キー・・・ キー
「・・・なぁ、・・・飯島怜二・・・」
キー キー・・・・・・
「・・・・・・寒くないか?」
・・・キー
ダメだ、全然こっちを見もしない。
何を話しても聞いてるんだか聞いてないんだかさっぱりだ。
千里は、あの後、怜二の様子が余りにも気になったので、フラフラと進んでいく彼の後に一緒について行ったのだ。
着いた場所は、どこにでもあるような公園で。
飯島怜二は、さっきからブランコに乗ったまま、降りようともしない。
もう、2時間くらいか。
浅く溜息を吐いた時、千里の携帯が鳴った。
「はい、・・・あ、まりえ・・・ッ!?」
その言葉に、怜二がピクリ、と反応する。
「・・・あぁ、今、飯島怜二と一緒にいる。・・・公園に・・・なんて名前だろ? え? 近くに? 住宅街だからなぁ・・・・・・そうだなぁ・・・まりえの家からそんなに遠くないぞ? ・・・・・・・・・すべり台にパンダの絵? ・・・・・・そうそうっ、あるぞ! ああ、待ってる、じゃあな」
ピッ、と電話を切ると目の前でブランコに座っていたはずの怜二の姿がない。
「えっ」
辺りを見渡すと出口の方へ向かっている姿が目に入った。千里は大慌てで走っていき、怜二の肩を掴む。
「どこいくんだよっ、もうすぐまりえがここに来るから、待ってろよ」
それを聞いて、怜二はくっくっ、と笑いだした。
「待ってろ? 面白いこと言うね。どうしてオレがアンタと一緒に彼女を待てるの?」
「どうしてもなにも、まりえは真相を知らないじゃないか! 俺は元々、まりえに話すつもりで待ち合わせてたんだからッ」
「真相? そんなもの知らなくていい、大体、言っていいなんて誰が許可したんだ?」
そのまま立ち去ろうとする怜二の腕を、尚も必死で掴む。
「アンタはこれ以上、何を壊したいんだ?」
怜二は、口の端をつり上げて、自嘲するような笑いをした後、千里を振り切り走り出す。
「あ、こら!!」
残された千里も直ぐに追いかけた。
が、ついにはタクシーに乗り込まれ、完全に見失ってしまった。
「はぁ、はぁ・・・ちく、しょう・・・・・速・・・・・・ッ」
彼は、暫く立ち止まって息を整えていたが、やがて諦めたように息を吐き、公園へと戻っていった。
その4へ続く
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