太陽の威をかるもの


「こいつらの言うことはみんな嘘だ」

どこか興に冷めたような、年不相応の眼差しと口調で、地面に転がった死体を見詰める。
主をなくして空になった寺の本堂には、思い思いに身体を休めている仲間達がいる。

ちらり、ともう人ではない塊を一瞥し、蛇骨は肩をすくめた。

『地獄に落ちろ』

よくある言い回しだ。
よく言われることばでもある。
さすがに坊主に言われると、気味が悪くもあるが。
「おれ、別に気にしてねぇよ?」
気にしているつもりはなかったけれど、彼には気にしているように見えたらしい。
おれを気にかけているのかもしれない彼はだけど、「そんなもんはないんだ」と、ひとことで片付けるだけだった。
「おれだって、信じてない」
と言っても多分無駄なんだろう。
規律なんてないおれたちだけど、結局のところ完全に自由ってわけでもない。
いつでも好き勝手ふらふらしてるおれでさえ、見えない力に(いや、力の出所ははっきりしている)縛られている。
彼のことばひとつで決まることもたくさんある。

この世の中で、彼は唯一絶対の中心なのだ。

もちろん、彼の中で。
だけど彼の絶対性が彼の中だけにとどまらないのは、おれたちに原因がある。
おれたちにとって、彼は絶対だから。
おれがどう思っていようが関係なく、彼はおれが気にしていると思っている、それがすべてだ。

そして、文句などひとつもないおれがいる。
「気にするな」
と、長く伸びた前髪をぐいと引かれるのを、嬉しく思うおれが。



***



途方もない時間がたったのかと思えば、それはほんの一瞬だった。

硬く閉じたはずの目を再び開いた時、彼の声が聞こえた気がした。
辺りを見回しても彼の姿はなく、見慣れたハゲ頭に照り返した陽の光に目を眇めた。
土の中では夢なんて見なかったけれど、そのことばは確かに彼のものだと思った。

「そらみろ、地獄なんてなかっただろ?」

ああ、そうだな。
大兄貴はいつも正しいよ。