■いろんな意味で

「コレお願いします」
「……」
 視線に気付くルナ。
「え? ナニか付いてる?」
 ソレとも、足りないとか?
 ワクワクし過ぎて気が抜けちゃってるかもと、お店の備品であるカントリーな鏡を見る。
 モンダイナシ。
 ちゃんと、目も鼻も間違ってない。
 耳も、あるべきトコロにある。
 髪の毛も、いつもどおり。
 そういえば、店員さんの視線は、頭の後ろに向いてる。
「えと、後ろ頭は見えないんだけど、変かな」
「え? あっ違うの。ルナちゃんてね、髪長いからリボンでおしゃれしてるのかなって思ったの」
 と店員さんは言った。
「でも、違うのね」
 ルナの髪はいつも細いヘアゴムで結わえてある。今日も、いつもどおり。
「それでね、何に使ってるのかなって」
「えと、家で使ってるの。お花とか、食器とか飾ったり」
 そうすると、見慣れたインテリアが新鮮になる。
 買い替えたり、模様替えしたりするのは大袈裟過ぎるけど、これなら、お手軽に楽しめる。着せ替えも簡単に出来るし。
 なるほどと感心する店員さんに、ルナはにっこりと微笑んだ。
「ぼく、リボンって大好きなんだ。模様とか色も綺麗だし、括ると可愛くなるっていうか」
「ルナちゃんて、少女趣味なのね」
 優しい店員さんの笑顔。
 コットンに囲まれるのが何よりの幸せなこのお姉さんが知ったら、卒倒しそう。ルナは頭の後ろでちろりと笑った。
 あんなコトとかこんなコトとか、イロイロ考えるのが好きな女の子って結構いるらしい。呼び方はなんて言うんだっけ、ソレもあの人に教えてもらったけど、そこは忘れちゃってて出てこない。
 女の子って、可愛くて、面白いこと考えるな、と思う。
 ──少女趣味って……。
 ある意味そうかも、とルナは思った。
「うん。趣味なんだ」
 おつりとレシートを受け取って、ウフフなルナ。
 まあそんな感じで今日も幸せである。

 (1stup→120616sat)


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