Land of Milk and Honey



あの光。
正直、身体が震えた。
薬で興奮状態にあるはずの、恐怖なんか感じないはずのボクの身体が。
そして思わず振り返る。
後方にあるはずの艦影を求めて。


「おい、ふざけた事言うな! なんでこの船がそんな事すんだよ!」

彼が声を荒げて激している姿。
とても珍しいその光景を、ブリッジの連中は呆然としながら、蚊帳の外のボクたちは面白がりながら眺めていた。
いや、その中に、ボクは含まれていない。
オルガやシャニが見下ろしているブリッジを、ボクは見ることが出来ずに手元のゲームの画面をひたすら追っていた。
ゲームに集中することで、他のすべてを遮断するつもりだった。
なのに洩れ聞こえてくる彼の声。

「あそこにあんなもの残して置く訳にはいかないんだよ!!」

彼の言っていることはときに残酷で、弱者のことを考えない理不尽さは軍の高官の誰とも変わらない面がある。
けれどときどき強く引かれるのは、そこに志が秘められているからだ。
彼は伊達にブルーコスモスの盟主をやっているわけじゃない。
口が上手いだけのお飾りなんかじゃない。
彼に感じるなにかがあるから、若いボクたちはその志を受け入れ、共感し、立ち上がった。
ストリートや施設から拾われてきたオルガやシャニには、きっと分からない。
3人のなかでボクだけが、望んでブルーコスモスに、彼のもとに集った。
もちろん実験に参加した多くの兵士の中にはボクと同じように自ずから手を上げたものも多くいたが、皮肉なことに最終テストまで残ったのはひどい暮らしのために身体を売った人間の方が多かった。

「いつその照準が地球に向けられるかわからないんだぞ! 撃たれてからじゃ遅い!!」

ボクは幸運だったと思う。
ろくな苦労も知らずに生きて、軍に入って、能力を認められて、そして望んだ場所にいる。
すべてを諦めてここに来た奴等とは違う。


「ヤツラにあんなもの作る時間与えたのは、お前たち軍なんだからな!」

プラントに向けて放たれた核の光を、きれいだと言った彼。
きっとあの化け物光線を撃ってきたコーディネイタもそう言っただろう。
どっちもどっちだと、後の人間は非難するかもしれない。
だけど。

「無茶でもなんでも、絶対に破壊してもらう。地球が撃たれる前に!!!」

ボクも、そう思います。
だって、たしかにぴかぴかひかるミサイルはきれいだったけど、ボクは。
宇宙に飛び立って見おろした地球のことも、とてもきれいだと思ったのだから。