○第11話○ 真実(その2)






「アイツはホントにそんな事を言ったのか?」

「ん゛・・・・・」

 確かに、アイツならそんなこともやりそうだし、その力もあるだろう。邪魔するヤツは赦さないとか言ってたし・・・・・・

 う〜ん・・・



 だけど、変じゃないか?



「・・・オレは、アイツが言ったことそのまま受け取るには納得いかないな」

「どっ、どーして!?」

「だって、そんなまりえに嫌われるような事、自分から言うなんて変じゃないか?」

「・・・・・・」


「それにさ、オレがもし千里だったら、アイツに会ったとき絶対殴りに行くと思う。じゃないと気が済まない。だって、無理矢理引き裂かれたんだぞ?」

「・・・・・・」



「でも、千里はそうはしていない、ただアイツを見て突っ立ってただけなんだろ?」

 ホントだ・・・・・・
 どういうこと・・・?

「千里くん、飯島って言葉に反応した割には、怜二を見て驚いた顔で立ってただけだった・・・・・」

 これは、やはり何かあるな

 洋介は直感的にそう思った。
 千里がまりえになにも言わないでいなくなった理由、それを聞かないことには始まらないだろうが・・・・・・


 実のところ、洋介は千里がいなくなった後、千里のことを色々と調べていた。

 残されたまりえの様子が余りにも痛々しかったのと、洋介自身、千里の友人だった事もあって、自分が納得できる情報が欲しかったから。
 そこで行き当たった事実がひとつだけあったのだが・・・・・・
 今の話と今一つながらない。



「あのさ、まりえには言わなかったんだけど、俺、千里の事で実は一つだけ知ってることがあるんだ・・・」

「な、なに!?」

「・・・いなくなる結構前からなんだけど、アイツの家、かなり傾いてたみたいだった。父親の工場が倒産しかけてて・・・・・・で、言われてみればなんだけど、いなくなった後、工場は飯島グループに吸収されてる」

「なんでそんなこと今まで黙ってたの!?」

 まりえはスゴイ剣幕で洋介に詰め寄ったが、黙っていたのには、彼なりに考えがあったからだった。

「男だったらさ、特にあの学校行ってた人間なら、そんな不名誉な事自分から言えるか? まぁ、千里の性格からしてそんなこと考えるか分からないけど・・・だけど、俺は千里のために黙ってた。まりえには悪いとは思ったけど、それでアイツの居場所が掴める訳じゃなかったし・・・」

 そんな・・・・
 だけど、それじゃ・・・

「・・・俺としては、もしかしたら夜逃げかなって思ってたけど、今の話だと、そうじゃないみたいだし・・・大体、千里の家の工場って吸収したところで、採算なんか認められないようなところだったぞ?」
「だって、それじゃ変じゃない! 飯島グループがわざわざ赤字を背負い込んだみたいだもの!! 怜二がそんなコトするなんて不自然でしょう!?」


 そこなんだよなぁ・・・

 う〜ん、赤字を背負い込んでまでのメリットは?
 アイツの言うとおり、千里共々家族を海外に飛ばして、まりえと別れさせるってか?

 アホくさ。そんなこと、実際にはありえん話だ。
 だけどなぁ・・・


「・・・・・・飯島怜二ってのは、実はものスッゴク不器用なんじゃないか? 普通、出会ってすぐに、好きな女に薬は盛らないだろうし・・・その不器用さが話をややこしくしてる気がする」

「・・・・・人とちゃんと接したことって、あんまり無いんじゃないかな・・・私と一緒にいるようになるまでは、人のことを考えたこと無いって・・・・・・」


「・・・それって・・・本当にそうなのかねぇ・・・人のこと考えないヤツが千里の家を助けてどうすんだ? 確かにアイツにとって千里は居なくなって欲しい存在かもしれないけどさ・・・やってることメチャクチャじゃん。しかも、そんな赤字を会長が見過ごすと思うか?」

「・・・・・・っ!?」

 洋介は、ガシガシと頭を掻いてからまりえを見た。

「まりえ、千里に会って、ちゃんと聞いた方がいい。推測してても始まらないぞ? アイツと、何か連絡とる方法あるのか?」
「・・・う、うん。携帯番号・・・聞いてある」


 どうしよう・・・・・・

 私、何かとんでもない思い違いをしちゃったの?




その3へ続く


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