■domine-domine seil:02 提督の評価

「そういやさー、書類の日付、間違えて23って入力しちゃってさー」
 それじゃ18日も先だっつーの、とタバコをふかす。
「そんなのよくあるじゃん」
「それがさ、運悪くブリッジに直送りでさ」
「うわっ」
「そしたら新規の装甲の結果報告だったからかな、『23日に期待。wktk』って付箋付きでかえってきた」
 特徴のある字だからすぐにわかる。ていうか、副官2人はもっと達筆だ。
 そもそも、謹厳実直を絵に描いたようなエッケルベルグ中尉なら多分小言。
 癒しキャラのミクラ中尉なら、天使のような声で通信してくる筈だ。結局クレーム。その辺は割と厳しい。だがそこがいい。
 あのエリート達に、wktk≠フ文字はない。たぶん。
「提督ってさ……」
 どうにも掴み所がないタイプだ。やっぱ英雄≠ヘ良い事──そうそう、ウマいコトなど言わなくていいハズだ──言うよな、と感じ入ることさえあるのに、本人はにこりともしない。思い浮かぶ容姿は、ケピ帽タイプの軍帽に古色然とした二重回し。顔は、才色兼備って思ったのに、何か印象に残らない。
 上司として当たりかハズレかっていえば当たりだ。査定は公平だし、待遇も悪くない。滞り易い平時の雑務に対しても、恐ろしくレスポンスが早い。撃たせれば必中、護れば鉄壁、訓示を受ければ激励され、そのうち奇跡でも起こしそうだ。こうやって並べてみると大当たりじゃないか。と思うが、そうだ。気の毒な慣用句が浮かぶ。そうそう色んなアレと紙一重。
 とりあえずこのコーヒーを飲もう。天才の世界などワカランでいい。
「コレってなんかリアクションしたほうがいいのかね?」
「イヤいいから。リアクションしてんの向こうだから」

 (1stup→110107fri)


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