恋の足音 since 2011.11.05 ※TOPへ戻る際は←のサイト名をクリックして下さい。


一発ヤった後の気だるさに身を任せてぼんやりしている俺の横、
音也がばたばたと足を振ってベッドのスプリングを軋ませる。
夜明け前の薄暗さで良く見えないが、埃が舞っているだろう事は分かった。
汗の臭いが混じった甘ったるい空気が混ぜられて鼻を突く。

「おい、暴れんな」
「ん〜ごめーん」
見かねて咎めると、音也が体をごろりと動かして上に覆いかぶさってくる。
べたついたままの音也の頬がべたりと胸に張り付いた。
いつもだったら俺が殴るまでくだらない事を話し続けてる音也は随分と大人しい。
全くそうは見えないか悩み事でもあるのか。
たまにしか出てこない俺にはこいつの表情から細かい心の機微までは読み取れない。

「元気ねぇな」
「…うーん…」
俺の指摘に違うと突っぱねる事はしなかったが返事の歯切れは悪い。
ご主人様のご機嫌を伺う犬のように、眉を下げてちらちらと俺を見上げてくる。
いい加減片腕を突いて自分と音也の体重を支えているのが辛い。
倒れこむようにベッドに沈むと、スプリングと一緒に音也が腕の中で跳ねた。

「わわっ」
慌てる音也を無理矢理抱き込んで、シーツを引き寄せる。
シャワーを浴びるのは明日の朝で良い。
音也以上に五月蝿い同室のチビは家族に会いに行ったとかで明日の昼まで
帰って来ないしな。
「お前ちゃんと鍛えてんだな」
肌に触れる腕や腹に付いた筋肉は以前よりは増えてる気がする。
狭い一人用のベッドの上、眠っているうちに転がり落ちないように音也を抱きしめた。
手のひらにごつごつと当たる骨の感触が、こいつが同じ男なんだと示している。
「かってぇ体」
「う…………」
俺が息を吐くように毒づくのはいつもの事なのに、音也は何故か言い返さずに口を噤む。
俯いて表情を隠そうとするのを顎を引っつかんで無理矢理上向かせる。
「おら、こっち向け」
ガキみたいに頬を膨らませて不満を示している音也と目がかち合う。
悪戯心が湧いて拗ねている唇を突くと腕を突っ張らせて顔を離された。
「何拗ねてんだよ」
横抱きにしていた体をそのままシーツに押し付ける。
吸血鬼みたいに首筋に噛み付くと、ぎゃっと色気の無い声が上がった。
脱ぎ捨てた服で適当に拭っただけの音也の腹に、飛び散った精液の跡。
すっかり萎えてだらりと下を向いているペニスを握りこむとまた可愛げの無い声。

「うぎゃっ!ちょっと砂月、またすんの?!」
慌てる音也をからかって遊ぶだけのつもりで顔を見た。
まだ余韻が残ってる瞳を潤ませて、真っ赤になって俺を押し返そうとしている。
音也の太ももに当たってる俺のがうっかり反応した。
「えっえっマジで?」
俺の顔と、硬いのを押し付けられてる自分の下半身を行き来する音也の視線。
文句を言おうと開いた口を覆うように唇を重ねて、手の中のペニスを柔らかく揉む。
どうせさっき散々掘って中に出したんだ。わざわざ慣らさなくても入るだろう。
酷使されて熱を持っている音也の肛門にぬめる亀頭を押し付ける。

「おら、入れんぞ。しっかり咥えろ」
「やっ!砂月の変態!」
入れやすいように足開いてる奴が喚くな。
ひくつく穴に押し入ると俺が出した精液が押し出されてきた。
ローションもたっぷりぶち込んでやったから混じって女みたいに濡れてる。
「聞こえるか?すげぇ音してるぞ」
「ひぁっ!…ぁっ…やぁ…!」
自分から濡れる事は無い、それ以前に出す事意外に使われないその場所から
にちゃにちゃと派手な音。
浅い所を捏ねるように掻き回してやれば、音也がぎゅっと目を瞑って腰を揺らし始める。
俺の首に回されるかと思った両手が宙を彷徨って、結局シーツに戻っていく。
無理矢理に手を握ってやると、音也の戸惑いがそのまま手のひらを通して伝わってきた。

「何だよ」
聞きながら、音也の腰をがっちり拘束して弱い所をあくまで優しく擦りあげる。
音也は俺をきゅうきゅうと嬉しそうに締め上げながら、珍しく黙ったまま。
いつもは聞いてもいない事まで話してくるくせに。
「言えよ、じゃないとイかせてやらねぇからな」
「あっ!ちょ、砂月っ…」
だらだら涎を零してる陰茎の根元を締め上げて脅す。
音也は瞳をきょろきょろと左右に忙しなく動かし、迷いながら俺をちらりと見る。
「えっと…ほら、男同士でヤると献血出来ないって…」
「はぁ?」
「さ、砂月献血出来なくなったら嫌でしょ?」
何を言ってるんだこいつは。
どう考えても笑ってごまかそうとしている様子の音也を強引に抱き寄せて、膝の上に乗せる。
急に奥を抉られた衝撃で仰け反った音也の背を支えて抱きすくめた。
「おら、正直に話さなぇと気絶するまでヤるからな」
「うー…」
煮え切らない声をあげる音也が俺の肩に額をぐりぐりと押し付ける。
早くしろ、と軽く突き上げると途端にあがる気持ちよさそうな声。

「音也」
肩口に埋まったままの音也を引っぺがして、目線を合わせた。
往生際が悪い音也はしばらくうーうー唸った後、笑わない?と小さな声で前置きしてから話始めた。
「俺、女の子みたいに柔らかい体してないじゃん?」
「当たり前だろ、お前は男なんだから」
「うん…砂月は、俺抱いてて物足りなく無いの?女の子の方が良いとか思わない?」
「…は?そんな事気にしてぶーたれてたのか?あぁ?」
思わず声を荒げた俺を見て、音也が腕の中でびくりと体を竦ませる。
「怒んないでよ!」
「俺が頼まれたのは笑うなって事だけだ」
「うわぁ屁理屈!砂月のばか!」
「馬鹿はてめぇだ!」
暴れ始めた音也の顎を掴み、これ以上馬鹿な事を言えないように口を塞ぐ。
俺への文句を吐き出そうと跳ねている舌を傷つかない程度に噛んでやると、
喉の奥からくぐもった抗議の声が漏れ出してきた。
ムードもへったくれもあったもんじゃねぇ。
「おい、音也」
「うっな、何」
苛立ちを隠さずに名前を呼ぶと、音也がぎこちなく言葉を返す。
人の感情には敏感なくせに、なんで肝心なところで鈍感になるんだろうなお前は。
「二度とそんな馬鹿な考えが湧かないように体に教え込んでやるからな。喜べ」
「…ッ!!」
8割の怯えと、2割の期待を滲ませる音也にやさしーく微笑んでやる。
知り尽くした音也の体内を揺すってやれば、途端に期待が怯えを塗りつぶす。
馬鹿な考えなんか、全部吹き飛ぶくらい激しくしてやるさ。
「あのさ、砂月…なるべく手加減して欲しいんだけど…」
俺の考えを見透かした音也がおずおずと声を出す。
返事の代わりににやりと笑って強く突き上げてやると、甲高い声と、次いで諦めたような吐息が耳にかかった。
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