頑張れ僕らの一ノ瀬慎也!

みちる編


「僕、前にね、知らない男の人に、ギュッと手を握られたことがあるの」
「…………」
「それで、一生懸命に僕に話しかけてくれるの。背広を着た、何だか中年の男の人だったんだけど」
「…………」
「それでね、先生! その人ったら、お金を僕に渡して来るんだよ!とっても切羽詰った様子で、僕、本当に驚いたんだから……」
「ごめん、みちるくん。それ、何の話だっけ」
「え、やだなあ、先生ったら。ほら、前に市長選挙があったじゃない。あの後、その候補者のひと、収賄容疑で逮捕されたって」
「…………」
「先生? なに、前屈みになってるの?」


◆◆◆◆◆


「それでね、先生。もう、皆ったらひどいんだ。
 僕がイヤだって言ってるのに、やれよって……。顔にグリグリ固い先っぽ……押し付けてくるんだよ」
「…………」
「でも、やっぱり上手だねって言われると嬉しくなっちゃって。身体がぽ〜〜って、気持ちいいんだ。
 僕、咽喉が痛くなるまで頑張ったんだ。……えへ、楽しんじゃった、みたい」
「…………」
「またしようなって言われて、僕、先生が許してくれたらって言ったの。
 ねえ、先生。僕、また皆としてもいいかなあ?」
「またごめん、みちるくん。それ、何の話だっけ」
「え、やだなあ、先生ったら。クラスの皆と一緒にカラオケしたときの話だよ。
 皆して強引だから、僕の頬っぺた、マイクの跡がついちゃった」
「…………」
「先生? なに、また前屈みになってるの?」


◆◆◆◆◆

「もう、先生の意地悪……。こんなにいっぱい出して……」
「…………」
「僕、大変なのに……。そ、そりゃイヤじゃないけど……けど。
 僕が頑張ったから、先生もそれに応えてたくさん出してくれるんだって、分かってるけど……」
「…………」
「ねえ、先生。僕……僕、先生だから頑張れるんだから。……それと……僕、早い方……だよね、先生?」
「またまたごめん、みちるくん。それ、何の話だっけ」
「え、やだなあ、先生ったら。先生の出した宿題の話だよ。僕って、結構早くスラスラ解いちゃう方だと思うんだけど」
「…………」
「先生? もしかして、また……」
「ぅうううぅううううがぁあああっっっ!!」
「え、きゃ、きゃあっ!」
「や、やぁあってられっっかぁあああっっ!! うがぁあああっ!!」
「先生、先生、落ち着いてってばぁ! ぁああんっ!」



続かない