○第10話○ 再会(その4)






 彼女の泣きながら走り去る姿が見えなくなってからも、怜二は暫く放心状態でその場に立ち尽くしていた。



「おいっ!」

 千里は怜二の肩を掴み、自分の方へ振り返らせる。
 怜二の目はうつろでまるでなにも映していないようだ。

「お前、何であんな言い方するんだッ!? あれじゃ・・・」

「・・・うるさいな、じゃあ、何て言えばよかった・・・?」

 口を僅かに動かして発する声は小さくかすれている。
 表情はまるでなく、血の気が失せたように顔色が悪い。


「何て、だと? お前が言ったのは確かに事実だよッ!! だけど、何でそうしたのか、俺が何をしたのか、どうして言わな
かったんだ!?」



 その言葉に怜二は目を伏せて、溜息をもらす。

「お前、バカか・・・? あんな事言ったらまりえさん、傷つくじゃないか・・・」


「・・・・・・・・・・・・おまえ・・・・・・」

 焦点の合わない目をして、力無く千里の手を振り払う。
 だが、怜二の顔色は益々悪くなり、唇が微妙に紫色に変化している様子に千里はギョッとする。



「もー、いいだろう? オレは、お前の顔、見たくないんだから・・・・・・・・・」





 立ち去るその姿は、余りにも痛々しくて


 千里はかける言葉を失ってしまった───







第11話へ続く


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