恋の足音 since 2011.11.05 ※TOPへ戻る際は←のサイト名をクリックして下さい。


正式に早乙女事務所所属となった者は自動的に寮住まいとなり、
一人で暮らすには広すぎる個室を与えられて日々の音楽活動を行うことになる。
音楽に携わる人間として最高の環境を用意されて喜ぶものもいれば、
新人としては破格の待遇にプレッシャーを感じて体調を崩すものも居る。
トキヤは前者であり、学園生活ではほとんど得られなかった一人の時間を楽しんでいた。
帰宅して部屋のドアを開けた途端にギターの弦をかき鳴らす音に襲われなくても良いし、
完璧なカロリー計算をした料理を横からつまみ食いされてしまうこともない。
入寮当初は少しばかり寂しさが生まれてしまったが、数週間経った今はすっかりこの環境に
適応しきっている。

整備された環境を喜ぶのは当然として、トキヤが一番嬉しかったのは通販で購入したものを
誰かに見咎められることが無いことだ。
学園寮に居たころは好奇心旺盛な音也が纏わり付いてきて荷物の中身を確認するまで
離れようとしなかったことが何度もあった。
その度怒鳴りつけて追い払っていたが、今はその必要も無くなった。
「何を買っているか音也に知れたら大変ですからね」
カチ、とマウスをクリックする音が響く。
ディスプレイには通販サイトのページが表示され、ずらずらと似たような商品が並ぶ。
トキヤは慣れた手つきで目的の商品をカートに入れ、注文ボタンを押した。
注文確認メールが送られてきたのを確認して、パソコンの前から離れる。
メールの文面には、お徳用ローション×1 の文字。

いつからだったか、ただ黙々と溜まった精液を吐き出す作業に飽きてきたトキヤは
陰茎以外の場所を刺激してする自慰をするようになっていた。
情報過多の今の世の中、単語を検索するだけで多種多様な知識を得る事が出来る。
トキヤは慎重に情報を吟味しながら、最初に乳首に手を出した。
始めたばかりの頃はくすぐったいだけだったそこは、弄りすぎて少しばかり肥大化している。
陰茎を扱きながら乳首を捏ねても物足りなくなって、前立腺まで弄り始めた。
腸内を傷つけないように細心の注意を払い、綿棒から指へ、指から細いアナルバイブへ。
最初は前立腺付近しか感じなかった中も、今では腸壁を擦られて声をあげるくらいには
柔らかく敏感になっていた。
「さて、今日はどれにしましょうか」
買い溜めている挿入用の玩具は全て鍵の掛かる引き出しに保管している。
その中から一番太いものを取り出して、でこぼこした形をなぞる様に撫でた。
男性器を精巧に模したディルドや腸内で跳ね回るバイブもあったが、
自分で刺激を調節出来るこの玩具がトキヤは一番好きだった。
これで体内を抉る事を想像しただけで、腰の奥にずくりと疼きが沸き起こる。
射精に伴う快感とは種類の違う、鈍く広がっていつまでも燻る快感。
目の前が白く弾けて、腰から体が溶け出してどろどろになるような感覚。
薄手のシャツの下で、乳首が何もしていないのに硬くしこり始めるのが分かった。

口内に溢れた唾液をごくりと飲み込んで、トキヤはうっとりと息を吐く。
早く肉欲の海に覚えてしまいたいところだが、その前に戸締りの確認をしなくてはならない。
せっかくの時間を不躾な訪問によって邪魔されては敵わない。
特に音也は夜が更け始める時間帯になると、小腹が空いたとトキヤの部屋に来訪しては
手料理をねだってくる傾向があった。
鍵さえ掛けておけば侵入は防げるし、後からいくらでもアリバイ作りは出来る。
握り締めた玩具を見つめながら考え込んでしまい、トキヤはハッと顔をあげた。
起こっても居ない事の対処法に思考を巡らせる間に、貴重な時間を失ってしまった。
霧が晴れたように広がった視界の隅で、何かがちらりと揺れる。
自分のつま先を踏んでいる、伸びた影の切っ先。
「…………………………ッ!!」
部屋の家具の位置や形を考えても、細い影が出来るわけが無い。
影を辿ってゆっくり視線をあげると、考えうる限り最悪の事態になっていた。
「…音也」
目玉が零れ落ちそうになるくらい大きく目を見開いた音也が、そこに立っていた。
ぽかんと開いた唇の隙間から幼い印象の八重歯がちらりと覗いている。
固まった視線の先はトキヤが愛おしそうに握り締めたままだった玩具に注がれたまま。
思考に没頭しすぎてノックに気付かなかったらしい。
おそらくは声を掛けてから入ってきたんだろうから、それにすら気付かずに
浅ましい妄想をして口を歪めているところを見られていたのだ。
「音也…いつからそこに?」
上擦る声を必死に抑えながら、一抹の望みをかけて問いかけた。
場合によってはどうにかごまかせるかもしれない。
その声で我に返ったのか、音也の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
叱られた子犬のように眉をきゅっと下げ、視線をうろうろと彷徨わせる。
「え、えっと俺声かけたんだけどさ、あの…返事無いし、鍵開いてたから入っちゃえって…」
そこまで言って、ちらりとトキヤに視線を投げる。
「そしたら、トキヤがそれ持ってやらしい笑い方してて…」
「もう結構です」
ぴしゃりと遮ると、音也がびくりと震えて口を噤む。
身を縮こまらせてトキヤの出方を伺っている音也を素通りして、部屋の鍵を内側から掛ける。
背後で音也がえっ、と声をあげた。

このまま上手く丸め込んで音也を追い出したところで、見られた事実は消えるわけではない。
音也の性格を考えれば翌日にはケロッと忘れているかもしれないが、
部屋に戻る途中でその手の事に聡いレンや、様子がおかしい友人を放っておけないだろう聖川に会ったりしたら
おそらく音也は何があったか話してしまうだろう。
それなら、巻き込んでしまえば良い。
「知られてしまっては仕方ありません。これが何かは分かりますね?」
「うっうん…」
「勝手に部屋に入ってきた罰です。私の自慰を手伝いなさい」
「えっ!?」
更に顔に血を上らせた音也が素っ頓狂な声を上げて後ずさる。
「自分で動かすのも飽きていたんですよ」
眼前に晒した玩具を挑発的に舐め上げると、音也がごくりと生唾を飲み込んだ。
ベッドに連れ込む間に熱が冷めてしまっては計画が台無しになってしまう。
引き出しに一緒に仕舞っていたローションを手に取り、玩具ごと音也に渡す。
「こちらに」
いまだ戸惑っている音也を促して、自分はソファーに深く座る。
ローションと玩具を持って呆然と立ち尽くしている音也の目の前で、ズボンを下着ごと脱ぎ捨てる。
股間からにちゃりと粘ついた音が漏れた。
異常な状況に興奮してしまっているのか、自分では冷静なつもりだったのに体は正直に反応している。
友人が欲情して性器を晒している姿を見ても音也の様子は変わらない。
「ディルドにローションを掛けてください、零しても良いように私の体の上で」
「でぃ、でぃるど?」
「貴方が持ってる大人の玩具ですよ。早くしなさい」
悪戯を叱る時と同じトーンで急かすと、音也がわたわたとぎこちなくローションの蓋を開ける。
凹凸をなぞるように、どろりとローションが流れ落ちてシャツから覗いた下腹部に溜まっていく。
粘液をまとってぬらりと光る玩具を持つ音也に良く見えるように、
両手で肛門の襞を広げて中身を晒した。
「分かるでしょう?それを挿入するんですよ」
「わ、分かった…」
「っんん…」
硬く冷たいプラスチックの塊が窄まりにあたり、ローションの力を借りてぬるりと中に滑り込む。
内臓を責められる鈍い圧迫感と、それを軽く上回る快楽。
腰を振ってしまいそうになるのを何とかこらえながら、音也の手を取ってゆっくりと動かす。
「この、角度で…ゆっくり動かしなさい…ふっ」
命令しながら、空いた両手を胸元へ移動させる。
音也の目は生肉を目の前にした肉食獣のようにぎらついて、玩具を飲み込む後孔に釘付けになったまま。
息を荒くする音也に言いようの無い高揚感を覚えながら、シャツのボタンを外す。
触れられるために硬くそそり立った突起をぎゅっと摘む。

「んぁ…っ」
「っ!と、トキヤ…?」
「手を止めて良いなんて言ってませんよ…」
「だっだって」
「私をイかせられたら解放して差し上げます。ほら、早く」
「…」
尊大に言い放つ間も、乳首を捏ねる指の動きは止めない。
はたから見れば滑稽に映るのだろうが、熱に浮かされた脳みそはそれすらも興奮の材料にしてしまう。
音也は戸惑いながらも、単調だった動作を探るように切り替える。
前立腺がどこかにある、という知識は持っているのかトキヤの反応をちらちら確認しながら
ぎこちなく中を突いている。
「ぅん…ッあぅ…」
加減が分からないのか、時折あらぬ方向に力がかかった。
中を知り尽くした自分では得られない動きに、微かな痛みと新鮮な快楽がじわじわ湧いてくる。
「トキヤのお尻凄いな…吸い付いてくるのが伝わってくるよ」
ぬっ、と引き出した玩具をゆっくり挿し込みながら、音也が感心したよういに声を漏らす。
「貴方もここ…んっ、凄いことになってますよ」
柔らかいジャージの布を押し上げて存在を主張している音也の雄を、つま先でなぞる。
突然の刺激に身を引こうとした音也の持つ玩具が、丁度良く前立腺を引っ掻いた。
「ぁひッ!?」
「、トキヤ、ここ良いの…?」
「ふ、ふふ…良く見つけまし、た…っぁああ…!」
余裕ぶった態度を取って身を起こそうとして、強い刺激に貫かれて背を反らせた。
玩具の硬い出っ張りで、膨らんだ前立腺をこりこりと擦られている。
がくがくと膝が震えて、ソファーの端に引っ掛けていたかかとが滑って床にずり落ちた。
「んんんん…ッ!!」
音也は何度か緩く前後に動かした後、出っ張りを前立腺に当たるように玩具を止めて
陰茎を押し上げるように圧迫する。
「や、やめなさい、やめ…ッうぅあああ…」
「すっげ…ローション垂らしたわけでも無いのにトキヤのちんこどろどろだ」
ぎゅうぎゅうと前立腺を潰されながら、出口を塞ぐように親指が亀頭を滑っていく。
過ぎた快楽にそのまま身を委ねるには残った理性が邪魔をする。
「はぁっ…あっ、んん…ッえ、?」
ぬるりと腸壁を擦りながら玩具が出て行く。
必死に食いついた襞が水音を立てて、引き止められなかった玩具を惜しむようにひくついた。
「音也…?」
熱に浮かされて涙の膜で歪んだ視界の向こう、切羽詰ったように眉根を寄せた音也が揺れている。
起き上がろうとして、伸びてきた大きな手のひらに肩を乱暴に掴まれソファーの背に押し付けられた。
音也は無言のまま、中途半端に開いていたトキヤの膝を大きく広げる。
玩具についていたローションと陰茎から伝ってきたカウパーでにちゃにちゃと音を立てる後孔に、
硬く熱い何かが押し当てられる。

「…ッ音也!!」
視界の端に脱ぎ捨てられたジャージのズボンを見つけて、思わず叫んだ。
自分の部屋とは言え、事務所の寮で軽率な行動を取って音也に見つかったのは自分の責任だ。
それを音也が混乱しているのを良い事に、非日常に巻き込んでしまおうと挑発して、
まさか犯されるとは思い至らなかった自分の。
「冗談、でしょう…?」
「ごめんねトキヤ、我慢出来ない!」
「駄目です、あっ、ひぃいいいい…ッ」
痛みは無かった。自分で中を開発している時に感じていた、内臓を圧迫される不快感も。
どくどくと脈打つ熱い肉の感触に残っていた理性が一気に溶かされる。
勝手に音也を締め付けている襞が肉の形を生々しく伝えてくる。
単純な刺激の強さで言えば、ピンポイントで前立腺を突いてくる玩具の方が上だ。
それなのに、みちみちと体内を満たす肉の熱さが心地よくてそれだけで達してしまいそうになる。
「ッ抜いてください!」
「何で?トキヤこうなっちゃう事予想できたでしょ、ここまで来てやめるの?」
しょぼくれた声を出した音也が上体を倒して、トキヤの顔を覗き込む。
その拍子に埋め込まれた陰茎がさらに奥を抉って、たまらなくなって自分から腰を押し付けた。
「ほら気持ち良いんじゃん…何が駄目なの?」
それが一番の問題だ。
他人の性器でイかされる快楽を体が覚えてしまったら、これまでの自慰では物足りなくなる。
音也を突き飛ばそうと腕を動かしただけで、腰の奥に溜まっていた快楽が全身に散った。
必死に息を整えながら、震える手で音也の肩を押し戻そうとする。
「イかせて欲しかったんでしょ?」
「あ"ッ!!」
骨ばった音也の両手に腰を鷲づかみにされて、息をする間も与えられずに攻め立てられた。
酸素を求めて開いた唇に噛み付かれて、そのまま舌も絡み取られる。
拒絶のために伸ばした腕は気付けば音也の首に巻きついて、
もっと深くまで飲み込もうと体を押し付けていた。
お互いの胸板が汗でぴたりと張り付いて、押しつぶされた乳首がじんじんと疼く。
「あぅッいっ、いく…ッ」
「うん、俺も…」
「お、奥は、ぃひッぁあああああ……」
「んっ」
未開の部分まで太い亀頭に押し開かれた瞬間、ぐちゃぐちゃだった頭の奥で何かが弾けた。
同時に焼け付くような快感が尿道をせり上がって、狭い尿道から噴水のように白濁を吐き出す。
ずっと我慢していた排泄をした時のように、勢いを失ったままだらだらと零れ続ける。
体中を支配している絶頂感はいつまで経っても霧散せず、音也が奥にたっぷりと体液を注いで
雄を引き抜いてもなお続いていた。
「ふー…あ、あれっトキヤ?え、ちょっ大丈夫!?」
だらりと力が抜けた体は泥のように重くソファーに沈み込んで動かせない。
音也が心配そうな表情を浮かべてトキヤの顔を覗き込む。
熱い肉に擦られて奥を暴かれる甘い快楽は一度だけでしっかり体に染み付いて、
どうあがいても忘れられそうに無い。
「…………秘密ですからね」
何が、とは言わなかった。
音也も何が、とは聞かずに少しの間を置いて小さく頷いた。
TLに「前立腺開発したら日常が崩壊した」っていう記事のURLが流れててね。うんトキヤだよねって思って^^^^