厭世家のオプチミズム
浜田と梶山が喧嘩をしている。これはとても珍しいことだ。
それなり馬が合うからつるんでいるオレ達だったが、それなり気性というものがあり、性格の不一致によるすれ違いもそれなりに起こる。ときには嫌味の応酬から諍いに発展することもないではないが、そんな場合は揉め事の中心は大抵がオレなのだ。
少しは落ち着いたとはいえ派手好きでにぎやかな浜田と、面倒くさがりで無気力なオレの意向が大きくズレたり。意外にも几帳面で細かいところのある梶山と、ルーズで享楽的なオレの意見が食い違ったり。自分は大概他人と行動を共にするのは不得手な人間だと思う。
だからそんな衝突は茶飯事で、それでもオレ達3人が決定的な綻びもなくゆるーく友達関係を続けられたのは、渦中のふたりを、残ったもうひとりが上手く止めて宥めてくれていたからなのだ。
オレと浜田がすれ違ったときには梶がフォローをいれて、オレと梶がぶつかったときには浜田が場を和ませてくれる。そうやってオレ達はうまくバランスしてきた。
浜田が自身の失態から留年することが決まったときだって、オレ達のゆるいけれど柔軟でしっかりした結びつきは解けないのだろうと思えた。そしてそれはその通りで、オレと梶は、浜田の目論見に乗って応援団などという似合わない青春の汗を流したりもしている。
それなのに、だ。
「だから、なんでわかんねんだよ」
「バカだろお前、そんなんでいいわけねーから反対してんだ」
「やってみなくちゃわかんねーだろ!」
「わかる。絶対に無理だ。大体、考えてもみろ」
……どーしたものか。
言い合いを続けるふたりに取り残されたオレは途方にくれる。いつもフォローをされる側だったから、オレがフォローをするなんていう事態を想定していなかった。なんと言って止めたらいいのか見当もつかない。視線を外してみても、言い争うふたりの姿は見えなくなったが、相変わらず舌戦は繰り広げられていて、状況は変わらない。
この場合はオレが止めなくてはならないのだろうか。止めるべきなのだろうか。
……止めなければ、終わらないのだろうか。
はあ。
思わずもらしたため息。慣れないことで頭を悩ませたせいで、時間が経つだけで普段の倍も疲れてしまった。
「梅原! なにため息ついてんだ!」
「てめ、話聞いてねーだろ!」
「……え?」
なに、怒ってんの。オレ悪いことした? 喧嘩してんのはお前らだろうが。
オレの疑問と困惑をきれいに無視して、浜田と梶山は口をそろえてオレのやる気のなさと友達甲斐のなさと、
そこから飛躍して生き方にダメだしをはじめた。
ほっといてくれ、オレはオレでしあわせに生きてんだよ。