誰に言われたからでもなくて。
おれがそう、きっとそうだと、思ってた。
バカみたいに。
信じてた。
また逢えるんだって。
永劫回帰
「前はさぁ、死んだら、地獄に行くんならいいって思ってた」
前、という部分に少し力をこめて言った。
時間的な繋がりが断ち切られるより以前のことだとにおわすように。
地獄。
もし、そんな場所があったらだ。
死んでもみんな一緒んとこ行って暴れてるんだろうなーとか。
それって結構楽しかねーか? とか。
「そんなもん、ねぇっつったろ」
ああ、そうだな。
大兄貴はいつもそうやって、おれの夢を壊すんだ。
本当のことしか言ってくれない。
「ん。なかった、けどさぁ」
もちろんおれだって、本気で信じてたわけじゃないさ。
でもちょっぴり期待してた。
また逢えるんだって。
「まだ文句あんのかよ」
あんのは文句じゃねぇよ。
そうじゃなくてさ。
「なんで、なかったんだろうな」
胸にぽっかり穴があいたみたいな。
もの足りなさ。
「あ?」
おれは欲がねぇと言われることが多いけど、絶対そんなことはない。
叶えたいことは腕いっぱい、抱えきれねぇほどある。
「あったらおれたち、退屈しないで済んだろ、きっと」
地獄でも煉獄でも、極楽だってどこだっていい。
なにかあるんだったらこんなにむなしくないのに。
「墓ン中で退屈してたのか?」
くっくっと喉を振るわせる姿。
背中で長い黒髪が揺れている。
たったそれだけの小さな変化でもいいから。
「なーんも。つっまんねーの」
なんもなかった。
空白。暗黒。
どっちでもなくて、ただの無。
だってなんも覚えがねぇし。
「つまんないとかも、なかったろ」
気がついたら。
また目が開いた。
そんだけだった。
「だからさぁ。今考えると、それって、つまんなくねぇ?」
死んでた間を振り返ることができてしまう。
そのとても奇妙な感覚。
「まぁ、そうだな」
楽しいフリをしてるけど。
また逢えて嬉しいフリをしてるけど。
「でも生き返ったわけじゃねーみてぇだし」
空しく風が通りすぎる胸の奥で、
どうしてまた繰り返されるのだろう、と、思う。
「……」
文句とかじゃなくて。
不満とかでもなくて。
「どうなのよ、おれたち」
なんなんだ? この奇妙さは。
こんなこと、死ぬ前なら考えもしなかった。
いつだって楽しいこととか気持ちいいことばかり考えてた。
今日はなにしよう、それだけ。
昨日なんてすぐに忘れた。
明日に楽しみを残すなんて勿体ねぇ真似、絶対にしなかった。
いつだって、いま・ここ。
「どうもしねーよ。前だってそうだったろ」
生きる意味なんて必要なくて。
ただ日々を生き抜いて。
それだけだった。
「ああ、そうだっけなぁ」
また逢えたここは地獄?
それとも、煉獄?
ま、どっちでも、かまわねぇけど。
だっておれたち、多分、生きてねぇんだぜ?
この繰り返しが永遠かもしれないことを嘆いて、
胸に風が吹くのかもしれない。
今度また消えても、いつか、だれかが、
またおれに命を与えるのかもしれない。
ぽっかり胸にあいた穴。
覗き込んでも空虚だけ。
そんなむなしいのは嫌だ。
そんな永遠はいらない。
もう2度と逢えなくてもいいから。
もう2度と逢いたいなんて望まないから。
このむなしさを消す方法を教えてくれ。