わ か っ て い た さ 。
こうなることはわかっていた。
七人隊が討たれるとか、そーゆうことじゃなくて。
きっとおれは、大兄貴の死に顔を拝むことはできねぇんだろうなって。
それはちょっと残念だなって。
海を乾かすもの
利き腕と両足を潰された大兄貴が、
頭を垂れ静かに時を待っている。
彼は矜持も気位も高く、確かな野望を秘めたひとだから、
こんな風に終わることなど望んではいなかっただろう。
なのに悔しそうな顔など微塵も見せず、
焦点のしっかりした眼差しで一点を見詰めている。
「ひでぇ首領だな。
仲間が殺されても、眉ひとつ動かさねぇか」
腰に佩いた太刀を抜くことすらしていない侍が、
大兄貴の前髪をつかんで顔を上げさせる。
冷めた眼差しに存在を無視され、ちっと舌打ちする。
ああ、大兄貴は、やっぱり大兄貴だ。
やることなすこと、おれの目を惹きつけて離さない。
その強大な引力。
みんなこれに惹かれて集まったんだ。
「次はそいつだ」
馬鹿な侍がおれを指差し、
首切り役の無表情な男が後ろに立った。
既に首のない仲間たちをぼんやりと見回し、おれは苦笑した。
そう、笑ったんだ。
あまりに馬鹿馬鹿しすぎて。
こんなときまでおれは特別扱い。
多分、連中勘違いしてんだな。
副将の煉骨の兄貴まで差し置いて、
おれを後回しにした理由。
大兄貴を、七人隊首領の蛮骨を追い詰めるために。
バカな奴ら。
おれだって大兄貴にとっちゃ大事な弟分の一人だ。
ほかのどいつとも変わんねぇよ。
大兄貴はいっぺんだって、
おれのことを特別に扱ったことなんてなかったぜ。
そう、一度も。
「最期にかけることばもねぇのか。
コレはお前の男妾じゃねぇのか?」
下卑た笑いを浮かべる侍に、
賛同とも取れる嘲笑が周囲から洩れた。
そろいもそろって、てめぇらの目は節穴だ。
……でもそうだな。
いっぺんくらいあの腕に抱かれてみたかったかもしれねぇ。
おれが誘うと大兄貴は決まって嫌そうに眉を顰めて、
素っ気なくあしらって。
しつこくすれば殺されるかと思うほどきつく睨まれた。
うん、でも、殺されてもいいから、挑戦してみるんだった。
明日に未練を残すなんて、蛇骨様らしくねぇ。
「せいぜい別れを惜しめよ」
一文字に引き結ばれた唇。
でも噛み締めるのではなくて、ただただ無我に。
その瞳に映っているのは、きっと仲間達の亡骸。
最期まで見届けてくれるに違いない。
清冽なまでの凛とした姿を、
おれたちの首領として誇りに思う。
このまま彼の最期を見届けたいけど、
きっとそれはかなわない。
興奮気味の侍。
無表情な介錯の男。
いきり立つ雑兵ども。
先にいくよ、ごめんな。
もし地獄があるならそこで会おうぜ。
じゃーな、大兄貴。