彼女の泣きながら走り去る姿が見えなくなってからも、怜二は暫く放心状態でその場に立ち尽くしていた。
「おいっ!」
千里は怜二の肩を掴み、自分の方へ振り返らせる。
怜二の目はうつろでまるでなにも映していないようだ。
「お前、何であんな言い方するんだッ!? あれじゃ・・・」
「・・・うるさいな、じゃあ、何て言えばよかった・・・?」
口を僅かに動かして発する声は小さくかすれている。
表情はまるでなく、血の気が失せたように顔色が悪い。
「何て、だと? お前が言ったのは確かに事実だよッ!! だけど、何でそうしたのか、俺が何をしたのか、どうして言わな
かったんだ!?」
その言葉に怜二は目を伏せて、溜息をもらす。
「お前、バカか・・・? あんな事言ったらまりえさん、傷つくじゃないか・・・」
「・・・・・・・・・・・・おまえ・・・・・・」
焦点の合わない目をして、力無く千里の手を振り払う。
だが、怜二の顔色は益々悪くなり、唇が微妙に紫色に変化している様子に千里はギョッとする。
「もー、いいだろう? オレは、お前の顔、見たくないんだから・・・・・・・・・」
立ち去るその姿は、余りにも痛々しくて
千里はかける言葉を失ってしまった───
第11話へ続く
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