいている

 (1stup→100730fri)


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