おでこ、ごっちん


「なあ、俺……何か熱っぽいんだ」
「ああ、顔赤いな……。 風邪か? 熱、計ったのか?」
「いや、まだ……」
「体温計だったら、寮の方から借りられたよな……」
「あ……うん、でも、そうじゃなくってさ」
「薬もあったっけ。
 ほら、持ってくるから、横になってろよ」
「……違うんだって」
「……? 何だよ?」
「おでこ」
「はぁ?」
「額だよ、額。 まずはそれだろ?」
「…………」
「…………」
「……ったく、ほら」
「うん」
「…………」
「…………」
「……うわ。 やっぱり熱あるって、直人……」
「…………」
「…………!」
「……ははっ、おまえの方が、頬が赤いな……」
「……馬鹿野郎、寝てろ、おまえ、この風邪っぴき」
「…………」
「看ててやるから……」
「うん」


 ……不意打ちのキスはずいぶんカサカサしていた。




(END)